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10.フン闘! 敵は誰じゃ!?

結愛ゆあ!? なんでここに?」


 玄武げんぶの試練を乗り越え、戦いの場に帰ってきた天城遥斗あまぎはると。その前には、最愛の妹にして唯一の家族、結愛がいた。


「学校帰りにスーパー寄ろうと思って。

 ほらお兄ちゃん、最近始めたお仕事で家にいない事も多いでしょ?」


 結愛はそう返す。侵攻を食い止めたあと、結愛は普通に学校に通っていた。


 遥斗は、自分が戦士であることは結愛には隠している。巻き込みたくないし、心配もかけたくない。

 だから、仕事を始めたと嘘をついた。これまでは両親の残した莫大な遺産で生活していた。


「お兄ちゃんこそなんでここにいるの? この人達は?」


 結愛は、遥斗に聞いた。遥斗はどう言い訳しようかと考える。その時、聖也せいやが口を挟んだ。


「君は天城くんの妹さんかな? 初めまして。セイヴァーの司令、飛翔聖也だ。天城くんにはいつも助けうぐっ!」


 聖也の言動に、遥斗は慌てて聖也の足を踏む。

 この空気の読めなさは聖也が神裔しんえいだからか、ただの聖也の性格ゆえか…


「セイヴァーって、あのセイヴァー?お兄ちゃん、そんなすごい人と知り合いだったの?」


 そこにこうが口を挟んだ。


「えーっと…あっ、ああそうだ。遥斗は僕たちセイヴァーに密着取材してるんだ。な、遥斗?」


 煌、ナイスファインプレー。遥斗はそこに乗っかる。


「そ、そうそう! いやーセイヴァーの皆さんめちゃめちゃかっこよくて、取材捗ります!」


 結愛は、無言で見つめている。


 シーン…


 沈黙の後、結愛の顔が明るくなる。そして口を開いた。


「えー! お兄ちゃん、そんなすごい仕事してたの?

 もー、言ってよー! 学校で自慢しよーっと!」


 安堵の表情を浮かべる遥斗と煌。なんとか誤魔化せたようだ。


「? いったいなにをうごぉ!?」


 聖也が口を開いたところで、すかさず煌が口を抑えた。あはは…と、煌は結愛を見て愛想笑い。


「じゃあ俺、まだ取材あるから。先帰っててな、結愛!」


 遥斗は結愛を帰そうとした。若干声が裏返っている。


「お兄ちゃんも、お兄ちゃんの知り合いも、慌ただしいね…。

 じゃあ、今日は私がご飯作るから。お仕事頑張ってね!」


 結愛は手を振って帰っていく。遥斗ははぁっとため息をつく。


「戦士として、嘘をつくのは良くないだろう。天城くん、一条。」


 聖也は2人にそう言った。煌は聖也に苦言を呈す。


「遥斗は妹さんに心配かけたくないんですよ。聖也司令、もう少し空気読んでください…」


 煌は呆れた表情をしていた。


「俺って、空気読めないのか…?」


 聖也はショックな表情を浮かべている。初めて気づいたようだ。

 3人は、とりあえずセイヴァーへと戻るのだった。




 継裔会けいえいかいの秘密基地。

 荘厳な祭壇のある部屋で、ゼクスはミオラを問い詰めていた。


「なぜリループを倒さなかったのですか? エクリブリアムや玄武コインを奪うチャンスだったでしょう?」


 ゼクスは憤りを見せていた。だが、ミオラは呑気に返す。


「だってー、遥斗くんと本気で戦いたかったんだもん。リループになれないんじゃ、戦っても楽しくないしー。

 …それに、私はあんたの計画なんてどーでもいいの。あのエクリなんとかが欲しかったら自分で取りに行けば?」


 ミオラはゼクスにそう告げた。ゼクスは顔に怪しい笑みを浮かべる。


「そうですね…既にセイヴァー内部には毒を仕込んであります。後は効かせるのみ…。」


 そう言うと、ゼクスはヴァルガの方を向く。


「明日、久しぶりに我が同胞に街を破壊させましょう。あの司令をおびき寄せるのです。」


 ヴァルガは嬉しそうに笑った。


「おうよ! 久しぶりにひと暴れしてもらうぜ!

