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三十二:牽制

 

 ふぅ・・・・温泉は、やはり癒されるなぁ。



 自宅の風呂場で、真っ昼間から思いっきり羽を伸ばして、まったりと過ごす至福の時間。


 の、はずなのに。




「ご主人様、マッサージしますね。」

「姉さま、メシアが洗ってあげるね~!」



 何故か、セエレとメシアが、乱入してきた。


 アタシはまだ、この身体に慣れてはいないと言うのに、この二人はお構い無しでグイグイ触れ合ってくる。

 とりあえず、乳白色の濁り湯なので大事な所は見えてはいないが、正直、一人にして欲しい。


 どうやって逃げ出そうか考えていたら、


「ふふ、この様に明るい中で私の裸体を見せたのは、ご主人様が初めてです。」

「メシアも、姉さまが初めてだったわ。メシアの体の隅々まで、全部知ってるものね?」


 なんて、卑猥な会話が飛び交っているし。

 いや、これって普通に風呂入ってるだけだろ!?


「いい加減、黙って大人しく風呂に入ってくれよ。」


 とお願いしても、無言でグイグイ密着して身体中ワサワサ触ってくるし。


 何なんだ、一体。


 しばらくして、アタシは耐えられなくなりサクッと風呂場から逃げ出した。




 そして、ダッシュでリビングへと避難してみたら。


 昼間から少しお酒を呑んだのか、ふらふらしている黒呼に抱き付かれ、ここでもワサワサお触りタイムとなってしまった。


 驚いているクロムの目の前で、積極的な黒呼が何か言いながら甘えて来るので、酔っ払いの攻撃をかわせずになすがままにされていると、追いかけてきたセエレとメシアまでくっついてきて、カオスになる。


 ああ、困った。


 本当に一体なんなんだ。


 涙目でよっすぃ~に訴えかけ、それに『やれやれ』といった感じでよっすぃ~の介入があった事で事態は収まったが、突然、何故にこんな事が起きたのか解らず、ただアタシは呆然とするのだった。






 そして、夜。


 メシアとベッドに入り、しばらくすると、セエレがやって来て、メシアとは反対側に潜り込んで抱きついてきた。


 まあ、ベッドは3人寝てもまだ余裕のあるサイズなので、広さ的には問題ない。


 それにしても、どうしてこうも引っ付かれるのか?

 アタシはその疑問を直接二人にぶつけた。


「なあ、何でこんなに、今日はずっとくっついてくるんだ?」


「それは、その・・・」

「ご主人様には、私やメシアさん、黒呼さんの匂いをマーキングしておこうかな、と思いまして。」


「は???」


「だって、クロムくんが姉さまに、気のある素振りをみせたから・・・」

「ご主人様が一人で居ても、私達の存在を主張できた方が後々平和かな、と。」



 ぬー、なるほど、何となくだけど、理解した。


 焼きもちみたいなものか?


 アタシは二人の頭を撫で、笑う。



「そんなの気にしなくてもいいのに。もう既に、メシアもセエレも黒呼も、嫁っていうか家族みたいなものじゃない?約束しただろ、みんなでずっと一緒に生活するって。」


「「・・・!!」」


「それに、クロムはどう頑張っても、龍の皆から見ればお兄さんか伯父さんだろうよ?ママは、育てた人がなるもんだ。」


 そう言い切ると、セエレもメシアもにまにま笑って、顔を埋めてきた。


「嫁・・・私がご主人様の嫁・・・」

「姉さまの嫁・・・もう一押しかしら・・・」


 予想外に謎の不吉ワード連発してたのが気になったが、しかし気にしたら負けだ。

 アタシは二人の体温と襲いくる睡魔に負けて、そのままスヤスヤと眠りの世界へ落ちてゆくのだった。






 翌朝。



「ご主人様、朝ですよ、起きて下さい?ご主人様?」



 うーーーーーーん、眠いーーーー


 何だかめっちゃ揺すられてるーーーー


 もーーー大人しく静かにしてよーーーー!



「え!?ごしゅ・・・っ!?」



 うあーーー、やっと静かになったーーーー


 ーーーーーー寝よ。








「姉さまーーーーー!!!起きて、起きて!!」



 あー、何だかメシアが騒がしい。


 眠いなぁーーーーーー



「本当に姉さま、ダメーーー!!」


「ご主人様が気持ちよく眠っているのです。

 ふふ、もう少しこうしていても良いでしょう?私も色々触られて、はぁ、気持ち良すぎて、もう何度イッ・・」


「やーーー!!!ダメなのー!!!」




 あー、メシアが泣きそうだ。


 アタシは、泥濘からゆっくり覚醒し、瞼を抉じ開けてぼんやり目の前を見る。


 白と、黄色と、赤。


 なんだろうと思いつつ触りながら、更に視点を合わせて覚醒していくと。


 色々濡れ乱れた裸エプロン姿のセエレを、押し倒し抱きしめておりました。




「!?うおわぁぁ!?」


 思いっきり飛び退いて、全部まるっと見えているセエレに慌てて布団を被せた。




 スッゲーびっくりした!何が起きたの!?


「ふふ、ご主人様の寝呆けた姿がこんなに可愛らしいとは、思いませんでした。

 私なら、何時でも押し倒して、全て召し上がっていただいても宜しいのですよ?

 もう、私の身体のあらゆる全てを見られてしまった事ですしね?」


 うっとりとした表情で、つらつら何があったのか語るセエレ。私、愕然。


 メシアに至っては、


「これはメシアだけのご褒美だったのにー!!」


 と叫びまくっている。どういう意味だ。


 もーどうしよう!?と混乱していれば、キィ・・・と扉の音が。


 其方に目をやると、顔を真っ赤にしたクロムが、「ごめん」と言い残し立ち去って行く所だった。




 本当に、どうしてこうなった!?





 泣きそうになりながらメシアをなだめ、セエレを着替えさせた後に、階下へと降りていく。

 いつもの朝のルーティンをこなして、後は無心で朝食を作る事にした。


 朝食の席では、クロムが何か言いたげに此方をチラチラ見ているが、それをスルー。

 メシアやセエレがくっついてきても、それもスルー。

 とにかく無心で朝食を食べ、後片付けをし、よっすぃ~と共に龍の子たちと戦闘訓練をしまくって、しばらく過ごした。



 こういう時は、何も考えないのが一番!!



 爽やかな汗を流しつつ、月影兄弟with月呼も参加して、わりとガチバトルが勃発しておりました。


 いやー、楽しいねぇ~!


 最終的に、アタシ&よっすぃ~VS.全員という状況になり、よっすぃ~のマジ無双が見れたのも収穫だった!!


 夜まで皆でやんちゃして、館に戻って夕飯を作り皆で食べる。





 うん、何も状況は変わってないですよねー。



 なんなのこの空気。


 朝とは違い、黒呼が隣で甲斐甲斐しくお世話してくれてるし。


 クロムの視線は遠慮なくなってきたし。


 セエレもメシアもにっこりしてるし。




 あーーー、これは。


 あとでクロムと個人面談しとくかなぁ。



 ちょっとだけとっても面倒になりそうで、アタシは心で盛大にため息をつくのだった。





よっすぃ~は色々と御察し頂ける、親友です。


クロムは、恋愛に興味があるけれど、人間嫌いなのでまともな恋愛はしたことがない、抗体のないかわいそうな子です。

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