#3:世界に名を刻む一歩を踏み出したぞ!
「引き続き、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!」
【前話のあらすじ:300人もの盗賊に包囲されたシレハ村。砦で待機する200人もいずれ、この村にやってくる可能性が高いという絶体絶命の状況。レイはあえて降伏を装い、村人を守りつつ夜の闇に乗じて単独での「狩り」を開始する……】
戦利品が山積みにされている倉庫。
その中には村から奪われた小麦や、彼らが他所で略奪してきたであろう金銀財宝が詰まっていた。
俺はその中から、一際目を引く大きな銀塊をいくつか抜き取った。
盗賊たちは、派閥ごとに、村人の家や広場に固まって、眠りこけていた。
狙うのは、ベイリーの派閥だった。
ベイリー派が無派閥派の者たちと合わされば、最大勢力になるからだ。
抜き取った銀塊を、ベイリー派の男たちが雑魚寝している民家の、枕元や布団の中に隠していく。
気配は完璧に消して、動くくらい、造作もないことだった。
なにせ、何年も夜な夜な、オルヴァンに黙って、「黒岩の森」へと抜け出しているのだ。
準備は、完璧だった。
あとは、盗賊たちが見張りがいないことに気づくまで、待つだけだった。
1時間ほど経った。
夜は完全に更け、冷たい夜風が強くなり、幾人かの盗賊たちが寒そうに身体を震わせては、大きないびきを響かせる。
盗賊の1人が見張りのいるはずの一点をじっと見つめる。
「……おい、見張りがいないぞ。どうなっていやがる!」
そんな声が響いて、盗賊たちが眠い目をこすりながら、次々と起き上がる。
カルーの低い声が聞こえる。
「倉庫を確認してこい!」 苛立っているようだった。
カルー派閥の盗賊たちが倉庫を確認しに行く。
「そんなっ……!!」そんな声を上げて、盗賊たちが戻ってくる。
「頭目!!ぎ、銀塊がいくつか消えてやがる……ッ!!」
その報せに、カルーの怒号が飛ぶ。
「全員、動くんじゃねぇ!おい、お前ら、全員の荷を調べろ!」
カルーの命令でカルー派閥の配下たちが、次々と仲間の身辺を調べていく。
ほどなくして、カルーの部下たちがベイリー派の配下の寝床から、隠されていた銀塊を見つけ出したようだった。
「てめぇ……! 仲間の取り分を独り占めしようってか!? この裏切り者が!」
「違う! これは罠だ、俺たちは何も……っ!……ッ!!カルー、てめぇ、嵌めやがったな!!」
盗賊という生き物は、疑心が一度芽生えれば、それを対話で解消することができないらしい。
解決策は、常に暴力のようだ。
「カルーは最近、俺たちや、派閥に入らない者たちの取り分を減らそうとしていた! だったらこっちにも考えがあるぞ!」
ベイリー派の男が叫んだのを皮切りに、広場は修羅場と化した。
鉄と鉄がぶつかり合う音。肉を断つ音。怒号と悲鳴。
仲間だったはずの者たちが、昨晩まで酒を酌み交わしていた者たちが、互いの首を獲ろうと狂ったように殺し合いを繰り広げていた。
レイは『隠蔽』と『体術)』を駆使して、素早く、乱戦に入っていく。
ドッスやジョルジの派閥から盗んでおいた武器を使い、カルー派の有力な部下たちを後ろから始末していく。
第2の火種を生むためだった。
ほどなくして、カルー派・ジョルジ派・ドッス派が、ベイリー派や無派閥の者たちを皆殺しにしたようだった。
辺りはすぐに賑やかになる。
彼らは、酒を飲みだし、騒ぎ始めた。
盗賊とは、こういう類なのだろう。
俺はカルーのもとへと向かった。
「頭目……! 大変です! ドッスとジョルジが……あの2人が、混乱に乗じて、頭目を殺して、戦利品を奪おうとしています!」
「馬鹿言うな!ありえねぇ!」
カルーは、即座に否定した。
「で、ですが、頭目!俺らが、ベイリーの奴らをぶっ殺してるときに、あいつらの派閥は、うちの派閥の奴らも殺してたんすよ!!」
「な……ッ、なんだと!」
レイはカルーに死体を見せに行く。
そこには、ジョルジ派やドッス派の者が持つ、特有の剣で絶命した、カルー派の者の死体があった。
「あの野郎どもまで俺を裏切るのか!」
カルーは驚愕しつつも、自身の派閥の者たちに怒号を飛ばした。
「殺せぇぇぇ!! 裏切り者は一人残らず肉片に変えてやれ!!」
やはり、盗賊というのは、賊の習性なのか、仲間を疑うことには余念がないらしい。
