07.いざ! 朱雀の試練へ!
「我が光で、悪を正す。戦士ルーサス、ここに誕生だ。」
黄色いペガサスのオーラを纏った飛翔聖也、戦士ルーサスがそう告げる。
ルーサスは遥斗と煌に、先に行けと目で合図した。
「行きましょう、一条さん。」
遥斗は山の方へ行く。煌はポケットからコインを取り出した。
「ここは任せます、聖也司令。よかったらこれを!」
煌はそのコインをルーサスへ投げる。グリフォンの描かれたそのコインは、以前の戦いの戦利品だ。ルーサスはそれをバシッと受け取る。
「助かる。こいつは責任を持って俺が倒そう。」
煌は頷き、遥斗の後をついていった。
ルーサスは、1歩、1歩と踏み出す。まるで階段を上がるかのように、空へと昇っていく。
キマイラ怪人は、ゆっくり歩くルーサスへ炎を吐いた。炎はルーサスに直撃。だが、無傷だ。
ルーサスの纏うペガサスの羽が身体を包み、ガードしていた。
「天の裁きを受けよ。」
ルーサスは羽を大きく広げ手を上へ。すると、晴れ渡る空から、雷撃が怪人へと直撃した。
怪人が大きく怯む。雷撃は、雨のように降り注ぐ。怪人はそれを躱し続ける。
「羽を広げてる今なら、防御はできないだろう?」
怪人は尾の蛇を素早くルーサスへと向かわせる。
「ああ。だが、甘い。」
ルーサスはもう1枚のコインを取り出し、右上に浮くアセンションギアへと投入する。チャリン、という音と共にグリフォンの影が現れた。
紐を引くと、ガラガラという音とともにグリフォンの羽のみがルーサスの背中へつく。その羽がルーサスを攻撃から守った。
今、ルーサスは黄色いペガサスのオーラを纏いつつも、新たに黒いグリフォンの羽を生やしている。
「2体の神獣の同時使用…俺が神裔だから成せる業、だな。」
グリフォンの羽を羽ばたかせる。すると突風が吹き、竜巻となった。
雷に竜巻。雲ひとつない晴天とは思えない、嵐だ。嵐が怪人を飲み込んだ。怪人はその強靭な肉体で耐え抜こうとする。
「すぐ楽にしてやる。」
ルーサスが体に力を込める。ペガサスの影が、怪人へ向かう。怪人を蹴り飛ばした。
宙に浮いた怪人は、最早耐えることなど出来ない。嵐に飲まれ空へ浮かび上がる。その空には、ルーサスがいる。
ペガサスとグリフォン。4枚の翼を広げたルーサスは、怪人へ蹴りを放つ。怪人は、呆気なく消滅した。コインのみを残して。
「アセンションギア…かなりの代物だな。」
箱から2枚のコインを取り出すと、ルーサスのオーラが消えた。
「後は…あいつらが上手くやれることを祈る。」
聖也は怪人から落ちたコインを拾い上げ、山に背を向けるのだった。
「本当に、この山に朱雀がいるのか?」
煌は山を登りながら遥斗へ言う。
「…可能性は、高いと思います。最近動きが無かったことを考えると、継裔会も朱雀を狙ってるはずです。
だから、こんな所に怪人がいたということは、少なくとも手がかりくらいはあるはず。」
「なるほど…いつだって冷静だな、天城。さすが、未来を見ただけのことはある。」
「俺はそんなにすごくありませんよ。…でも、今は前とは違って、みんな生きてる。
だから俺も落ち着いていられるんです。」
話しながら登り、ようやく山の頂上へと着いた。
そこには1本の剣が刺さっており、なんの絵柄も描かれていないコインが落ちている。
「これが…手がかり?」
煌が剣の柄を掴み、抜こうとする。だが、剣は微動だにしない。続いて遥斗が抜こうとするが、動かない。
「まるで勇者の聖剣ですね…」
今度は遥斗と煌、2人で柄を掴んで引っ張る。すると、剣は驚くほど簡単に引き抜けた。引き抜いた剣が赤く光る。
『試練を受けよ。汝らにはその資格がある。』
2人の頭の中に声が響く。その瞬間、2人の周囲が歪み、気づくと別の場所にいた。
山の上にいたはずが、炎に囲まれた闘技場のような場所に変わっている。
『戦え。勝ち残りし者に、我が力を与えん。』
遥斗は辺りを見回すと、煌へ告げる。
「どうやら、俺たちのどちらかしか認める気はないようです。」
「悪趣味な試練だな…さて、どうする。」
2人は向き合い、見つめ合った。戦うしかない、そう直感が告げていた。
「僕たちが戦うことは、もはや正義ではない。戦い以外の道を探そう。」
