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「夜のリビング」

《その人たち、また来た》

《安心する?》

母親が画面を伏せる

リビングの空気が重くなる

一ノ瀬が小さく舌打ちした

「タイミング全部見てんじゃん」

神谷も静かに眉を寄せる

凛はソファに座ったまま動けなかった

怖い

でも同時に、どこか感覚が麻痺してきている

通知が来るたび驚いていたはずなのに

今は、また来たと思ってしまった

母親が凛の隣へ座る

「今日はスマホ、このまま預かるね」

凛は小さく頷く

そのとき

一ノ瀬がコンビニ袋をテーブルへ置く

「ゼリーと飲み物だけ買っといた」

「……ありがとうございます」

神谷が静かに言う

「何も食べてないと余計しんどくなる」

現実的な言葉

その普通さに、少しだけ救われる

母親がお茶を入れにキッチンへ行く

リビングには、テレビの小さい音だけが残った

ニュース番組

街の映像

アナウンサーの声

全部いつも通りなのに

凛だけ別の世界にいるみたいだった

「……凛」

一ノ瀬

顔を上げる

「今日、寝れる?」

凛はすぐに答えられない

多分、無理だった

神谷が少し考えてから言う

「今日はリビングいた方がいいかも」

凛は小さく頷く

一人の部屋に戻る想像をしただけで、胸がざわついた

そのとき

玄関の外で、何か音がした

カタン

全員の動きが止まる

凛の呼吸が浅くなる

一ノ瀬がすぐ立ち上がる

「……見てくる」

神谷も一緒に玄関へ向かう

凛はソファから動けない

母親もキッチンから顔を出す

玄関の外を確認する音

数秒後

「……何もない」

神谷の声

でも

ドアの前に、小さな紙袋だけが置かれていた

コンビニの袋

一ノ瀬が持ち上げる

中には、缶のミルクティーが一本

そしてレシート

レシートの裏に、ペンで一言だけ書かれていた

『甘いやつ好きだったよね』

凛の背筋がゆっくり冷えていった

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