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三十八:群れ

 

 朝御飯を食べ、今朝あった出来事を皆に全て伝え、よっすぃ~やメシアからも、館ではどういう様子だったのか情報交換する。


 館は館で、よっすぃ~とヴェルトが協力して牧場内に転移してきた狼を移動させ、メシアが次々と回復させていき、最初に来た大銀狼が目の覚めた狼に説明して回るという中々のチームプレーだったそうだ。


 ただ。


 最後の母銀狼が転移してきたのは良いが、余りの巨体に動かせず、そのまま転移陣の前で治療したらしい。

 大銀狼も周囲を忙しなくうろうろしていて、ヴェルトが落ち着かせるのに苦労したと言っていた。


「そっちはそっちで大変だったんだな。」

「そうよ姉さま!特に最後の子は、眼が覚める迄にまた、新しい子が送られて来たらどうしようって、よっすぃ~さんと心配したのよ?」


 ああ、そうなると、下敷きになっちゃうもんなぁ。

 本当に申し訳ない。



 キッチンの窓から外を見やると闘鶏の厩舎越しに、のびのび過ごす狼達がみえる。


 木苺とヴェルトが自分の思った事などを皆に話している最中ではあるが、これからどうするべか。


 あとで、メシアとセエレ、よっすぃ~だけには、例の素材になった狼たちの復活計画を話しておこうかな。


 ふと、木苺が、人間の冒険者達の話を始めたので、アタシは口に人差し指を当て、ジェスチャーを送る。


 木苺が、途中であっ!というように理解し、狼の毛皮が沢山あった事だけを除いて、皆に伝えた。

 その件で、「真っ裸で放り出すとは・・・」と、少し皆に引かれたのは致し方ない。




 そして、皆で会議中、やはり議題に上がったのは「これからどうするか?」だった。


 ①銀狼たちは、ここ(深淵の森)で住みたい。

 →森の仲間に説明して、ご挨拶して、仲良くしてもらわなければいけない。


 ②人間が、下界側から森に侵入し、また悪さするかもしれない

 →龍達でパトロール(散歩)して、人間がいたらアタシたちに腕輪で報せる。攻撃してきたら、鳩尾殴って気絶させて捕縛。


 ③下界の森には結界が張ってはあるが、更に逃げてくる魔物がいるかもしれない。

 →以前、森で生活する皆に聞いたところ、皆の生活分布では、森の奥の下界側で生活するのはあまりいないとの事。陽当たりが少し悪いので、必然的に美味しい木の実がなる館~洞窟周辺で暮らしていると言っていた。

 まあ、空いてる土地があるならそこに住んでもらって、山を削って日当たり改善しても良い、のか?それで、食料は果樹など植えて、解決かな?


 ④人間にイチャモンつけられたら?

 →やっちまったアタシが出ます。その前に、王に今回の件を伝えておこう。


 ⑤人間から魔物は森から出るよう言われたら?

 →魔物の流儀に従い、下界を滅ぼします。これは、今までこの森で生きてきた、森の魔物たちの総意です。


 ⑥この件に関して、人間に求める事は?

 →この地において、例え以前は下界の者だとしても、この地で生活する魔物に手を出したら、フルボッコにします。なので、後追いは厳禁とします。

 あと、移住してくる子にとやかく言わないこと。生物の移住なんて良くある事だし。




「・・ふう。話を纏めるとこんな感じでしょうか?では、今の話を天空の王に伝えて、人間同士であとは話着けてもらいましょうか?」


 ニッコリ黒い笑みで、セエレが通信機を起動させて王に繋げ、事の内容を話す。

 最初はご機嫌な王もそのあとの話によってどんどん勢いを失くし、最後は「ワシが下界の方を何とかする。」とポツリと言って通信が切れた。


 ああ、今度メシアに相談して、一瞬で治る胃薬でも開発して渡してあげようかな?


 そんな事を考えるほど、少し王が可哀想に思えた。




 それから、母子銀狼を連れて森の仲間たちに話をしてみれば、みんな寛容で「大変だったね~、僕たちのご先祖も下界から逃げてきたんだよ~」と口々に言って、狼が住むことを受け入れてくれていた。

 そして魔物コミュニケーションで銀狼が住みやすい所を教えてくれたり、その場所に先にいる魔物に鳥の魔物が話をつけにいってくれたりとバタバタしたが、直ぐに銀狼がのびのび暮らせる場所が見つかったので、本当に良かった。

 なお、居住地は畑の奥の森と山側である。


 基本的にこの森は食料豊富で自給自足が出来る位に実りもあるし、山脈から流れる川には魚も豊富ではあるが、時々空腹で倒れたり具合悪くなる魔物もいるそうで、そんな時には館に連れて来るように魔物たちに伝えてから、皆と別れて館へと帰還した。


