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11.進め! 青龍の試練!

【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍


一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス


飛翔聖也…ペガサス、グリフォン、キマイラ、スカラベ

『試練の時だ。敵に、打ち勝て。』


 天城遥斗あまぎはるとの頭の中に声が響いた。竹林の中での試練は、敵を倒すこと。シンプルだ。


 ヒュン。


 遥斗に手裏剣が投げつけられる。遥斗は、それを咄嗟に避ける。


「忍者…一体どこにいるんだ?」


 試練が始まってから、ずっと手裏剣を投げつけられる。投げてる相手が、今回の敵だろう。遥斗は忍者と呼ぶことにした。


 遥斗は辺りを見回す。一面に竹が広がるが、他にはなにも見えない。

 ギアのない今の自分は、真っ向から戦っても負けるだけ。相手を見つけ、隙をつこう。

 遥斗は、そう考えて慎重に歩き出すのだった。




 一方、街ではルーサスがスカラベ怪人と戦っていた。スカラベ怪人が投げてくる茶色い物体を避けつつ、キマイラの力で出す炎で応戦。


 だが、一体倒してもすぐ増えるスカラベ怪人相手に苦戦していた。


聖也せいやさん! お待たせしました!」


 そこに、一条煌いちじょうこうが走ってきた。走りながらディバイドギアを手に取ると、フェニックスのコインをセットする。戦士フェイトとなり、炎の翼で低空を加速する。


 怪人に突っ込もうとした時、巨大な何かが突然視界に入った。慌ててフェイトは上へと避ける。


「お前の相手はこの俺だ!」


 そう言ったのは、ベヒモスの力を使う怪人、ヴァルガ。巨大なものの正体は、彼が持つ尾だったようだ。


「受けて立つ!」


 フェイトは炎を噴射する。ヴァルガはそれを仁王立ちで受け止めた。


「ふっ、この程度か?」


 ヴァルガは笑う。


「一条、これを使え!」


 そんなフェイトを見て、ルーサスはあるコインを投げる。空中で、フェイトはキャッチした。


「これは…や、やってみます!」


 受け取ったコインに描かれていたのは、スフィンクスだった。フェイトはギアのコインを抜き、スフィンクスコインをセットする。

 スフィンクスの影をオーラのように纏った。


「これ…どうやって戦えばいいんだ…?」


 フェイトは困惑する。だが、そんなフェイトの頭に告げるものがあった。

 重力操作で地面に突き落とされる、というものだ。


「ふんっ、いい加減降りてこいよ!」


 ヴァルガが地面を叩く。すると、フェイトに重力がのしかかった。フェイトは地面に突き落とされる。


「ぐはっ…これって」


 フェイトが感じたことが、そのまま現実となった。スフィンクスの能力は、直感が冴え渡るらしい。


「なるほど…だが、ヴァルガとの相性はよくないな。」


 ヴァルガは、まさに力の権化だった。仮に攻撃手段が分かっても、ダメージを与えられない。

 フェイトは、自分では力不足だと感じた。遥斗が見た未来のように、自分の力を過信はしない。


「聖也さん、そっちは俺が! こっちを任せます!」


「分かった。頼んだぞ、一条!」


 フェイトは飛び立つ。ルーサスも飛び立ち、空中で2人が入れ替わった。


「相手が変わっても、僕ちゃんには勝てないでやんすよ!」


 大量のスカラベ怪人が茶色い物体を投げつけてくる。だがそれを、フェイトは直感で全て躱す。右、左、上…投げつけられる位置が、手に取るように分かる。


 フェイトは空中を駆け巡ると、怪人たちを上手く誘導して1箇所にまとめる。


「今だ、まとめて消し炭にしてやる!」


 フェイトはギアのコインをフェニックスに戻すと、体に力を込めた。フェニックスの影が、怪人へと突っ込む。

 炎の中で、怪人の分身は全て消えた。


「なに、僕ちゃんの分身が!!」


 フェイトは残った1人…本体に手をかざす。そして手をグッと握ると、怪人にまとわりついていた炎が爆発した。


 炎が鎮まった時、その場に残ったのは、鼻を突き刺す異臭とコインだけだった。


 その頃、ルーサスはヴァルガと交戦中。


「天の裁きを受けよ。」


 空中で羽を広げると、ヴァルガに雷が命中する。


「くっ…この程度か? マッサージにもならねぇな!」


