09.玄武の試練! 相容れないもの
「なぜ、アセンションギアの代償を隠していたのですか? 貴方は知っていたんでしょう?」
セイヴァーの、自身の研究室で、霧島は三上を問い詰めていた。
「代償…君はそれを代償と捉えるか。でも、君なら見抜けると信じていたよ。」
三上は怪しい笑みを浮かべる。全く答えになっていない。
「それに、君は代償を知ってなお、飛翔くんに使わせているではないか。」
霧島はすぐに反発した。
「いや、私は貴方とは違います。聖也にはちゃんと伝えた上で、聖也自身が使うと決めたんです。」
三上の笑顔は崩れない。
「ほう? 飛翔くんなら使い続けると分かった上で伝えたのではないかね? 無理やり没収することもできたはずだ。
それをしないのはなぜか。君自身も分かっているだろう?」
霧島は言葉に詰まった。自分の溢れ出る好奇心を自覚していたのだ。
「私の兄弟子…ゼクスがなぜ、継裔会にいるのか。あの人には、別の目的があるはずだ。
あの人の目的を、ギアを作ったその理由を、使い続けた先になにがあるのかを、私は知らなければならない。」
霧島の顔は暗い。自分の好奇心のために聖也の正義心を利用していることに、後ろめたさを感じているようだった。
「なんだか、眠く…なってきた…」
肌を刺すような極寒の吹雪の中、天城遥斗は座り込んでいた。
あれから辺りを探索するために歩き続けたが、なにも収穫を得られなかったのだ。
ギアが使えれば、フェンリルの力で探索は一瞬だっただろう。
ギアがないとこうも無力なのか。自分が神獣の力に頼りすぎていたことに気づく。
そこに、1人の女性が現れた。
「あ、いたー。初めまして、遥斗くん。」
深い緑色のドレスに、三つ編み。継裔会の幹部、ミオラだ。
「ミ…オラ…? なんで…」
遥斗は自分が幻覚を見てるのではないかと思った。
「遥斗くんの後をつけてきたんだよ? せっかく1人になったんだから、遊ぼうと思って。
…まさか、こんな場所に来るとは思わなかったけどね。」
そう言って、ミオラは遥斗に手を差し出した。遥斗は困惑しながらも、その手を取る。温かい。
「私が温めてあげるよ。遥斗くんがこんな所で死んじゃったら、悲しいし。」
そう言うと、遥斗と繋いでいるミオラの手が光る。遥斗の体温が、どんどん上がっていき、遥斗は元気になっていった。
「まさか、敵に情けをかけてもらう日が来るとはな。」
遥斗はミオラの力に驚きつつ、手を離す。警戒しているようだ。
「えー? 私たちまだ会ったばっかりなのに、いきなり敵だなんて酷いなぁ。」
ミオラは本当に悲しそうな表情を見せた。遥斗は、そんなミオラに声をかける。
「とにかく、今はここから出ることが先決だ。一時休戦といこう。」
ギアの使えない遥斗にとって、今1番避けるべきはミオラとの戦いだ。
継裔会の幹部と、セイヴァーに協力する戦士。決して交わるはずのない2人が、手を組む時が来た。
一方、フェイトとルーサスは、上空で出されたスフィンクス怪人の問題に悩まされていた。
「姉妹が生み合い、殺し合う…? ゲームでもしてるのか?」
ルーサスは本気で考えている。
「姉妹と言うのを一旦置いときましょう…火と水なら、お互いに消し合う?」
フェイトはそう答えた。
「不正解だ!」
怪人がそう告げると、フェイトが落ちていった。まるで地面に引っ張られるかのようだ。フェイト、脱落。
「一条!! くっ、あいつの分まで、俺が正解しなくては…!」
ルーサスは必死に考える。だが、何も浮かばない。
フェイトは再び空へ飛ぼうとしたが、何かに阻まれる。自分の周りが、透明なバリアで塞がれて身動きが取れなくなっていた。
「仕方ない、霧島に聞くか…」
ルーサスは携帯を取り出し、霧島に電話をかける。だが、出なかった。
「こんな大事な時に出ないなんて、何をしてるんだ!」
ルーサスのピンチはまだまだ続く。
遥斗はミオラと共に、脱出する方法を模索していた。
「これは玄武の試練よ。だとすれば、脱出条件は…耐えて、本質を見抜くことかしら?」
ミオラは普段のほんわかとした感じから一転、真剣に考えていた。遥斗はちょっと意外だと驚く。
「継裔会、そこまで情報を掴んでいたんだな…この剣、エクリブリアムについても知っていそうだったし。」
