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三十:セエレの想い出

セエレの、過去のお話しです。


ああ、御主人様は、とても優しい。


今までの、私を喚び出した主人と違って、私の『心』を呼び起こす程にーーー





私は過去に天から堕とされた、いわゆる悪魔だ。


あの天の戦は必然的で、堕とされた事には何も不満はない。


それからは、闇の世界を一から統合しなくてはならないため、明けの明星に付き従い、闇の世界を平定した。


その後、人間により呼び出され、色々おねがいを聞いてやったり、その対価で魂を頂いたりしたが、正直、平定してからはとてもつまらない日常を過ごしていた。




100年なんてあっという間で、


人の世も、闇の世も、明日を生きるのに精一杯の魂ばかりで。


疫病が蔓延する時代、とある魔術師の『赤子が安泰に育つ食料が、欲しい』という願いに応じるため、人魔共用の成長ミルクを開発したり、


下らない王族の、下らない願いに対して、無理矢理対価を求めて悪人を一掃したり。


その中でも、ソロモンという人間だけは、超効率主義で、対価も適当に魔力をくれるだけで、私の体に触れるどころか、むしろ魔力玉をぶん投げて寄越し、拾ったら帰れ位の暴君だった。


そのくせ同じ人間に対してはとても優しく、私の目から見ても、とても素晴らしい指導者だった。


余りにも対応の差が酷いので、途中で本気で、私の何が気に食わないのか?等聴いてみたが、「悪魔全般に深入りする気はない」と一蹴されるばかり。


同じく喚び出される同僚?のアホな悪魔がドMで、毎度あの眼と態度が堪らない!とか言って悶絶している事に、あまり理解が出来なかった。


ドMのアホは、これでもかとMの道を私達同僚へ説いてきたが、私にはソロモンに対して、そこまで入れ込める要素はなかった。


まあ、知識だけは覚えておいたのだが、それがいつの間にかスキルに昇華していたのには驚きだ。



ある時ドMのアホ悪魔が、


『お前達でも、絶対的に自分の君主となる者が自分の前に現れたら、きっと俺と同じ状態になる。予言する。骨抜きのメロメロのドM街道まっしぐらへと変貌するだろう!』


と、とっても嫌な予言をくれて、同席していた私たちは、猛烈に嫌な気分になったものだった。


何故なら、あいつの予言は百発百中なのだから。




それから、ソロモンが亡くなり転生し、それと同時に私達は散り散りの離ればなれで封印され、永い間、眠りに着かされたのだ。


勝手にそんな仕掛けしやがって。

ソロモン、次に会ったら、ぶっ飛ばす!!




そして。


とても永く眠っていたのだと思う。



ある時、ふと、時間がきちんと動いている事に気が付いた。


ぼんやりと色々思い出しながら、目の前のワインを呑みつつ、状況確認していたときに。





私は出逢ってしまったのだ。


本当の、ご主人様に。




出逢った瞬間は溺れるという最悪な展開だったけれど、そのあと話をしてみたら、本当に、あのドMの言う通りだったのが、とても癪でした。


でも、この脊髄を昇る悦びと、震える鼓膜に感じる多幸感、相手の魂から感じられる膨大な魔力の熱量に、実は私は本当に腰砕けになってしまったのです。


それから、想いを隠しつつ、側にいて恋憧れ。


ソロモンの様に『道具』としてではなく、永久に側に存在(い)る者として。


そして、叶うことなら、こんな堕天した身でも、番になり家族として、側にいれたら。


この身体中にご主人様に触れてもらって、全てをご主人様で満たされたら。


それは、何て素晴らしい事なのだろうと、つい、夢を見てしまったのです。



その想いを、味見として少し触れただけで感情が昂り、うっかり暴露してしまったのは、まあ良しとしましょう。


それがあって、とても鈍感なご主人様でも、私の事を意識してくれたのですから。





それから少し経ち、先だってのご褒美で。


私は『相手に満たされる』という幸福と、更に堕天する要因の『快楽』を得て、もう二度と、ご主人様の側を離れられないと悟りました。


心も身体も満たされ悦び、思わず、愛を告げてしまったのは、今思い出しても恥ずかしい限りです。


こうなってしまっては、私は再び闇の世界ーー魔界に戻ったとしても、再起不能の廃人になるしかないでしょう。


なので、ご主人様の魂に私の魂との繋りを植え付けて、ご主人様が転生したら、必ず私も側に転生する術を、つい、御褒美のあの時に条件反射で発動させてしまいました。


これは、私の番になる者だけに行う事を許された、一度だけの秘術です。

使った事に、微塵の後悔もありません。


そう、これで、ずっと一緒です。


メシアさんもご主人様から同じ術がかけられているみたいですが、ご主人様を満足させるのに、絶対に二人ががりの方が良いはずなので、それはそれで良い事だと思います。


私の全ての『初めて』を、ご主人様にもらって頂けるなら、それはそれは満足なのです。



そんな、とても幸せな想い、いつの間にか忘れていた心を、思い出させてくれたご主人様。


また、あのご褒美を貰うため。


それ以上の御褒美を貰う為に、今日も私は、御主人様に全力でお仕えするのです。





まさかの、セエレの変態性は、同僚のドM悪魔からだった!!


そして、まさかの処・・・乙女だった!!


という、暴露回でした。

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