 ヴァルガが地面を叩くと、ルーサスに一気に重さがのしかかる。落ちていくルーサスは、ギアにコインを追加した。グリフォンだ。


 風を操り、自分の真下の空気を圧縮すると、フワッと降り立った。高気圧の壁をクッションにしたのだ。


「なら、もっと強くすればいいんだな。」


 ルーサスはペガサスによる雷、キマイラによる炎、グリフォンによる風を全て放つ。

 黄色い閃光、真っ赤な炎、緑翠の風刃。それらが合わさり、ヴァルガに命中した。


「ぐっ…ぐはっ…」


 さすがのヴァルガもこれは食らったようだ。


「3体の神獣の組み合わせ…ふっ。扱う力がでかければその分、代償もでかいだろう。」


 ヴァルガはうっすら笑う。この言葉を残して、黒いモヤに包まれて消えた。


「代償、か…」


 3枚のコインを抜き取った聖也は、胸ポケットから写真を取り出した。ドクター霧島と一条煌が写ってるその写真は、真ん中だけが不自然に空いている。


「聖也司令、やりましたね!」


 煌が聖也の元に駆けてくる。聖也は写真を隠すようにしまった。


「ああ。…ところで、あのコインは拾わないのか?」


 聖也はスカラベ怪人が落としたコインを見つめる。


「えーっと…ちょっと臭くて…。聖也司令、お願いします!」


「はぁ。全く、仕方の無いやつだ…」


 聖也は嫌そうな顔をするのだった。




 ヒュン。ジャキーン。グサッ。


 遥斗は、竹林の中を慎重に歩きながら、飛んでくる手裏剣やクナイに対処する。道中、落とし穴やまきびしなどもあったが、全て回避している。


 試練開始から、5時間が経過していた。だが、相手の姿は一向に見えない。見えない相手とどう戦えばいいのだろうか。


「俺って、慎重すぎるよな…」


 ふと、出た言葉だった。試練の中で、ずっと受け身に防御するだけの自分を見て、そう感じたのだ。

 一応辺りを探すけれど、急いだりはせず、罠にはすぐに気づく慎重さ。なにがここまで自分を慎重にさせてるんだろうか、単純に疑問に思う。


「やっぱり、アレかな…」


 遥斗には1つ心当たりがあった。自分は1度、最悪な未来を体験している。

 だから、今は不自然なほど慎重に生きているのではないか。


 煌に未来での結末を伝えなかったのもそう。アセンションギアの使用を渋る理由を霧島に聞かなかったのもそう。そして、結愛ゆあに戦士であることを伝えられていないのもそう。


 取り返しのつかないことを起こしたくなかった。怖かったんだ。


 1歩踏み出すことが、今の遥斗には出来ていない。煌には、自分を犠牲にした戦闘ができる。聖也は、何かしらの危険を背負って戦える。


 でも、自分はどうだろう。1歩も踏み出さず、勝てる時しか動かない。


 今だって、ディバイドギアなしで正面から戦う気はなく、相手の裏をかこうとしている。

 他の戦士たちが持つ勇気を、自分は持っていない。だから、持つ必要がある。すぐでなくても、今から動き出せば、きっといつかは。


「正面から相手してやるよ! とっとと出てこい!」


 遥斗は、2枚のコインがセットされたエクリブリアムを振るう。すると、剣圧で辺りの竹が全て切り裂かれた。


 これで竹は消え去った。もはや隠れる場所はない。だが、辺りを見ても誰もいない。


『合格だ。己の中の敵…恐怖によくぞ打ち勝った。貴様に、力を与えん。』


 景色がぼやけると、遥斗は竹林の中にいた。さっき切り裂いたはずなのに、元に戻っている。


 そこに、コインが降ってくる。青色に光るそれは、龍が描かれている。青龍せいりゅうのコインだ。


「勇気、か…俺も、前へと進まなきゃな。」


 まだ、結愛に自分が戦士であることは打ち明けられない。でも、少しずつ勇気が出てきたら、いつかは言える日がくるはずだ。

 遥斗はコインを握りしめ、試練の場を後にするのだった。




 セイヴァー本部 霧島の研究室。


 ドクター霧島は、机に大量の写真を並べ、パソコンのキーボードを激しく叩いている。


「どんどん、スピードが早くなってる。このままじゃ、本当に取り返しのつかない事になってしまう…」


 いつもの口調も、サングラスすらも忘れ、霧島は焦った表情でパソコンと向き合う。

 ある画面を開いた時、霧島の動きは固まった。


「……そんなわけ、そんなわけがあるはずない!」


 霧島の開いた画面…セイヴァーの名簿の1番上には、こう書かれている。


『司令官:不在』





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