落ち着いて、周囲を見渡す煌。だが、そこに非情な言葉が響く。
『汝らに戦い以外の選択肢などない。さあ、戦え…』
「…戦いましょう、一条さん。俺たちが戦えば、もしかしたら何かが起こるのかもしれません。」
遥斗はギアを取り出す。殺し合いをする気はない。だが、戦ってみる価値はあるのかもしれない。
「分かった。やるからには、全力で来い。」
煌もギアを取り出した。2人はそれぞれコインをはめ、神獣のオーラを身に纏う。
フェニックスとフェンリルは、再びぶつかり合うこととなった。
リループはグッと踏み込み、フェイトの背後へ。そのまま蹴りを放とうとした時、フェイトが飛び立った。
咄嗟にリループはケルベロスへとコインを変える。3頭の力を合わせたビームを放った。
だが、それをフェイトは炎であっさりと相殺する。近距離じゃないと威力を発揮しないようだ。
リループは犬を2匹分裂させる。1匹がフェイトへと飛びかかった。フェイトがその犬を払おうとしたとき、リループが空中へワープ。
そのままの勢いでフェイトの足を掴むと、すぐに地面にいるもう1匹へとフェイトごとワープした。
フェイトを一瞬で地面へと連れ戻したのだ。降りたフェイトは、ギアのコインをレヴィアタンへと変える。
高威力の水流でリループを押し出し、距離をとった。リループはコインをフェンリルに戻し、水の合間を縫って高速でフェイトに接近する。
フェイトへ放った拳は、ガッチリ掴まれた。
「教えてくれ。お前が見た未来で、僕がどうなったのか…恐らく、死んだんじゃないか?」
「それは…すみません。話せません。」
リループはフェイトの手を振り払い、距離を取った。
「お前は妙に僕に遠慮しているな。でも、僕を舐めてもらっちゃ困る。どんな未来でも受け入れるつもりだ。だから僕を信じてくれ。」
「一条さんを、信じる…?」
遥斗にはない発想だった。以前見た未来では、激突することとなった2人。
煌が遥斗を恨み、怪人となってしまった未来。
その出来事を気にするがあまり、遥斗は煌に気を使っていた。無意識のうちに、煌の心は弱いと決めつけていたのだ。
「信じられないか。なら、僕がお前に勝って信じさせる。フェニックスの戦士として、僕は決して屈しない!」
フェイトはギアのコインをフェニックスへと変えた。そして体に力を込める。燃えたぎるフェニックスの影が、フェイトの前へと出現した。
そして、その影がリループへと向かう。リループは、この技を以前見ていた。
フェイトがミオラに対して使い、失敗した技だ。ぶつかる直前に、消えるだろう。
「これが僕の、強さだ!」
フェニックスの影は、消えるどころか炎を増してリループへとぶつかった。リループの全身が燃えたぎる。
そして、フェンリルのオーラがかき消された。フェイトは咄嗟にコインをレヴィアタンに変え、水で炎を消す。
「これが…一条さんの強さ。」
遥斗は膝をついたが、大した傷は負ってなかった。炎が消されたため、ダメージはほとんどない。
だが、芯に宿る強さを、確かに感じた。フェイトはコインを抜き取り、神獣のオーラを消す。
「煌でいい。俺を、信じてくれるか?」
煌が手を差し出す。その手を、遥斗が掴んだ。
「はい、煌。俺はあなたを信じます。」
その時、声が鳴った。
『うむ。信じる心、とくと見た。汝らの力になってやろう。』
景色が歪み、気づくと先程の山の上にいた。地面には、抜き取った剣が落ちている。
その横にあった無地のコインが光り輝いた。光が収まると、コイン自体が赤くなっていた。
そこには、眩く輝く四聖獣、朱雀が描かれている。
「信じる心…だから、2人での試練。」
2人は目を見合わせ、笑う。
「やったな遥斗! 試練クリアだ!」
煌は遥斗と呼び、コインを手に取る。遥斗は剣を手に取った。
「帰りましょう、煌。霧島さん、きっとハイテンションで喜びますよ。」
「ワンダホー、エクセレント、ファンタスティック!どんな英語を言うか、当ててみるか。」
2人は仲良く話しながら、山を降りるのだった。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス
一条煌…フェニックス、レヴィアタン、朱雀
飛翔聖也…ペガサス、グリフォン、キマイラ




