四十二:ソロモンと悪魔とアタシ
未だに驚きの表情の二人が現実に戻って来るのを待っていると。
「ふむ・・・先ほどの術式解除といい、セエレがそこまで懐く事といい。お前さん、一体何者じゃ?」
いち早く現実に戻ってきたソロモンがアタシたちに興味深い視線を寄越す。
うわ、何だか研究者みたいな、嫌な目線だなぁ。
「かいつまんで言えば、アタシとメシアは稀少種だ。」
「ほう?」
「昔から色々な事が出来た(記憶上は)。ちなみに、メシアに手を出したら、滅ぼす。」
真顔でソロモンに言えば、ちょっと楽しそうな表情になった。
何と言うか、同志を見つけた!みたいな顔。
アタシはソロモンからヴァっさんに視線を変え、話しかけた。
「ところでヴァっさん、聞きたい事があるんだけど。」
「え・・・何、ッスか?」
少し呆然としながら、未だにセエレを観察している。
「えーーーっと、悪魔の君が知っていたら教えてほしいんだけど、悪魔独自の回復・再生・反魂の魔法って、何か知ってる?」
「・・・どうして知りたいんっスか?」
あくまでもさわりだけだが、再生したい種族がいることを伝えると。
「そうっスか。知ってるけどその前に。」
「ん、何?」
「どうしてセエレが、こんなに乙女チックになったのか説明するっス。」
そこで、セエレがヴァっさんにいい放つ。
「貴方が昔、私達同僚に放った予言により、私が魂ごと惹かれたご主人様に出逢ったから、こうなったのですよ?」
「へっ!?むかし??
・・・ああ、そういえば、言ったっスね。」
「貴方には感謝しなくては。
私はご主人様に逢えて、今の自分がこうも変わったとしても、今が一番幸せなのですから。」
そう言って、再びセエレはアタシに抱き付く。
ヴぁっさんは、そんなセエレを見て、少し羨ましそうな顔をしたあと、此方に向き直る。
「う~~~ん、教えてあげてもいいんスけど、ただ教えるのはつまらないっスよねぇ?」
そういってヴぁっさんがソロモンを見やれば、ソロモンは愉しそうな表情になっていた。
「なれば、ヴァッサーゴよ。お主の得意の予言でも、この者たちにくれてやれば良い。
セエレの運命の主が見つかった祝いに、な?」
「それ良いッスね!ご主人様!!」
キャっキャ盛り上がる2人に、セエレが吠える。
「ヴァッサーゴ!!お前、自分の予言が百発百中だって理解してるなら、止めなさい!!」
「え~、何でっスかぁ?
嫌っス、これから僕ぁお祝いの予言を一人ひとつだから、合計3つするっス!!」
「ぐっ・・・ご主人様に悪意ある予言をしたら、この場で貴様を八つ裂きにしてやる!!」
ああ、ヴァっさんがヴぁっさん自身に予言しちゃったから、回避できないのね・・・ならば。
「ヴぁっさ~ん、予言するのは良いんだけどさ、メシアとセエレの分、全部アタシに予言してくれないかなぁ?」
「嫌っス!セエレには絶対予言するっス!!
・・・まあ、そこのお姉さんの分は、あんまりお姉さんの事知らないからセエレのご主人に上乗せしても良いっスけど。」
「本当?じゃあそれでお願い。」
よし、メシアが理不尽な予言されなくて済んだ!!
少しだけ、ほっとしたのも束の間。
ヴァっさんが聞いてくる。
「セエレも、セエレのご主人も、何か自分自身の事で困ってる事、ないっスか?」
困ってる事・・・悩み事?
