12.最後の試練! 記憶と正義の狭間で
セイヴァー本部 エントランス。
天城遥斗は、いつものように司令室に向かうため、そこを通ろうとする。
だが、いつもと違って騒がしいことに気づいた。
「離せ! 俺は飛翔だ! セイヴァーの司令の!」
遥斗がそこを見ると、警備員に捕まっている飛翔聖也がいた。
「聖也さん? …これは、一体?」
遥斗は聖也に声をかける。無理やり先へ行こうと暴れていた聖也は、落ち着いた。
「…天城くんか。なんでもないさ、気にしないでくれ。」
聖也は警備員から1歩引き、そう言った。
そこに、慌てた様子のドクター霧島がやってくる。
「ヘイ、聖也、遥斗くん。緊急事態だ。直ちに司令室へ来てくれ。煌くんはもう中にいる。」
遥斗と聖也は、霧島の案内で司令室へ通されるのだった。
「まずは、これを見て欲しい。」
そう言うと、霧島は沢山の写真を机に置いた。どれもセイヴァーの隊員が写っている。
その写真には所々に不自然な空間があった。
「これは…?」
遥斗は困惑した様子だ。聖也は、気まずそうに俯いている。
煌はあることに気づいた。
「この写真…僕が部隊長に選ばれた時に、霧島さんと聖也司令と撮ったやつだ。
なんで、司令が消えてるんですか…?」
そう、これらの写真からは全て、聖也が消えていたのだ。
「これは、アセンションギアを使った代償だ。使用者は、人々の記憶から消えていく。
思い出から消えているからか、写真からも消えるみたいだ。」
遥斗と煌は驚き、聖也を見る。聖也は、顔を上げた。
「もちろん、俺はこのことを知っていた。知ってて使っているんだ。だから、何も問題は無い。」
聖也は無理やり笑おうとした。そこに霧島が割って入る。
「ああ。私が彼にギアを渡したあと、このギアについて調べていてね…。
これは、人類の頭脳では明らかに作れないものだ。神獣の力を重ねがけするなんて。
そしてその結果、聖也は記憶から消えていっている。なぜかは分からないけれどね。」
それを聞いたみんなは、暗い表情をしている。そこに、霧島はさらに続ける。
「そして、消えるのは記憶だけじゃないみたいだ。聖也がこの世界に存在した証が、どんどん無くなっている。
もはや聖也は、セイヴァーの司令という席すら失ってしまったようだ。」
霧島は、そう言った。聖也が警備員に捕まっていたのは、そういうことだった。
聖也は、驚いた。
「記憶だけじゃなく、存在した証すらも消えていく、だと…?」
これについては初耳なようだ。アセンションギアを取り出し、眺めている。今後も使うかどうか迷っているようだ。
「正直、記憶も、存在した証すらも消えたらどうなるか分からない。さらなるリスクがあるかもだし、ただ誰にも知られずに生きることになるのかもしれない。
幸い、まだここに居る私たちは聖也のことを覚えている。引き返すなら今だよ、聖也。」
霧島は一切の英語を使わずに話すが、誰も気にすらかけられない。煌が口を挟んだ。
「聖也司令、ギアをこれ以上使っちゃだめです! 僕は、司令のことを忘れたくありせん。」
煌の目は、真剣だ。遥斗もそこに続く。
「そうですよ聖也さん。あなたは、人間と神裔の架け橋になるべき人です。これ以上、自分を犠牲にしないでください!」
聖也は、2人の言葉を聞き、頷く。その後顔を上げた。顔には笑顔が浮かんでいる。
「大丈夫だ。俺は戦士として戦うよ。それに、今の天城くんはリループになれない。
部下を1人で戦わせるわけにはいかないさ。」
聖也の覚悟は決まっていたのだ。例えこの身がどうなろうと、戦い抜くと。
煌は、納得できない様子だった。
「僕、1人で戦います! 聖也さんに無理させないためにも、聖也さんがギアを使う前に、敵を全員倒します。」
遥斗も続ける。
「最後の四聖獣の試練をクリアしたら、もう戦力は十分なはずです。
約束してください、俺が試練をクリアしたら、ギアを手放すと。」
聖也は、必死な2人を見て笑う。
「良い仲間に恵まれたな…。分かった、俺が戦士として戦うのは、最終手段にするよ。」
遥斗と煌はそれを聞き、安堵した。同時にやる気が芽生えてくる。
「分かりました。俺はすぐに試練を突破します。
煌、街の防衛は任せましたよ。」
煌は、頷く。
「ああ、遥斗。そっちも頑張れよ!」
