三十四:王一行、襲来
「うーし、じゃあお迎え行って来るわー」
「気をつけて、フミエ。」
「パパー、いってらっしゃーい!」
黒呼や龍たちに見送られ、アタシ達は転移し、クロム邸からギルドへと向かって歩いていた。
途中、商店街へ寄り道して、皆へのお土産や備品を買い、ギルドへ着く。
そこでクロムを呼び出して、執務室へと向かった。
「おお、そなたが深淵の館の長であるか!」
執務室にいたのは、初老で大柄な戦士とも言えそうな人物と、細身の秀才チックなインテリボーイ、あとは若い戦士とエルフみたいなオネーチャン。チャンネーと言った方が正しい位に露出して派手。
その中の大柄な人が立ち上がり近づいて来た。
この人が王かな?
「初めまして。深淵の館のフミエです。こちらは、宿の女将のメシアと、宿の支配人のセエレです。よろしくどうぞ。」
「ワシはこのスイレン国王、首都ヴァルス(Valse)より参った、シュウじゃ。
帰還した冒険者から話は色々と聞いておる!とても極上な宿と食事だったと!今宵は宜しくお願いする!!」
凄く豪快な王だなぁ。
それにしても首都がバルスとは。天上の国にふさわしいのやらいないのやら。
よっすぃ~も、きっと同じ反応をするだろうな、とか思っていたら、セエレがフフッと笑う。
「ーーーまったく、失礼なお客様だ!」
ーーースパァァァン!
セエレが一瞬魔力を放出すると、ものすごい破裂音を出し、アタシたちにまとわりついていた黒い何かが弾けとんだ。
その残骸が、エルフのチャンネーに帰っていく。
「その程度で私達の力が見抜けるとでも思いましたか?いくら長命種でも、やっていい事と悪い事の区別はつきませんか?」
ああ、ブラックセエレが降臨したよー。
確かに、部屋に入った瞬間に、ヌメヌメネトネトとまとわり着かれて、ちょっと気持ち悪いなーとは思ったけれどさー。
チャンネーがビビッて泣きそうになってるしー。
そこに王が割り込み、物凄い勢いで謝ってきた。
「なっ、本当に申し訳ない!ワシの配下なのだが、とても心配性でな。本当に失礼した!!」
「・・・ごめんなさい、許してください!」
黒の残骸から情報を読み取って、その途端ガタガタ震えて謝ってきたチャンネーと王の謝罪が被ったので、アタシは顔を上げるよう頼む。
「別にアタシは気にしてないし、いいよ。セエレも一端落ち着いて?」
「承知致しました。ちょっと初対面でマナー違反をされたので、少しイラつきましたが、納めます。あとでご褒美くださいね?」
「わかったわかった。それで、今宵のお客様は、此方のご一行で宜しいのかな?」
クロムに視線を送ると、凄い形相で拳を握り締めて何かを耐えていた。
「・・・クロムも落ち着いて?」
「だって!!」
「まあまあ。もうこれは御仕舞い。彼等がまた此方に悪い事をしたら、その度にお仕置きすればいいんだから。落ち着いてよ?」
「ううう、わかった、から、僕もご褒美欲しい。」
「ああ、いいよ、後でね?それで、ここにいる皆を連れて行けばいいの?」
「うん。僕ももうお仕事終わったから、一緒に帰る。」
「おっけー」
アタシはセエレに視線を送り、セエレもこれからする事を説明してくれた。
その間に、メシアに先ほどの道具屋で買ってきたドアノブを持っていてもらって、そこに即席でドアを模した空間・転移魔法を展開した。
作業完了後、メシアがドアを開くと。
その先は転送部屋の外側と繋がっていて、よっすぃ~が待ち構えていた。
「はい、じゃあどうぞ。」
目を丸くして動かない王達を正気に戻し、全員を館に転移させたあと、外側に手を回してドアノブを回収し、扉を消した。
「こ、これか古代魔法か・・・便利過ぎて、何故使える者が居なくなったのか不思議じゃ。」
王が率直な意見を言う。
それにセエレが
「強大過ぎて、使う魔力量もさることながら、使い手同士で大戦争が起きて、そこで後継者に伝える術を失ったのではないでしょうか?
まあ、人間の行う事ですので、定かではありませんが。」
と律儀に答えて、その後メシア・よっすぃ~と共に皆をお宿の方へと案内して行った。
なお、宿の扉の鍵は解除して、自由に通れるように改造してある。
とりあえず先に温泉に入ってもらって、そのあとに、王の願いで龍の子や黒呼たち、セエレの部下たちと全員で夕飯、という流れだ。
なので、館に鍵かけて、全員で宿の食堂へと移動した。
クロムや黒呼たちに子供の世話をお願いし、メシア・セエレ・よっすぃ~が王一行のサポートに回り、アタシは分身を使って料理無双をする。
今日のメニューは
・大人気!づけ丼
・アボカド鮪丼
・鮪ステーキ
・メカジキのオハウ
・和風ハンバーグ
・鮪ユッケ
・野菜たっぷり魚のホイル焼き
・野菜のグラタン
・適当サラダ
あとはデザートに
・黒蜜きな粉のわらび餅
・抹茶アイスクリーム
を用意する。
そう!先ほどギルドに行く前に、生クリームが食料品売場にあったので、それを買ってアイスを作ってみたのだよ!