「私はありませんよ。ご主人様の側にいれる事が一番の幸せなのですから。」
おお、セエレは男らしいなぁ。
「アタシは・・・うん、悩みはあるよ?」
「「「え、それは何!?(っスか!?)」」」
ヴぁっさん、セエレ、メシアから同時に聞き返されてしまった。
「うん、アタシ、ここに来てからなんだけど。
恋愛感情っていうか、そういう感情?が、無いみたいでさ。
発情期すらないみたいだから、これから家族とか作れるのかな?って、少し心配だなぁ。」
セエレもメシアも、ああ・・・って遠い目をしてるし。
アタシも少し位は悩んでいるんだよね。
ヴァっさんは、うんうん、って頷いてるし。
「よし、それじゃあ予言で絶倫にす」
「それはダメなの!!もう姉さまは元から凄く絶倫なの!毎晩眠らせてくれないぐらい凄いの!むしろ普通で3日3晩ノンストップなの!!それは止めてぇぇぇ!!」
「うぅ、じゃあそれは止めるっス。」
メシアの叫びが響き渡る。
うん、そんな事叫ばれると、いたたまれなくなるよね!?
ヴァっさんも、ちょっと引いてるし。
とりあえず、現状の悩みを打ち明けて、何か良い改善策がないか聞いてみたけれど。
ヴァっさんはひたすらに考え込んでしまった。
その後、うんうん考えこんだあと、ヴァっさんが顔を上げる。
「決めたっス。覚悟して聴くっスよ!?」
「早く言いなさい。」
「つれないっスねぇ。まあ、いいっす。
まず、セエレは、今、この瞬間から、セエレのご主人相手にだけ、触れ合ってる時は全身の感度100倍になるっス。
逆にセエレのご主人は、セエレに触れる時、触感が300倍良くなるっス。」
「はああ!?何てはた迷惑、な・・・っ!?」
「おお、凄い!セエレの頭、サラッサラの髪でいい感触!! 」
「はぁ・・・っ、ダメですぅ、ご主人様ぁぁ!」
うーむ、すごいな、この予言!
いつまでも頭ナデナデし続けられるぜ!!
「えー・・・と、次、言っていいっスか?」
「あ、うん、良いよー?」
セエレを撫でながら、ヴァっさんの予言を続けて聞けば。
「えーと、セエレのご主人は、これから新月の度に発情期が来るっス!!
そこで、相手と交わってチョーキモチイイんなら、その相手はみんな、セエレのご主人の番になるっス!!番になれば毎晩パーリィナイトっスから、悩みも解消っスよ!
これで、予言終了ッス!!」
おお、何だか凄い予言だなぁ。
ただ・・・・
「あの、さ。言いにくいんだけど。」
「何っスか!?変更は認めないっスよ!!」
「いや・・・予言、4つになってないか?」
「本当っスーーー!!!?」
慌てふためくヴァっさんに、激怒するセエレ、それを見て涙流しながら爆笑するソロモン、と、この場は暫くカオスな空間へと化していった。
しばらくして。
ごめんなさい、をヴァっさんが連呼しつつ、一度言った予言は取り消せないそうで。
アタシは仕方なしに受け入れる事にした。
セエレはこの貸しは高くつくぞ!とヴァっさんにまだ怒っているし、ソロモンは床に転げて笑死しそうになっていた。
メシアは少し不安そうに、こちらに抱きついて離れないし、本当にカオス過ぎるよなぁ。
「よし、じゃあヴァっさん、キリキリ情報提供しておらおうか?」
にこやかにアタシが告げると、ヴァっさんは土下座せんばかりの勢いで床に大きな紙を広げ、一気に色々な魔方陣と説明文を書き上げて、アタシに渡した。
「これが、古来からの僕の一族に伝わる反魂の陣と回復の陣とあとそれに関係する色々っス。
説明はセエレが読めるはずっスから、これを活用して欲しいっス。」
未だ涙目で見上げるヴァっさんに、アタシは感謝と、失敗は気にしないように言って、その紙束を受け取った。
セエレは、通信の機能のみ付いた腕輪をヴァっさんの腕に嵌め、貸しの分、これから知識を貰う旨、約束を取り付けていたみたいだった。
その後、夕方も遅くなる頃合いだったため、アタシたちはソロモンたちに別れを告げ、階下に降りてきたクロムと共に自宅へと帰るのだった。
そして自宅で。
夕飯を皆で食べている時に、予言の事やソロモンの事を皆に報告したら。
黒呼とクロムが味噌汁を吹き出し、よっすぃ~が動揺して箸を取り落としたのは、とっても珍しい光景であった。
ドジっ子、ヴァっさん参上!!
こいつがドM悪魔だっ!!




