三十九:魔術構築
※途中で御褒美シーンがあります。
「と、いうわけで、下界の王たちに問い質したのだが、今回の件は、希少素材の銀狼の毛皮を狙った密猟者と、それを支持する地方統治者による偽の情報で、下界の王が兵を派遣したという事じゃ。」
「ほう。それで?」
「うっ、支配人殿がおっかないのぅ。で、突然辺境の浜に大量の兵士や冒険者が現れるわ、海上では花火よろしく爆発が相次ぐわで、一帯の海域におったモンスターも魚もいなくなり、その日の漁は全滅だったそうじゃ。」
「へ~大変だったのねえ~?」
「女将殿は優しいのぅ。それで、近隣住民達からこの事が苦情として王の耳に直ぐ入り、兵も冒険者も当日中に海の王都に撤収、この事がバレた、というわけじゃ。その後は密猟者・地方統治者ともに厳罰に処されるという事じゃよ。」
「あの、狼さんたちは、この森でずっと暮らせるの?」
「おお、白龍の坊か。左様、此方の事を下界の王に伝えたらのう、奴め物凄く焦って謝ってきおった。その上で、森で保護する事も宜しくと言っておったぞい。」
「・・・・・。」
「良かっタ、ミンナ一緒、まタ遊べル。」
「そうじゃのう。ワシも、また視察を兼ねて、其方に遊びに行きたいのぅ。」
『まだ決済の書類があるんですよ!これが終わらないと行けませんよ!』
「・・・うう、ワシ、がんばって書類終わらせるから、また近いうちに行っても良いかのう?」
「ああ。王の手が空き次第、また連絡くれたら町まで迎えにいくよ。
とりあえず、此方はこちらで何とかやっていくから、人間の中の取り決めはそちらで上手くやって欲しい。じゃ、よろしく!」
朝イチで、朝食食べてる時に王から通信が入ったので、皆で対応したのだけれど。
王、マジで胃薬必要かもな。開発を急ごう。
そんな事を考えつつ、次々食事を終える皆に今日の予定を聞いてみると。
クロムは出勤、龍は当番制でパトロール、月影兄弟はパトロールに同行、よっすぃ~は館の警備隊長として新規の闘鶏へ訓練や講習、月呼はまだ琥珀が幼いので世話しつつ館内のメイド作業、セエレとメシアは状況に応じて対応、という事だった。
つい、黒呼たちがパトロールに同行ってどうするのか?と聞いてみたが、どうやらここ数日で黒呼達の龍も青年位に進化したらしく、龍形態だと背中に一人乗せても平気で動けるらしい。
それもこれも、毎日与えてるセエレのミルクのおかげだとか。
すごいなぁ、日々子供たちが大きくなってゆくー
そんなことを考えながら、慌てて出勤してゆくクロムに行ってらっしゃいとお見送りしていると。
「・・・・・・」
ーーーーチュっ
「い、いってきます!」
おもむろに、クロムにキスされたんだけど。
そして、キスしたあと真っ赤になって脱兎の如く仕事に行ってしまわれたんだけど。
「ふぅぅん、それじゃあ、俺もあとでしよっと。」
そんなアタシの背中に、黒呼の呟きが刺さる。
くるりと背後を向けば、むぅっとむくれるメシアと、眉間にシワを寄せて厳つい表情のセエレ、少しご機嫌で支度をする黒呼がいた。
ーーー平常心、平常心。
きっとアメリカンスタイルな出勤なだけだよ。
宣言通りに黒呼にもキスされ、少しだけブロークンハートになりながらも、メシアとセエレ、途中で捕まえたよっすぃ~を連れて、アタシ達の寝室へとやって来た。
とりあえず椅子を出し、本題へ移る。
そう。
銀狼の隠された経緯と事実、そして再生計画の話し合いを行ったのだ。
もちろん、セエレもよっすぃ~も激怒、メシアは現物を見て号泣していた。
その上で、時空間魔法と時間遡行術と回復・再生魔術とあと色々足して、新しい魔術を産み出し、それで全員を復活させようという事で話はまとまり、メシアとセエレは古の術式を書き込んだりディスカッションし、よっすぃ~は乱雑に置かれた台車から、一匹一匹の記録を取り記録してくれた。
アタシは自分の知っている術式や陣を書き写して、どれを組み合わせたり足し算引き算、メシアからもらった術式を組み込んであーでもない、こーでもないと考え込んでいた。
いやあ、これっていわゆる、死者蘇生・復活の呪文みたいなものだから、全部や一部のパーツが揃っている再生魔術とは、また違う事になるんだよねー。超むずかしい!