結果は大成功!手持ちの抹茶と合わせてみたら、本当に美味しかったので、ぶっつけ本番で出してみる事にしたのだ!
風呂から上がった王たちは、目の前の食事に目を輝かせて直ぐに着席した。
今回は自分で取り分けてもらうスタイルで、机の真ん中に出来上がった料理を置いている。
部下たちもみな座った所で
「はい、いただきます!!」
というアタシの一言により、その後、食堂が戦場と化した。
飲み物を渡すメシアやセエレも大忙しで、何より龍たちの食べるスピードが物凄い。
しかも、テーブルマナーも上達しており、汚す事なく優雅に大量に食べてゆく!
かという王一行も同じく、上品かつ大量に食べており、物凄く一心不乱に食事していた。
もちろん、次々なくなる料理の補充で、こちらの料理無双も継続していたのだが。
しかし、無理して食べ尽くすことなく、全員が腹8分目辺りで自発的にカトラリーを置き、ごちそうさまをしていた。
そして、目を輝かせながら、食後のデザートを要求してくる。
勿論、沢山用意していたデザートは、何一つ残る事なく食べ尽くされた。
「いや~久しぶりに気兼ねなく、上手い食事を食わせてもらった!誠に馳走だった!!」
「ええ、特に米がこんなに美味しく、魚と合うなんて思いもよりませんでした。」
「このメニュー、王都でも食えたら良いのに。」
「それに、このアイスクリーム?でしたかしら?とっても美味で、何時までも食べられますわ~!」
うん、王一行も満足そうで何よりだ。
それから、皆にお茶を淹れて、食後のお話しタイムへと移る。
勿論、セエレ&クロムが主導を握ってのお話しだ。
「それで?あの第二王子はどうなったんです?」
「はあ・・・本当に不祥の息子が申し訳なかった!あやつにはこの拳にて鉄拳制裁を強めに食らわしてやったわい!!3ヶ月位は立ち上がる事すらままならんじゃろう。」
おう、お父さん結構体育会系なのね。
つまりは、骨折るレベルの折檻って事ですか。
「ふふ、そうですか。それは宜しゅうございました。しかし、心根が変わらなければ、此方に害があるのは目に見えてますよね?それをどうするおつもりで??」
「僕たちの家族に手を出したら、クロム・D・オプサイトも黙ってはいられないよ?最悪、この国を敵に回したっていいんだよ?」
おー、ブラッククロムとブラックセエレが手を組むと、ここまで言うようになるのかー。
キッチンカウンターから飲み物片手に話を聞くと、この二人の怖さがわかるなぁ。
「それは、理解しておる。あやつは自己顕示欲と嫉妬心で狂っておるのだ。今までの様に容易く外界と繋がれる事は、今後ないじゃろう。」
「王室の方でも、かの者を幽閉する予定でございます。」
王の側近のインテリボーイが、会話に混ざる。
「あのクソガキには私も昔から手を焼かされましたので、今までの感謝を込めて、ハデスの北塔に一生幽閉する予定ですよ?」
「クソガキって・・ワシ、其奴の父親なんだがのぅ。しかしそれに全く反論できんわい。
ハデスの塔ならば、皆忌み嫌って繋がりなど持とうとも思わんじゃろう。」
ニッコリ笑って告げるインテリボーイに、思わず王もツッコミつつも納得してはいるようだ。
しかし、その塔はどんな所なんだ??
疑問符を浮かべる我々に、チャンネーが説明してくれた所によると、
その塔に足を踏み入れた者は日に日に精神に異常をきたし、最期は塔の最上階から身を投げ、死と引き換えに自由を得るという事。
塔の内部には異常の一つもなく、何故、幽閉される者全てが身投げをするのか解明されておらず、その為昔からあの塔は呪われた忌み地となっていること。
通常の処刑よりも苦しむ時間が長い為、死罪よりも重い刑罰として国では扱われていること。
など、重々しい内容が語られたのだった。
「そうですか。其ならば、此方も直接手を下すような真似はしないでおきましょう。
いえ何、今では私達の子供と言っても良いような龍の子を、私利私欲に使おうと考える輩は、この手で殲滅した方が良いのかと迷ってましてね?」
にーーっこりとセエレが笑いながら話す様に、王一行は悪寒と危機感を感じたらしい。何だか少し震えている。
ふと、子供たちに目を向けると、とっても興味深そうに、話し合いに耳を傾けていた。
「そーいえば、うちの子たち、結構成長しただろ?みんなとても利口で良い子たちなんだ。よかったら王様も、何かお話しして上げてよ?」
アタシは王たちに無茶振りしてみたが、王は王で目尻を下げ、好々爺の様になって、子供の相手をしはじめた。
他の面子も、子供達の輪に入り、一緒に遊んであげていた。
あ、この人達は子供が平気な人なんだな、良かった。
セエレとクロムも顔を見合せ、王一行の輪に入り、お世話している。
なんだか、端から見ると、お爺ちゃんとその家族、みたいな感じだなぁ。
それから小一時間、王一行と龍たちは戯れ、その後子供たちが眠くなって来たので、アタシたちは宿から引き上げて館へと戻ってきたのだった。
結論:王は割りと良い人。