 リループはどうする? 試練の邪魔は?」


「それは…もういいです。リループにはあえて四聖獣の試練を突破させ、エクリブリアムを覚醒させましょう。その後で、奪えばいい。」


 ゼクスは、笑っている。ここ最近の継裔会の動きは、全てゼクスの作戦だった。




「ワーオ、派手に壊れたね…」


 セイヴァー本部 司令室。

 遥斗は壊れたディバイドギアを、霧島に渡した。


「どうやら私の装備では、四聖獣しせいじゅうの力を扱いきれなかったようだね。

 やはり、人の手で作ったシステムには限界がある…。」


 前の戦いで、朱雀のコインをセットした瞬間、ディバイドギアは急に傾き、壊れた。それほど四聖獣の力が凄まじいことを示していた。


「おそらく、君が持つあの剣なら四聖獣の力を扱えるはずだ。遥斗くんは引き続き試練に挑んでくれ。

 ディバイドギアの修復には時間がかかるから、君はリループにはなれない。気をつけてくれたまえよ。」


 遥斗は、エクリブリアムを取り出した。ちょうど4箇所窪みがあるため、四聖獣のコインが全てはめられるはず。

 全てのコインを集めた時、何が起こるのだろうか…


「とりあえず、今日はゆっくり休みたまえ。翌日になったら、遥斗くんと煌くんは試練へ。よろしく頼んだよ?」


「「はい!」」


 2人は勢いよく返事をした。


「霧島、俺は行かなくていいのか?」


 聖也は霧島に尋ねる。霧島は真面目な顔で聖也の方を向く。


「君はステイだ。怪人が現れた時以外、ギアを使ってはいけない。試練に向かわせたら、無闇に使うだろう?」


 その言葉に、遥斗は引っかかった。ギアの使用を渋る理由でもあるのだろうか…?そう感じたが、わざわざ聞かなかった。




 翌日。遥斗は煌と合流し、エクリブリアムに玄武のコインをセットした。光の方向へ、2人は進む。





 一方、街では怪人が暴れていた。黄金の輝きと、甲虫のような羽を持つ…スカラベ怪人だ。


「現れたな、継裔会!」


 聖也はそこに駆けつけた。アセンションギアを取り出し、ペガサスのコインを投げ入れる。

 ガラガラという鐘の音と共に、黄色いペガサスを纏う戦士、ルーサスが降臨した。


「いひっ、早速釣れたでやんす!」


 怪人が指パッチンをすると、1人だった怪人が、2人、4人、8人…と増えてルーサスを囲む。


「この俺に、それは通用しない!」


 ルーサスはペガサスの翼を羽ばたかせ、飛び上がる。


「おおっと、それは困るでやんすね。」


 スカラベ怪人たちはルーサスに向かって一斉に茶色い何かを投げつける。

 それはルーサスの羽にまとわりつき、ルーサスは落ちていった。


「くっ、なんだこれは!」


「戸惑ってる暇はないでやんすよ!」


 スカラベ怪人は茶色いものをひとつに纏める。巨大な球体となったそれを、4人がかりでルーサスの方に転がす。


「待て、本当に待て!」


 ルーサスは咄嗟にアセンションギアにコインを投げ入れる。以前手に入れた、キマイラのコインだ。

 キマイラの幻影が現れ、ルーサスの右手にまとわりついた。ライオンの顔がそのまま拳となり、そこには2本の角が生えている。蛇が前へ垂れ下がっていた。


「食らってたまるか!」


 ルーサスが右手を振るう。右手の蛇を鞭のように扱い、巨大な球体を粉砕した。

 その後右手を怪人たちの方へ向ける。


 ぼおおお、とライオンの口が炎を吐いた。炎に命中した怪人は、消滅。だが、何人消そうと無数に湧いてくる。


「これでは埒が明かないな…」


 押し寄せる大群に、ルーサスは頭を悩ませるのだった。




「ここが、試練の場…」


 遥斗と煌は光の示す場所へ到着していた。静寂に包まれた、広大な竹林だ。

 その時、煌に霧島からの着信があった。


『聖也が苦戦している。向かってくれないか?』


 そのメッセージを見た煌は、すぐに遥斗に伝える。


「悪い遥斗、聖也司令が怪人と戦ってるみたいだから援護しに行ってくる。試練、任せたぞ。」


 煌は早足で駆けていった。遥斗は1人、残される。


「仕方ない…さて、次は一体どんな試練だ?」


 遥斗の周りの景色がぼやけた。もう2度も味わっている試練の合図だ。

 視界が元に戻る。だが、場所は変わっていなかった。


 ヒュン。


 突然、遥斗の背後から何かが投げつけられる。


 カキーン。


 遥斗は咄嗟に後ろを向き、エクリブリアムでそれを弾き返した。


 グサッ。


 竹に刺さったそれは、手裏剣だった。


「手裏剣…? どうやら、今度は忍者相手ってわけか!」


 遥斗はエクリブリアムを両手で握りしめ、構えるのだった。





【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武


一条煌…フェニックス、レヴィアタン


飛翔聖也…ペガサス、グリフォン、キマイラ、スフィンクス

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