表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/79

#74:しばしの別れ

「引き続き、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!」


【前話のあらすじ:教会の中に足を踏み入れたレイとクロム。メドン神父の罠により、二人はダンジョンへと送られる。ノクティアの助けを得て、二人は出口に向かうが……】


レイたちがダンジョンの出口に辿り着くほんの少し前。


ゼノは”主”とむきあっていた。


「レイ様……なのですか?」

おかしな質問だということはわかっていた。


そう。

目の前の男は、間違いなく自分の”主”だった。

なのに、そのはずなのに、どこか違和感を覚えてしまう。


存在感とでも言うのだろうか。

近い存在でもあり、遠く感じられもする存在。

それが、自分の敬愛する”主”だった。


仲間と言われれば、仲間なのだろうし、友と言われれば、そうなのだろう。

配下とも言えれば、得意先とも言える。


少なくとも、主との関係が、自分の中で定義されることはなかった。

レイ様自体も定義することを望んでいないように思えた。


時折、無性に尋ねたくなる時がある。

「私は貴方にとって何なのか?」


けれど同時に、定義してしまえば離れていってしまう。

そんな気がして、怖くて、開いた口を閉じてしまう。


確たる証拠があるわけではない。

ただ、”主の姿”をした目の前の男は、そういった(たぐい)とは異質なもののように思えた。


この世界のものではない。

そんな風にさえ感じてしまう。


「なんだ?何をじろじろ見ている?」

冷たく淡々とした声。


姿だけでなく、声まで、主そのものだった。

だからこそ、違和感を覚えてしまう。


自分の知っている主なら、きっとそんなことは言わないのではないか。


「行くぞ」

短く、なんの配慮もしていないかのように、命令するのではないか。


「貴方にとって、私は何なのですか?」

ずっと胸の奥にしまっていた質問をぶつけてみる。


この”淡白な”(あるじ)になら、ぶつけてもいい気がした。


戸惑っている。

それがはっきりとわかった。


顔に微かに皺が刻まれている。

何かを考えこむように視線を下に落としている。


「信頼できる配下であり、友でもある。これでいいか?行くぞ、ついてこい」

そう言うと、(あるじ)は歩き出した。


その背を追うことはできなかった。


「お兄ちゃん、ついてかないの?」

孤児の一人が、不思議そうにゼノを見上げる。


「ああ」

哀しいかな。わかってしまう。

いや、きっと、出会った頃から、答えはわかっていた。

自分の主は、自分に期待していない。


別に見放されているわけではない。


言うなれば、”真心”を見せないのだ。

孤独であろうとする。

きっと誰にも理解されようとしない。


親切に見せない親切さ。

そういう部分が、特に自分に対しては強いように思えた。


配下……友……

そんな風に言ってほしくなかった。


「くだらない」

レイ様なら、そう一蹴する。

そして、自分もそう言ってくれることを願った。


「何をしている?」

目の前の男がじっとゼノを見つめる。


「お前は誰だ?お前はレイ様ではない」

「何を言っている?」


沈黙が流れる。

目の前の男は、ゼノの出方を伺うように、距離を取っている。


必死に思考を巡らす。

この”沈黙”は永遠ではない。


なぜ、この男は化けの皮を被っているのか。

自分より非力なのか。

自分を人質に取りたいのか。

ギュストたちと関係があるのか。

そして、この男は何者なのか?