その後、パトロールから帰ってきた子供たちに呼ばれるまで、アタシたちは集中して作業をしてしまい、腹を空かせた子供達の為にみんなで慌てて昼御飯を作る羽目になった。
そして。
午後も午後とて、あーでもないこーでもないと3人で脳味噌フル回転させディスカッション、よっすぃ~も百を越える記録取りにフル稼働していたが。
「も~!むりぃ~!わけわかんなくなっちゃったぁ~!!」
途中で、メシアの頭から黒煙が上がる程に知恵熱とおぼしきものが噴出し、ダウンしてしまった。
慌ててベッドに運び、氷嚢を作って頭の下と上に設置する。
「はあぁぁ・・姉さまごめんなさい、少しメシアお休みするわね?」
メシアはそう告げると、唐突に意識を失ったのだった。
それを期に、今日はここまでにしようという事になり、アタシたちは後片付けを迅速に行い、リビングへ撤収する。
よっすぃ~はその足で外へ向かい、戦闘訓練に乱入していった。
・・・うん、よっすぃ~、毛皮の記録しながら、泣きそうな表情になっていたからなぁ。
あの中には、子狼の毛皮もあったから。
この憤りは、何処かで発散しなきゃやってらんないよね。
アタシは外で激しさを増す戦闘訓練を見ながら、ふと、セエレの様子を伺う。
朝よりも、もんのすっごい眉間の皺が刻まれていた。
セエレも息抜きが必要かなぁ。
アタシはセエレの隣に座って、眉間のシワを伸ばすように撫でる。
「セエレ、このシワ、跡になっちゃうよ?」
「くっ・・・ですが、どうしても、どうすれば良いのかわからなくて!」
泣きそうなセエレを落ち着かせるため、アタシはセエレを抱き締めた。
「はいはい、落ち着いて?正直アタシも、復活させるのには長丁場になるなって思っているからさ。
もう少し、ゆっくりやっても良いんだよ?」
「ふぅぅ、ご主人様ぁ・・・」
「がんばってるご褒美に、魔力、いる?」
そう言ってみたら、セエレは思いっきり顔を上げ、速攻アタシの膝の上に馬乗りになり、座った。
アタシが次を促すと、嬉しそうな表情になったセエレが口づけて、魔力を吸い上げてゆく。
以前のご褒美と同じく、腰を揺らめかしながら魔力を吸うセエレに、気がすむまで付き合ってあげようと思いつつ。
それでも、長い口づけの途中で手持ちぶさただったので、イタズラでお尻を撫でて揉んでみる。
うん、やっぱ男の尻だなぁ。
あんまり柔らかくない尻をついついリズム良く弄んで揉みまくっていると。
「んんぅぅん!!」
ものすごく腰も身体も痙攣させて、セエレが脱力してしまった。
息も荒く、以前の御褒美の時と同じく、いやそれ以上に恍惚の表情で、こちらにしなだれかかってくる。
「ご、しゅじん、さまぁ・・・」
「ん、セエレ、満足できた?」
「はぁい・・・とっても、気持ち、よかったぁ・・れすぅ・・・」
「そりゃ良かった。落ち着くまで、こうしてていいよ。」
「ふぁい・・・」
時々顔を首もとに擦り付けて甘えてくるセエレを抱っこしたまま、アタシはどうしても解けない魔方陣の方程式の組み立てに頭を回すのだった。
煮詰まった時は、気分転換が大事!!
次の話は、番外編!




