二十九:御迎え
しばらくして、復活したセエレと着替えたメシアがリビングに戻った頃。
クロムからの通信が入った。
「ふふ、お待たせしました、皆さん。
とりあえず首謀者を捕らえて華麗に尋問した結果、奴等簡単にゲロりましたよ~!」
「わあ、内容がダークなのにテンション高いなぁ!」
ウキウキな感じで語るクロムに、やはり闇が深いと感じる。
「それで、何時くらいに100人位の冒険者のお迎えが来るのかな?」
「ええ、それに関しては、一度スイレンの首都で預かって、そのあと各人の各国登録ギルドに強制送還する予定ですので、明日辺りにお伺いしても宜しいでしょうか?」
それはいいけど、帰りは歩きなのか?と思ったら。
アタシの隣にぴったりと座って、セエレが語り始める。
「お疲れ様です。お迎えに関しては承知しましたが、首謀者のお話はどういった内容なのでしょうか?」
腕輪で話ながら、セエレは空いてる手でアタシと腕を組み、手を絡ませて繋いできた。
それを自分の太ももの上に持ってきて、ギュっと手を握る。
その後頭をアタシの肩に乗せ、寄りかかってきた。
「ああ、あいつらの話だと、この国で龍人・・・龍のハーフだね。それを沢山作り出して、戦士にして、世界とやり合うみたいだったよ?本当にバカげてる。
僕たちを道具としてしか見てないってわかったよ。だから、宰相や属する貴族には痛い目見てもらったよ~?」
「ふふ、それは宜しゅうございました。では、それに関しては其方にお任せしますが、問題はこの爬虫類・・・失礼、龍の子ですね?この子たちをどうするか、ですが・・・」
「うん、それに関しては、僕の方で預かろうかと考えているんだ。種族的にも同族だしね。」
そこで、セエレの抱きつく力が少し強くなった。
そうだよなぁ。ここまで育てて、引き渡したくはないよなぁ。
アタシは唐突に会話に混ざる事にした。
「あのさ、クロム。この子たち、もうアタシの家族みたいになっちゃったんだよね。だから、クロムに渡すのは難しいよ。」
「・・・それは、龍の力を貴方が管理する、という事ですか?」
わあ、クロムから闇が感じられて堪らない!
「ん~、龍の子たちには普通に生きてほしいんだよ。誰の制限もなく、のびのびと。それなら、人間の近くではなく、この場所・この森が一番育て易いんじゃないかなって思うんだ。」
「でも・・・折角、僕にも家族ができると・・・」
「龍たちと一緒に住みたいなら、クロムもここに住めば良いんじゃない?
出勤はセエレの部下の後ろに乗って、街まで行けば良いんだし。色々方法は、あるよ?」
「え・・・いいんですか!?ならばお願いします!!早速準備します!!」
「お・・・おう早いな。無理しないでよ?」
「はい、それでは明日、参ります!」
何だか食い気味に話が纏まって、なんだかなぁ、と思っていたら。
メシアとセエレと黒呼から、お説教をくらいました。
理由は色々あるけれど、真実を本当に話しても良いのかわからない相手に、容易く同居を許してはいけない、というのがメインで。
でもねぇ。
ギルドでふとクロムのステータスを、魔眼使って見たんだけど、一緒に住んでも良いって思ったんだよね。
そのステータスが、以下。
===================
名前:クロム・ダイ・オプサイト
種族:龍人(稀少種)
スキル:龍化、咆哮、威圧、吸魂、下僕化、全言語会話
魔法:龍言語魔法、生活魔法
耐性:物理無効、魔法吸収、異常状態無効
称号:最後の龍人、孤独の龍王、愛を乞う者、ギルドマスター、人間不信、環境保護の達人、影の番人
弱点:家族愛、龍族
:
:
===================
思いっきり、人間嫌いの寂しんぼなんだよね。
アタシ達は種族上では人間じゃない上に、龍の子を育ててる状態だから、ある意味家族としてのコミュニティを形成してるようなもんで。
そこに、家族愛に飢えたクロムが来たいと思っても、不思議じゃあないんだよ。
その事を皆に告げると、少し神妙な面持ちになっていた。
「ご主人様、クロムがここで住まう事により、クロムの裏の仕事の件でも、この館が目を付けられる可能性があります。本当にそれでも良いのですか?平穏とは遠ざかりますよ?」
ふむ。
平穏は欲しいぞ?
