#75:誇りを持て
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【前話のあらすじ:ついに再会を果たしたゼノとレイたち。けれど、それは別れの始まりでもあった……】
黒岩の森。
レイたちは、かつて入国した場所から、再び出国しようとしていた。
「キール、すまないな」
“エクリプシア”の女主人になるのに、それ相応の努力が必要であることは容易に想像がついた。
今までの苦労を、他でもない自分が捨てさせたのだ。
「何を仰いますか、坊ちゃま……」
二人は、クロムとゼファールを待っていた。
既に脱獄してから、一日半が経過していた。
王都では、脱獄に気づき、この国境付近へと伝令がもたらされる頃であった。
「私たちの方が先に着くとは……クロムたちは一体、何をやっているのでしょうか……」
「そう、心配するな。もうすぐ来るはずだ……」
クロムたちには、”ある事”を頼んでいた。
それはバルムへの伝令である。
もし、レイの脱獄を、フィルス大村の国家反逆罪と取られれば、ベルナ大村のバルムたちの軍と真っ先に戦うことになる。
そのための伝令であった。
「レイ様」
淡白な声と共に、クロムとゼファールが現れた。
「遅すぎるわ……一体、何をやっていたら、こうなるのかしら?」
「心配したのか?」
キールが呆れたようにため息をつく。
「バルム殿は了承してくださいました。フィルス大村とレイ様の脱獄に関係がないことを証言してくださるそうです」
見かねたのか、ゼファールが報告してくる。
「坊ちゃま、仮にバルム殿が証言しても、五大公爵家が相手では……」
「そのために、レイ様はアーノット王に会いに行ったのだ」
クロムの言う通りだった。
バルムの証言だけでは、五大公爵家は納得しない。
しかし仮にも、アーノットは国王なのだ。
五大公爵家といえど、反逆罪で指名手配しようとしている男と同じ道を辿るほど愚かな真似はしない。
「レイ様、本当に大丈夫なのですか?アーノット王を信じていないわけではありませんが、相手は五大公爵家なのです……」
ゼファールの心配事はわかっていた。
相手が五大公爵家ともなれば、アーノットの意向に従わない可能性は大いに考えられた。
「問題ない。そのために”ゼノ”に任せた」
五大公爵家が唯一、手を付けられないのが”アストラル商会”だった。
それほどまでに、アストラル商会は大きくなったのだ。
星屑の雫など、五大公爵家の力をもってしても、生み出せないものばかりを流通させる商会。
今や、国内で、アストラル商会の名を知らない者はいないといっても過言ではなかった。
さらに、国外からわざわざ客がくるほどの影響力。
五大公爵家は、内輪で固まっているものの、その実、お互いの隙を狙っている。
そもそも、国外の派閥に対抗するために手を結んだだけの烏合の衆なのだ。
特に経済に大きく影響力を持つ、セルド家はアストラル商会のおかげで、今や、五大公爵家の中で、富を最も多く有していた。
「いくぞ」
かつて、国力が大きく衰退していたエルメリア王国。
しかし、その発展に寄与した少年は、”始まりの地”から、犯罪者として、去ることになったのであった。
一方その頃、アーノットは一人、物思いに沈んでいた。
一人になりたい。
そう言って、書斎に籠って、もう3時間になる。
「陛下、グラスナー公爵家の執事の方がお見えです」
「今日は誰にも会わん。出直すようにお伝えせよ」
去っていく足音が聞こえる。
「はぁ……」
思わずため息が出る。
一国の王に執事を寄越す五大公爵家。
“執事の方”、”お見え”……
果たして、敬っているのはどちらなのだろうか……
きっと、レイに会った時から、自分は変わったのだと思う。
昨夜、そう伝えた時に、レイは寂しそうに笑っていた。
いくら振り払おうとも、昨夜のことを思い返しては、心にさざ波が打ち寄せる。
「やはりか……来ると思っていた」
久しぶりの再会だというのに、ついさっきまで会っていたような懐かしい心地になる。
「アーノット陛下、夜分に申し訳ありません……」
捕まえようなどとは、到底、思わなかった。
「陛下、私は国を出ます」
それは、今、最も聞きたくない言葉であり、受け入れたくない言葉だった。
自分には力がない。
だからこそ、受け入れるしかなかった。
「すまぬ……私に力がないばかりに……」
慰めの言葉は来なかった。
ただ黙って笑っていた。
惨めにならずに済んだ。
慰めの言葉が来ようものなら、己の非力さを見つめなければならなかった。
「そなたはどうするのだ?」
長い沈黙の後の言葉だった。。
どこへ行くつもりだ。
