三十七:下界の銀狼
「パパ、ママ!今、このヒトたちといっぱいお話ししてんだけど、みんな、深淵の森で住みたいって~!」
おう。
木苺のコミュニケーション能力が発達していて、正直直ぐに打ち解けていてスゲーな、と感じる。
本当に子供の成長とは早いものだな・・・
「姉さま、この子達みんな連れて行くの?」
「みんな移住したいんなら、いいんじゃね?
山越えが大変そうだから、転移陣で一気に連れて行くか?」
そんな会話をしながら、途中で確保した仔狼を渡してあげると、みんな「アリガト!コドモ、ダイジ!!」と言って尻尾を振っていた。
とりあえず転移陣を用意して、最初にメシアに牧場前へ戻ってもらってから、狼の群れを送る。
そして。
「メシア、アタシときぃは、もう少し谷底を探してみるよ!もし生存者がいたら、速攻そっちに送るから、宜しく!」
「わかったわ、姉さま、気を付けてね!」
通信でメシアに言付けて、アタシたちは山脈の谷底へと急下降し、谷沿いを捜索した。
しばらく探していると、早速、呼吸が弱くなっている大狼を数体発見。
即座に再生魔法をかけて、その後転移陣でメシアの元へ送る。
更に別の谷へ向かう途中にも、もう一体。
そして、内側の山脈との狭間で、体を串刺しの如く岩に貫かれ、動けなくなっているのが一体。
全て救出して、メシアへと送る。
そして。
「あ・・・いた。」
「このヒト、あのこのお母さん?」
血にまみれ、前足が両方失くなり、ただ横たわるだけで必死に生きていた、一際大きな銀狼。
何となく、雰囲気が最初に助けた狼に似ていたので、多分母親なんだと思う。
アタシと木苺は近寄って、母狼に事の次第を語り聴かせた後に、直ぐにメシアの元へと転移させた。
「これで、もう最後かなぁ?」
「うん、この谷で助けを待ってる狼さんの気配は、もうないと思うよ、パパ?」
よーっし、これで一段落!
さて、帰るべ。と思っていたら。
『ちょっとー、囮の狼、いなくなってるんだけどー!?』
『はあ?あんな大きなモン、あの怪我で動ける訳ないだろー?』
『えー!?でもいないんだけど!?まだあと10匹くらい、狩ってないのいたよねー!?まだまだ毛皮取れるじゃーん?』
人間の、声だ。
しかも、囮とか言いやがった。
そして。
振り向いた先には、人間の冒険者パーティが、大きな銀の毛皮を沢山積んだ台車を背後に、此方を見ていた。
ああ、素材になってしまったら。
再生が、出来ないーーーー
「・・・去ね、クソ野郎ども。」
アタシは先ほど下界に炸裂させた転送魔法を冒険者たちにぶつけ、本人のみを、先ほど見た海の近くへと転送してやった。
カランカラン、と、冒険者が来ていた装備や衣服が落ちる。
アタシは近づいて、台車に積まれた数百はあろうかという数の、狼の毛皮を結界に閉じ込め、無限の腕輪へと収納した。
いつか、必ず生き返らせてやると、心に誓って。
あとは、ばっちぃ人間の装備をゴミ袋へ入れて、アタシたちは心が沈んだまま、館へと帰還した。
「姉さま、お帰りなさい!こっちは皆、元気になったわよ?」
「ああ、ただいま。」
遠くを見ると、巨体厩舎の前で、最初に助けた子が、母狼に物凄い勢いで甘えていた。
よかった、あのお母さんを助けられて。
とりあえず復活した狼の為に、厩舎の更に奥の土地に巨大な池を作り、地形操作の魔法にて、洞窟の底に流れる流水がその池に流れるようにし、更に池の底から元の洞窟の底へと戻るよう、上手く水流調節しながら、突貫工事を行った。
池を開放すると狼たちは我先に水を飲み、魔力を含む水でとても美味しいと言って、みんな殺到していた。
「あとは、ご飯かぁ。」
一匹一匹に作ると、量も大きさも時間も足りない。
なので、アタシは頭の中で理論を組み立て、ある程度まとまった所で、腕輪の中から巨大な焼き骨付き肉を出す。
そして。
「上手くいってくれよ!ーー巨大増産!!」
たった今造り出した新魔法を骨付き肉に展開すると。
ズ、ズ、ズ、ズ、ズ・・と地面を鳴らしながら、骨付き肉がとんでもなく大きなサイズへと成長した。
よし、成功だ!!
アタシはビックリしている狼たちに、食べて良いと許可を出すと。
牧場の中心が、野性味溢れるお食事タイム(戦場)へと変わっていった。
狼たちは「ウマイ!ニク!」と大満足してくれてるみたいなので、頑張れば全員で食べ尽くしてくれるだろう。
それだけ肉を巨体なサイズにしてしまったのだ。
うん、やっぱりもう少し調整が必要かもなぁ。
とても巨大な厩舎を2階建てにして、全ての狼がゆったり過ごせるようにして、アタシたちは一度館へと戻った。
時刻は、朝の8時過ぎ頃。
お腹を空かせた皆のために、今度は朝御飯をサクサク作っていたら。
他の龍たち、そして仏頂面のセエレと、わくわくしている忍達がやって来た。
その中でセエレだけ、こちらへとやって来る。
「おはようセエレ。どうした?具合悪いの?」
「おはようございますご主人さま。いえ、早朝に色々起きたと、よっすぃ~さんから伺いまして。
そんな事なら、私も一緒に連れて行って頂ければ良かったのにと、悔しくて。」
「あー、ごめん、本当に急いでたからさ。何があったのかは、朝飯食べながら話すけど、いい?」
「承知いたしました。・・・手伝います。」
セエレと一緒に準備して、いつもより早くいただきますをしながらも、アタシは何を話そうかと悩むのだったーーー
また、更新が不定期になりそうです。