遥斗は剣を取り出し、そう告げた。ミオラは、むっとした顔で遥斗の方を見る。
「ストーップ。こんな時に、詮索はだーめ。冷静なのは遥斗くんのいい所だけどさ。」
その言葉で、遥斗は思ったことがあった。
自分は一体いつから、冷静で、探りを入れるような人間になってしまったのか。
少し前までは、普通の兄として楽しく生きていたはずなのに。
「…そうだな、今は仲間だ。よーし、絶対、脱出するぞ!」
遥斗は手を突き上げ、笑った。楽しく生きる気持ちを、忘れないように。
「遥斗くん、いい笑顔するじゃん。」
ミオラは、どこか悲しげな、それでいて羨むような表情を見せた。
遥斗は、冷静で思考を巡らすことと、楽しく陽気に生きること。互いが互いを邪魔する、相容れない2つのことを受け入れることが大事だと感じた。
『うむ、合格だ。少々予想外だがな。』
遥斗の頭に声が響いた。その瞬間、景色がぼやけ、元の場所へと戻っていた。
『極限の状態で、己の心に気づく。耐え続けることで、自分の本質を見抜く。
さあ、我が力を貴様に与えよう。』
光り輝くコインが空からゆっくり降ってきた。遥斗はそれを掴む。
全体が黒く、大きな亀が描かれたコイン。玄武の試練をクリアした証だった。
「さーて、出れたことだし、私と遊びましょう? 遥斗くん。」
ミオラはヒュドラのコインを取り出した。
「お前のおかげで脱出できた。ありがとな、ミオラ。…だが、戦うと言うなら容赦しないぞ!」
遥斗はギアを取り出した。そしてある事を思い出す。
「あっ、ギア壊れてたんだった!! やっべ、えーっと…また今度ってできますか?」
遥斗は焦りつつ、そう言った。その様子からは、微塵の冷静さも感じない。
「もーう、慌ただしいなー。戦えないなら、用はないよ。その代わり、今度は全力で遊ぼうね。」
ミオラは帰っていった。遥斗とミオラの戦いは、またしてもお預けなようだ。
「ミオラ…悪い人には、見えなかったな。」
遥斗はそう感じつつも、ミオラとは逆の方に去っていく。2人の道が、決して交わらないことを示すように。
「えーっと…うーん、なんだ?」
こちらは、謎解きに苦戦するルーサス。そこに、ある女性が通りかかる。
「うわぁ! 化け物!?」
その女性…学校帰りの天城結愛は、空を見てびっくりした。
「危ないから逃げてください!」
フェイトは結愛にそう告げる。結愛は驚きつつもフェイトに聞く。
「これは…なにをしてるんですか? 撮影…?」
セイヴァーと継裔会の戦いにしては、やけに平和だった。困惑するのも無理はない。
「えーっと、謎解きです。2人の姉妹がいて、お互いが生み合い、お互いを殺し合っている。この姉妹はだれ? っていう…。」
フェイトは丁寧に結愛に返した。戦いだと伝えると、怖がらせてしまうかもしれない。
「え? それって昼と夜のことですか? 決して相容れないっていう有名なやつ。なんでこんな謎解きで、空に…?」
結愛はいとも簡単に謎を解くと、空でクイズをするシュールな光景を疑問に思う。
「ぐっ…正解だ…まさか、解かれてしまうとは。」
スフィンクス怪人は悔しがった。フェイトを囲っていたバリアが消える。
「今なら倒せる! いくぞ一条!」
ルーサスは体に力を込める。ペガサスの影が現れた。
フェイトも力を込めると、上空にフェニックスの影が。
ペガサスの影は怪人を後ろから蹴りつけた。上空で吹っ飛ばされる怪人。その方向には、フェニックスの影がいる。
怪人がフェニックスの影に触れると、燃え上がった。フェイトは地上から、怪人に手をかざす。
手をグッと握ると、怪人の周りの炎が爆発した。そして、1枚のコインを残し、怪人は消滅。
「え? …え?」
結愛は困惑している。
「よし、後はあいつを助けに行こう。」
フェイトとルーサスはコインを抜き取り、早足に遥斗の方へと向かおうとする。
そこに、遥斗がやってきた。
「おーい! 2人とも!! …って、結愛!?」
遥斗は戦場にいるはずのない結愛を見て、驚くのだった。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武
一条煌…フェニックス、レヴィアタン
飛翔聖也…ペガサス、グリフォン、キマイラ、スフィンクス