黄金色の朝日がシレハ村を照らし始めた時、広場には、地獄絵図のような光景が浮かんでいた。
広場を埋め尽くしていた500人の盗賊は、見る影もなく、代わりに、累々と築かれた同胞の屍の山が成されていた。
生き残ったのは、血と疲労にまみれ、精神を摩耗させたカルーとその部下、わずか30人ほどだった。
「……あ、あいつらは、全滅、させたのか……?」
カルーは折れた斧を杖代わりに、肩で息をしながら膝をついていた。
周囲には、もはや立ち上がれる者など1人もいないようで、皆、一様に、座り込んでいた。
「仕上げの時間だ……」
俺は自作の弓に、矢を番える。
キリキリキリ。ヒュン。ヒュン。
枝から枝へと、飛び移りながら、次々と矢を放っていく。
風速、湿度、重力を計算に入れた狙撃。
カルーの部下たちは、喉笛、眉間、心臓を次々と撃ち抜かれていく。
疲労する相手を狙うのは、造作もないことだった。
「な、なんだ!? どこから撃ってきやがる!」
「まだ伏兵がいたのか!? 逃げろ! 黒岩の森の砦へ戻るんだ!」
盗賊が混乱すると、俺は、すぐに倉庫のそばの木へと身を移した。
「—―大気に漂う滴よ、我が命に応じ、逃れられぬ牢獄と成せ……」
パニックに陥った30人の残党が、死に物狂いで倉庫へと駆け込んでいく。
そこにあるはずの食料や財宝。
彼らの唯一の功績を持って、砦へと逃げ帰るために。
「なっ……!!」
彼らが目にしたのは、不気味なほど何もない倉庫だった。
レイは、昨夜のうちに、亜空間魔法で、盗賊たちの"功績"を亜空間に取り込んでいた。
「な、何もねぇ……。俺たちが奪った銀も、食料も……すべて消えてやがる……」
カルーが絶望に顔を歪めた瞬間、水魔法の詠唱は終わりを迎えた。
「……渦巻く水圧は絶望の檻、その身を深淵へと沈めたまえ—―水圧牢獄」
ガタン!
倉庫の重厚な扉が、大きな音を立てて閉まる。
倉庫の隙間という隙間から、抗いがたいほど高密度な水流が噴き出し、30人の盗賊を奥の壁へと叩きつけていく。
「—―氷の理、深淵の凍気。白銀の静寂よ、すべてを永遠の墓標へと変えよ。命の灯火を奪い、凍てつく刹那をここに刻め——永凍静界」
水浸しの倉庫内が、瞬時に極寒へと変貌する。
「あ、が……」
彼らは生きたまま、巨大な氷柱の中に閉じ込められた。
静寂が、村に戻っていた。
俺は広場に戻ると、オルヴァンたちの縄を解いて回った。
「終わりました、父さん。盗賊は……もういません」
「レイ……お前、一人でこれを……」
オルヴァンは、成す術もなく、絶命した300人の盗賊たちと、10歳の子供の顔を交互に見て、言葉を失っていた。
「父さん、まだ終わっていません。黒岩の森の砦に、まだ200人ほど残っています。では、行って参りますっ!!」
「一人でか!? せめて俺たちも……」
「いえ、父さんたちは、ここで、皆を守っていてください」
俺は、陽気にそう言うと、そのまま、村の出口へ向かって走り出した。
「—―凍てし理よ、我が歩みに応えよ。大地に薄氷の道を編み、摩擦を眠りへ誘え。我が意のままに、進みたまえ。白銀の軌跡よ、疾走の床となれ ——氷走踏界」
瞬時に、足元に氷の薄い膜が張られる。
自作の氷魔法による、高速移動。
前世で見たスケートの要領で、俺は颯爽と森の中へと入っていった。
人を殺した。
その実感が少し、胸を焦がす。
けれど、それ以上に、守りたいものを守れた。
守られていただけの前世とは違うのだ。
なにより、身体が思い通りに動き、知識を思うがままに使える。
それが、どうしようもなく、嬉しかった。
1時間後。
俺は『黒岩の森』に築かれた砦の前に立っていた。
(どうやら、200人、全員、砦の中にいるようだ……MP残量は200。砦の殲滅と帰路には、十分な量だ)
村で魔法を連発しなかった理由は、2つある。
1つは、魔法を発動するには、詠唱が必要だということ。
詠唱は基本、長ったらしい。
どうにか、前世の知識で短縮することはできたが、それでも長いことに変わりはなかった。
加えて、詠唱中に不意打ちを受ければ、詠唱は最初からやり直し。
実に効率が悪い。
そして、一番の難点は、詠唱のスピードだ。
詠唱を終えれば、自動で発動してしまう。
いつぞやの戦争では、詠唱を早く終えすぎて、敵が来る前に罠が作動してしまったなんてこともあったとオルヴァンから聞いたことがある。