アタシは少し考えて、凄く良い方法を導き出した。
それをクロムや皆に伝え、クロムからも了承を得た後、其を実行に移すべく行動した。
翌日。
朝早くから、迎えの馬車が森の手前に到着したと連絡を受け、アタシは冒険者の皆様を連れて森の入口へとやって来た。
ギルドの職員に引き渡し、お見送りをする。
冒険者たちは口々に、ものすごく回復した、ご飯が美味しかったと言ってくれたので、まあ、良かったのかな、と思いつつ、館へと帰還した。
その後、館でいつも通り過ごしてから、夕方近くになって、アタシとメシアとセエレは街へ向かった。
到着後に向かうは、ギルドマスターの部屋。
ドアをノックした途端、速攻開いたのには苦笑したものだ。
「待ってたよ!フミエ!!」
「ふは!アタシはサンタさんか!?」
「うふふ、もしくは遠足前の子供みたい?」
「皆さん、浮足立ち過ぎです。ほら、さっさと参りますよ?」
既に帰り支度を済ませてあったクロムに先導されながら、ギルドからも近い高級住宅地の中のクロム邸へとお邪魔した。
結構大きな屋敷で、中で働くメイドたちもクロムの影の部隊の者とのこと。
影にも今回の事は伝えてあるらしく、皆に祝福されたとクロムは語った。
「そうそう、昨日、言われた通りに、侵入者に気付かれないような造りの小部屋は、用意したよ?」
玄関から入って直ぐ、ここに隠し扉があるとは思えない場所に、その小部屋は造られていた。
アタシはとりあえずサービスで、この敷地内と小部屋の手前に、敵意を持つ者が入ると死ぬレベルの激痛を受ける結界を張り、
小部屋の扉へは、関係者以外が通ったら玄関まで飛ばされる術を施工した。
そして中に入り。
床に転送用の魔方陣をコピペで設置して、これで準備完了!!
「はい、出来たぞ。」
「!!・・・あ、ありがとう!!」
クロムの尻尾が、嬉しさの剰りブンブン振られていて、本当に喜んでるんだな、と解り一安心した。
それから、セエレの先導でこの魔方陣経由で転送され、アタシ達は深淵の館まで一気に戻って来たのだった。
深淵の館の転送部屋は、1階の玄関ホールに面する小さな書斎の隅を改造したものだ。
元々、ここは書類や本を保管しようかと考えていたが、クロムが来るなら仕切りを付けて、クロムの秘密基地にすれば良いという事になったのだ。
そこから出て、クロムは持ち帰り仕事を書斎の机の上に置き、アタシ達に促されつつ、リビングへと足を踏み入れた。
「あっ!パパ、ママたち、おかえりなさい!」
「パパ、おみやげは~?」
木苺とフランが駆け寄って来る。
それをあやしつつ、龍の子たちに、クロムを紹介した。
皆、クロムの尻尾に興味深々で、まさかの琥珀までクロムに駆け寄ってお話ししていた。
「クロム、大人気になっちゃったな。」
「うう・・・どうしようフミエ、僕、凄く幸せだ!」
クロムが泣きそうになりながら、今までの冷徹な心の壁を取り払ったかのような表情で、龍の子たちと触れ合う。
「みんな、これから一緒に暮らすから、クロムと仲良くしてね?長い間、クロムはひとりぼっちで大変だったんだから。」
『わかった!クロムにーちゃ、よろしくー!』
「うん、よろしくね、みんな・・・」
龍の子に大人気なクロムを置いて、アタシは夕飯の準備に取りかかった。
セエレとメシアも龍の子の相手をしてる為、とりあえず一人でがんばる事にする。
猛烈な勢いで夕飯を作っていると、ふと、黒呼が此方に来る。
視線はクロムに向かっていた。
「どうした、黒呼?」
「いや、あんな表情のギルマス、初めて見たから。結構衝撃で。」
「へー、何時もはどんな感じだったの?」
「何て言うか、誰に対しても壁が一枚間に在るような、すごく冷静冷徹で笑顔も本心じゃないような、そんな感じだった。」
「あー、人間不信だからねぇ。」
「でも、俺や白呼は何だかとても気にかけてくれてたから、悪い人ではないと思ったけれど・・・あんな風に笑うんだな。」
「ふふ、クロムも安住の地を見つけられたんなら、良かったと思うよ。」
それに、月影兄弟を気にしたのも、自身の境遇と同じく
『人間に道具とされる種族』
であるから、凄く心配しての事だと思うし。
以前、ギルドで黒呼の事を話した時に、本当に安心してたからね。
とりあえず、クロムと面識のある月影兄弟や月呼に後は任せて、アタシは豪勢な夕飯を作りまくったのだった。
次のお話は、外伝的に誰かのお話しにしようと思います。