そう聞きたかった。
レイもそれはわかっているはずだった。
そして、予想通り、何も返ってこなかった。
沈黙を破るようにレイが口を開いた。
「陛下。力とは何ですか?」
力とは何か。
誰かを思い通りにする権力や財力。
誰かを幸せにするための行動力。
「人に何かを与えられるもの……違うか?」
「陛下がそう仰るなら、そうなのでしょう。答えはないのです」
レイの言う通り、答えはない。
権力を力とする者もいれば、財力だとする者もいる。
「そんなことを言うために尋ねたのか。だとしたら、……」
「陛下。陛下は力をお持ちです。”誰か”ではなく、”己”を追い求める。それもまた力だと私は思います」
「確かに、誰かのために何かを為すことも、”力”でしょう。けれど、私にとっては、”己”に悩み、”己”のできることをしようとする、それもまた、力なのだと思います」
慰められたというより、救われた。
そう思った。
自分は、精一杯やっている、そしてこれからも続けていくしかない。
そんな道を示してくれたように思えた。
「そうか……私には”力”があったのだな……」
涙が出てきそうになるのを必死でこらえる。
自分のやってきたことは、誰にも届いていない。
そう思ってきたが、それは違う。
自分のやってきたことは、自分の悩んできたことは、”自分”が一番、よくわかっている。
そう、レイは言ったのだ。
自分のやってきたことに誇りを持て。
そう、レイは言ってくれたのだ。
「陛下……」
レイが珍しく、言葉をきった。
言うべきか、言わないべきか、そう迷っているような表情にも見えた。
「言わなくてもいい」。
そう声を掛けることができなかった。
レイの苦しそうな表情を初めて見たような気がした。
「陛下、私がもし、敵になったらどうされますか?」
なんだ、そんなことか。
簡単な質問だった。
その可能性はずっと前から考えてきた。
そして、何度考えても、答えは変わらなかった。
「私はそなたを妬んできた。父に気に入られるそなたが嫌いだった。だが、この座について初めて分かった。理想を掲げるというのがどんなに難しいことか。理想を貫くというのがどんなに恐ろしいことか」
ヘンリクを思い出す。
理想をぶつけあって、自分の手で殺めた弟を。
果たして、自分の”理想”とやらは、己だけの”理想”なのではないか。
迷いはあった。されど、進むしかなかった。
「陛下……」
「もし、敵となったら、迷いなく私を討て。私も迷いなくそなたを討とう」
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cf.)F:1~20 E:21~50 D:51~90 C:91~150 B:151~220 A:221~260 S:261~300
【今話の極小情報:】今回も、読者の皆様が忘れていらっしゃると思い、無駄な説明を少し。
今回は、マダスのステータスについて。
一応、マダスは#54にて、”バクス大村の大村長”として登場しております。
マダス:【名:マダス 年齢:36】【MP:600】
【ステータス】武力:60.D(70.D) 知力:50.E(50.E) 統率:60.D(70.D) 政治:80.D(90.D)
【サブステータス】兵法:40.E(60.D) 馬術:100.C(110.C) 陸戦:60.D(60.D) 海戦:60.D(60.D)
工作:20.F(40.E) 諜報:130.C(150.C) 農耕:50.E(60.D) 商業:60.D(60.D) 建築:50.E(50.E)
成長:100.C(100.C) 忠誠:--【固有スキル】--【スキル] 剣術(E) 水魔法(C) 風魔法(E)
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、「新章」です!
ふっと二言:「ついに第1章が終結……果たして、レイたちはどうするのか……今後も応援・お付き合いくださいませ!」
~これからも、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!~
—―—―—―—―【他作品もよろしければ!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
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【戦×無双×成り上がり×領地経営】 —―天下を夢見る少年の秘密とは!?
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