 そして、銀狼たちのお引っ越しと、これまた驚いた事に母狼のお腹に赤ちゃんがいるらしく、あと少しで産まれるとの事で、出産の時は安全を考えてこの巨大厩舎にて産みたいと言うので、それもOKし、狼たちと移動する。



 目的地に着いて思うのは、森の奥・洞窟とは反対側に、こんなにも大きな洞窟があるとは・・・という感動であった。


 とりあえず入り口付近の整備をメシアやセエレや狼に任せ、アタシは洞窟の奥に向かう。


 森の仲間たち曰く、ここは今、何も住んでいない場所だと言うのだが・・・何だか気になる。

 飛びながらどんどん奥に進み、突き当たりの大岩の前で、降り立った。

 岩に耳を当てて、奥の気配を読み取るとーーーいる。


 何か、大きな生物が、いる。

 眠っている、のかな?息はしているけれど、何だか呼吸が、弱く感じられる。


 すっぽり嵌まっている大岩の端、少し脆くなっているところに杖を捩じ込んで、奥を見れるようにしてみると。


 白い、毛皮が、倒れて、いる?




 ーーーやべえ!!これ、ここに閉じ込められた系の子じゃないですか!?


 アタシはメシアに通信を入れてから、ど◯でもドアを展開しメシアを呼ぶ。

 セエレは、この大岩を除いた時の爆風や破片から、結界を張って狼達を守る事になってるので、そのままステイ。


 メシアの準備が整った所を見計らって、アタシは除き穴から内側に結界を張って、あとは大岩で支えている箇所の重力操作や強固な支柱を建てて結界をはり、大岩と対峙した。


 うーん、岩を内側から粉末に砕くのは良いとして、舞っちゃうと空気悪くなるし・・・ああ、掃除機みたいに砕いた側から吸えば良いのか。


 アタシは吸引用魔方陣を準備し、岩に風化と粉砕の魔法をつかって、次々と大岩を削除していった。

 なんだか、ケ◯ヒャーで壁面掃除するのに、感覚が似ているなあ。


 ものの数分で、大岩を取り除き、正面を見てみると。


 白銀の巨体の狼が、虫の息となっていたのだった。


「メシア!頼む!」

「任せて、姉さま!!」


 アタシはその子をメシアに任せ、更にその奥に進むと。


 沢山の、狼の亡骸と。


 ものすごく痩せこけて、でも動けずにこちらを鋭く見つめるだけの白銀の狼たちを、見つけた。


 アタシは一気にクリーンの魔法と再生魔法を使い、亡骸になって間もないであろう白狼たちも復活させた。

 なお、生きている生物に再生魔法を行使しても、最低限の回復にしかならないのがネックである。改良の余地があるなぁ。

 そんな事を考えつつ、直ぐにメシアを呼んで、回復したての白銀狼も一緒に来てもらった。


「何て事なの!みんなとてもひどい状態だわ!!」

「メシア、アタシも協力するから、一気に回復させよう!」

「わかったわ、姉さま!!」



 アタシとメシアは手を繋ぎ、メシアが展開する広範囲回復魔法にアタシの魔力を足して、洞窟一杯まで範囲を拡大させ、魔法を炸裂させた。


 狼たちは、どんどん回復していく自分の姿に驚いていたが、最終的に立ち上がり、歩けるようになって、とても喜んでいた。

 そんな白銀狼たちに、先に倒れていた狼が群れのリーダーらしく、色々説明をしている。



 そこでアタシは群れのリーダーに話をしてみる。

 それは、下界から人間に追われてやってきた銀狼も、ここに住んでも良いか?という事。


 白銀の狼は皆、一緒に住むのは大賛成との事だ。

 何故なら、ここに閉じ込められたのも人間のせいだ、という。

 冒険者のような者達が、勝手に住みかに入って悪さしていたので怒ったら、笑いながら閉じ込められたと。

 同じ、人間に追われた者同士が群れるのに、理由はいらないと言ってくれた。




 改めて、白銀の狼たちを連れて入り口迄行くと、最初は母狼も戸惑っていたみたいだけれど、説明して話をするうちに銀狼も白銀狼も仲間意識が芽生えたらしく、最終的にひとつの群れとして生きていくことになったようだ。


 良かった、これで何とかなりそうだな。



 アタシたちは狼にあとはよろしくと言って、安心して館へと戻ってきたのだった。



なお、この狼たちは後世、深淵の狼、という名前で呼ばれる事になります。

扱いは、伝説上の生物と同じ位の扱いです。

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