遥斗は、エクリブリアムの右側に青龍コインをセットする。司令室を出て、光が示す方向へ走り出した。
司令室は、沈黙に包まれる。そして聖也が口を開いた。
「そんなに暗い顔するな。ただで世界を救えるとは思っていない。それに、お前らがいればそれで十分さ。」
霧島は、聖也の方を向くと、頭を下げた。
「すまない、聖也。全てはこのギアをここへ持ってきた私のせいだ。」
そんな霧島を見て、聖也は返す。
「頭を上げろ、霧島。お前がこれを持ってきてくれたおかげで、俺は戦士として戦えているんだ。むしろ感謝しているよ。
…それに、疑うべきは君にこれを渡した三上さんだ。」
それを聞き、煌が口を挟んだ。
「三上さん…セイヴァー創設者、三上蒼一。あの人が、なにか企んでいるのか…?」
「私の師匠なだけあって、一筋縄ではいかない男だ。なにか裏があるかもしれないから、警戒するに越したことはない。」
3人の中で、三上が立ち上げたセイヴァーという組織そのものに、多少の疑念を抱き始めるのだった。
一方、遥斗は試練の場所へと走っていた。そこは、小さな神社だった。
遥斗がそこへ辿り着くと、声がした。
『来たか、天城遥斗。我が試練を、受ける準備はいいだろうな。』
最後の四聖獣…白虎は、遥斗が来ることを知っていたようだ。遥斗は、その声に返す。
「ああ。速攻でクリアしなきゃならない理由もできたからな。いつでも掛かってこい!」
『よかろう。だが、一筋縄では行かぬぞ。』
そう言うと、遥斗の周りの景色がぼやける。気づくと、遥斗は自分の家にいた。
『はっ! …はぁ、夢か。今何時だ…? ……!? やべ、朝飯つくらないと!』
遥斗は、自分が起きるところを見ていた。どうやら以前の出来事を俯瞰して見ているらしい。
そのまま起きたかつての遥斗は、階段を降りていく。
今の遥斗がそれを見ていることには気づいていない。
そのまま結愛が学校に行った。今の遥斗は、結愛を追いかけることに。
朝から活気のある商店街。カレーの匂いが漂う交差点。この後、悲劇に見舞われるとは到底思えない。
そこを抜けた先は、オフィス街。さっきまでの街並みとは打って変わって、スーツの人達で賑わっている。
そして、あの時が来る。正午の少し前だ。
ゼクス、ヴァルガ、それからレヴィアタン怪人。3人が街へ現れた。
「やめろ!」
遥斗は咄嗟にエクリブリアムを手に取り、向ける。だが、3人はそれに気づかない。
「…干渉できない、のか?」
遥斗はただ、これから起こる悲劇を見ることしか出来ないようだ。
ゼクス、ヴァルガは怪人となり、3人の怪人が街を破壊する。
ヴァルガが手を振り払うと、一面にグチョグチョとした異形が現れた。
平和なオフィス街は、怪人と異形が暴れるディストピアと化す。
そこに、1人の青年がやって来た。
「破壊をやめろ! 継裔会!」
そう叫ぶ男は、一条煌。彼はディバイドギアを取り出すと、フェニックスコインをセットする。戦士フェイトとなった。
だが、知っての通り結果は惨敗。
ゼクスやヴァルガは帰り、周りの異形たちも消える。レヴィアタン怪人と、倒れ込んだフェイトのみが残った。
レヴィアタン怪人が、フェイトに鎌を振るう。
そこで、時が止まった。
『天城遥斗。貴様は、なぜ戦う?』
白虎は遥斗にそう聞いた。遥斗はすぐに言葉を返す。
「決まってるだろ。もう、こんな悲劇を起こさないためだ。」
あの頃は復讐のために戦っていた。だが、今は違う。
『ほう。その正義は、どこから来る?』
遥斗は、言葉に詰まった。今の遥斗は、ただ最悪の未来を見ただけの一般人だ。
未来を変える使命はあっても、それは受動的なものだった。
『かつての貴様は、復讐…自分のために戦っていた。
今の貴様は、どうなんだ?』
白虎からの問いに、逡巡する遥斗。自分は、何のために戦うのか…?
ただ未来を知っていて、力があるからなのか?
答えが出せないまま、遥斗は煌とレヴィアタン怪人を見つめるのだった。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍
一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス
飛翔聖也…ペガサス、グリフォン、キマイラ、スカラベ