もう1つの理由は、この巨大な砦を丸ごと葬り去るために、MPを残しておく必要があったからだ。
「—―来たれ、原初の水よ。 触れし力を拒まず、砕かず、ただ抱き、沈め、溶かし尽くせ。 刃も炎も雷も、抗いは波に崩れ、意思は静寂に溺れよ。我が心に応え、今ここに、万象を帰す水牢の円環を示せ—―蒼牢円陣」
俺が両手を広げ、詠唱を終えると、砦全体は瞬く間に、巨大な半球状の水の結界に覆われた。
盗賊たちは何が起こったのかわからず、次々と砦の中から出てきて、堅牢な水の結界の前で懸命にもがき続ける。
「――天の涙は鋭き刃。凍てつく星の雨となりて、罪深き者どもを貫け。逃げ場なき結界、氷獄の裁きを今ここに—―氷獄終雨」
半球状の結界の周囲が、真っ白に染まっていく。
周囲には、無数の氷柱が現れ、次々に、水の結界を貫通していく。
轟音。爆音。悲鳴。
レイは、砦を粉砕し、中にいた200人の命を、一瞬で「消滅」させた。
黒岩の森に存在し、村を脅かしていた悪意の巣窟は、瞬く間に、ただの瓦礫と氷の山へと変わっていた。
1時間後。
村に戻ったレイを待っていたのは、涙と歓喜。
そして、自分たちの理解を遥かに超えた存在への畏怖が混ざったような視線だった。
略奪された物資はすべて返還され、さらに盗賊が各地から集めていた莫大な金貨や武器が加わり、シレハ村は一夜にして、一帯で最も豊かな村へと変貌したのであった。
その夜、シレハ村では、簡素ながらも、これまでで最も贅沢な宴が開かれた。
オルヴァンは、村の男たちの中心で立ち上がり、厳かに宣言した。
「……レイ。おまえは今日、この村の救世主となった!」
オルヴァンはしわがれた手で、俺の肩を強く掴んだ。
「わしは決めた。レイ、おまえをシレハ村の、次期村長に任命する。10歳だろうと関係ない。おまえは、わしの、いや、この村の宝だ!」
広場を埋め尽くすほどの、爆発的な歓声。
十歳にして、次期村長に指名されるという快挙。
それは、歴史上、前例のない話だったが、反対する者は誰一人としていなかった。
かつて動かぬ身体で天井を見つめるだけだった少年は、今、自らの手で、運命を切り開いていた。
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【今話の極小情報】:魔法について
・魔法のランクで魔法の威力は決まる。
S級もF級も、例えば、『氷獄終雨』を使うことは理論上、可能だが、その威力に差が出る。
加えて、S級とF級では、詠唱の長さも異なる。
F級では、もはや詠唱するのに、30分はかかる……
ゆえに、この世界では、戦争において魔法アイテムと呼ばれる自動発動アイテムを使うこともある……
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、「勉強」です!
「ふっと二言:皆様は、魔法がある世界に転生したら、どの属性の魔法を真っ先に望みますか?筆者は、氷魔法です。理由は、強そうだからです!ということで、レイに氷魔法を使用して頂いております(笑)」
~これからも、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!~
—―—―—―—―【他作品もよろしければ!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
—――・『神々の審判ー選定された最強の「駒」は、五度目の「今世」、「神」を屠るー京亮ver』
「そろそろ、終わらせようか?神々の遊戯。会いたい人がいるんでね」
理不尽な運命を、圧倒的な力で覆す!
【無双×成り上がり×転生×最強×ゲーム】—―「普通」を演じることを辞めた俺の叛逆の先には!?
―――
・「一生を病室で終えた俺、呪いが解けて、天下獲る~貧村に捨てられたけど、"最強"に魔改造します~ 」
「俺だけが自由なんて意味ないよ。天下も自由な場所にならないとさ」
不自由だった前世を、自由を得た今世で破壊する!
【戦×無双×成り上がり×領地経営】 —―自由を得た俺の天下取りの果てには!?
⇧※本作です。これからも、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!