「ベルー・ドンギヌス」

その声は、自分の後方から聞こえてきた。


気づけば、視界がぼやけていた。


「にぃに、泣いてるの?」


そうか。

自分は泣いているのか。

張り詰めた緊張の糸がスルスルと解れていく。


目の前の男はレイ様じゃなかった。

自分の勘は正しかった。


「あとは任せろ」


そう言うと、二人はベルーとの距離を縮めていった。


ああ。これだ。

これが、レイ様なのだ。


労わるわけでも、突き放すわけでもない。

ただ、その背中を見るだけで、安心してしまう。


「おい、ま、待て!話し合おう!」

「偽物と話し合う気はない」


ザシュッ。ダシュッ。

斬った。

けれど感覚はなかった。


黒い靄と共に、死体がどこかに消えていく。


「やはり本体は別のようですね……」

クロムの言葉にレイ様が頷く。


「気持ち悪い……」

クロムが呟いた。


自分のことを言っているのだと理解するのに、少し時間がかかった。


「まさか、俺のことを言っているのか?」

「お前以外に誰がいる?」


クロムが笑っている。

そして自分も笑っている。


これでいいのだ。

この日々はきっと、またやってくる。

そう信じることにした。


「ゼノ、……」

「お任せください」

ゼノの言葉に、レイが驚いたような表情を見せる。


その先を聞きたくはなかった。

親切心を見せられているうちは、所詮、シレハ村の者たちと同じ。


遠慮がなくなった時に初めて、少しだけ、(しん)を預けてくれる。


そして、キールやゼファール、クロムは、(しん)の他に、幾分かの(しん)を置かれている。

まだ、自分はその領域にいないのだ。


ついて行けないことはわかっていた。

それでも、その言葉を聞きたくはなかった。


「レイ様、次に会う時は……」

主は微笑んでいた。


「お任せを……」

「ああ、頼む」


「戻りましょうか?」

クロムの言葉で、一行は再び歩き出した。


セント・エルメリアについたのは、夜が更けた頃だった。


エクリプシアの一室。


久しぶりの顔合わせだった。


各村の村長たちに加え、ニーナやシア、ロブ、ガストン、バイス、ルード……


「少し遅れました。申し訳ありません」

ゼファールが恭しく礼をして、入ってくる。


空気が張り詰めている。


腹心。

皆が、そう誇れるだけの自負を持っていた。


「で、このメンツを集めたってことは、余程のことだと思うけど、何なのかしら?」

リーンが冷静に口を開く。

「この店は”エクリプシア”じゃろ?このような場所に招くとは、余程のことじゃな……だいたい、この場所は安全なのか?」

ダレイが警戒するようにクロムに尋ねる。


「安全だということは保証します」

クロムの言葉で察したのか、ダレイがそれ以上、尋ねることはなかった。


皆がクロムの言葉を待っていた。


ふぅ。

クロムは息を少し吐き出すと、ゆっくりと口を開いた。


「既に御存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、レイ様は脱獄なさいました」

目を見開く者。冷静な者。目を細める者。


反応は様々だった。

「んなら、レイ様はフィルス大村には戻らないってことだべぇ」

ウォルターが、間延びした声を響かせる。


「そのようですね。でなければ、レイ様が姿を現すはずですから。行方は聞かない方がいいでしょう」


ニーナやシア、ロブやガストンは何も言わなかった。

レイが脱獄した時に、ある程度の覚悟はできていたのかもしれない。


「「いつか、また会う時まで、フィルス大村を頼む」。それがレイ様からの伝言です」

身勝手だと思う者はいなかった。


それが苦渋の選択だということは、この場にいる誰もが理解していた。


「任せてください」

「おうよ!任せな」

ロブとガストンが明るい声をあげる。


「クロム、どうせ貴方はレイのとこに行くんでしょ?言っといてよね。野垂れ死んだら、許さないって」

苦笑しながら、クロムは頷いた。

「わかった」


シアは何も言わなかった。

ただ、ぎゅっと唇を噛み締めていた。


「では、しばしの別れです」

クロムはそう言って、ゼファールと一室を後にした。


月が少しずつ、沈んでいこうとしている。

その晩、それぞれの想いを胸に秘め、各々が帰路に着いたのであった。


激動の時代が訪れようとしていた。

―――――――――――――――――

cf.)F:1~20 E:21~50 D:51~90 C:91~150 B:151~220 A:221~260 S:261~300

【今話の極小情報:】今回も、読者の皆様が忘れていらっしゃると思い、無駄な説明を少し。

今回は、ドーバのステータスについて。

一応、ドーバは#54にて、”メガツ大村の大村長”として登場しております。


ドーバ:【名:ドーバ 年齢:40】【MP:200】【ステータス】武力:60.D(70.D) 知力:50.E(50.E) 統率:90.D(90.D) 政治:60.D(60.D)【サブステータス】兵法:40.E(60.D) 馬術:100.C(110.C) 陸戦:60.D(60.D) 海戦:60.D(60.D) 工作:120.C(140.C) 諜報:30.E(50.E) 農耕:50.E(60.D) 商業:60.D(60.D) 建築:50.E(50.E) 成長:100.C(100.C) 忠誠:--【固有スキル】--【スキル] 剣術(E) 体術(D) 風魔法(E)

【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、「暇乞い」です!


ふっと二言:「昨日は投稿できなかったです。すみません。猛反省……今日は投稿頑張ります!新作も投稿しますので、どうぞよろしくお願いいたします!」


~これからも、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!~


—―—―—―—―【他作品もよろしければ!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!


—――・『奴は元々、最強だった~戦乱を生きた英雄、現代で覇者になる~』

「何が始まりで、何が終わりだったのかはわからなかった。けれど、何かが俺を変えようとして、俺は何かを変えようとしたのだ」


理不尽な運命を、圧倒的な力で覆す!

【戦×無双×成り上がり×天下統一】—―それぞれの思惑が渦巻く世界。その先に待ち受けるのは!?


―――

・「一生を病室で終えた俺、呪いが解けて、天下獲る~貧村に捨てられたけど、"最強"に魔改造します~ 」

「天下を獲る。その果て無き夢を、本気で信じた者だけが見れる景色、それが「天下」だ」


不自由だった前世を、自由を得た今世で破壊する!

【戦×無双×成り上がり×領地経営】 —―天下を夢見る少年の秘密とは!?

⇧※本作です。これからも、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