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06.新たな戦士! 降臨ルーサス!

 セイヴァー本部 司令室。

 モニターと絵画が並ぶこの部屋に、天城遥斗あまぎはるとは呼ばれていた。侵攻の日から1週間が経過していた。


「君が天城くんだね? 俺はセイヴァーの司令官、飛翔聖也ひしょうせいやだ。よろしく。」


 聖也はにっこり笑い、遥斗に握手を求める。

 遥斗は聖也の名字を初めて知ったが、今更呼び方を改めなくてもいいかなと思いつつ、その手を握る。


「よろしくお願いします。聖也さんは怪我をしていると聞いています。大丈夫なんですか?」


 聖也は少し驚いた。


「なぜ君がそのことを…まさか、未来で知ったのか?

 試作中のディバイドギアを起動して、体に負荷がかかってしまったようでね…今はもう大丈夫だ。安心してくれていい。」


「それはよかったです。本日はなぜ俺を呼んだんですか?霧島さんも一条さんも居ないけれど…」


 聖也の顔が真剣になった。どうやら大事な話なようだ。


「君は神裔しんえいに伝わる伝説の戦士、リループと同じフェンリルの力を使う戦士だ。

 何か知っているのではないかと思ってね。」


「俺は何も知りません。このコインは父ちゃんから貰った形見なんです。

 リループの伝説ってどんなものなんですか?」


「分かった。リループの名を持つ君は知っておくべきだろう。

 …今から大体30年前、1度この世界に神が降臨しかけたことがあった。ある者の策略で神が地上に降ろされようとしたのだ。


 だが、神の降臨は誰も望まなかった。神裔と人間が共存し、もはや平和な世界に神は不要だったんだ。


 そして、フェンリルの力を借りて神を神界へ追い返した者が現れた。」


「それが…リループ。」


「そうだ。現在生きているかは分からないが、この30年間はこの話が語られている。

 俺はもうすぐ27になるが、幼少期からこの話を聞いて育ってきたんだ。

 だからもし、何か知ってるなら教えて欲しい。君のお父さんはリループだったのではないか?」


「…ごめんなさい、本当に心当たりがないんです。

 でも、俺の父ちゃんは神裔だったかもしれないと思っています。俺はその血を半分継いでるから、戦士としての力があるのかも。」


 遥斗は煌とのことを思い出しながらそう答えた。煌とミオラの戦いで、煌が召喚したフェニックスの影はすぐに消えた。

 だが、遥斗はこれまでフェンリル、レヴィアタン、ケルベロスの影を召喚して扱えている。これは血筋の差なのかもしれない。


「なるほどな。君のお父さんは伝説の戦士であった可能性があるとだけ思っておく。話してくれてありがとう。」


「いえいえ、こちらこそリループのことを教えてくれてありがとうございます。」


 コンコン、ガチャ。


 司令室の扉がノックされた後、開いた。そしてドクター霧島が入ってきた。


「ヘイ、お話中のところ申し訳ないね。遥斗くんに1つクエスチョンがあるんだ。」


「こんにちは、霧島さん。どうしましたか?」


 霧島は司令室の机まで行き、あるアイテムを机に置いた。


「これは新たな戦士になるためのシステム、アセンションギアだ。

 遥斗くん、君が見た未来にこのアイテムはあったのかな?」


 博士が置いたアイテムは、小さな賽銭箱のようなものの横に、鐘と紐が付いている。遥斗にとっても見慣れないものだった。


「いえ、見た事ありません。」


「オーマイ、ならこれは、未知のものというわけか。」


「こんなシステムまで開発していたのか? 霧島。」


「ノーノー。これは先生からの提供でね。セイヴァーの装備として利用してほしいとのことだ。」


「得体のしれないアイテムか…分かった、これは俺が使って戦う。

 元々俺は戦士フェイトとして戦うつもりだったからな。それでいいか?」


「オーライト、このシステムにどんな危険があるかは分からないから、私も調べてみるよ。」


 霧島は聖也にペガサスのコインを渡した。

 遥斗はこのコインに見覚えを感じたが、これまでの戦いで見たことはないはず。気のせいだったようだ。


「三上さんの提供したシステムなら、俺も安心して使える。

 これからは俺も戦士として、共に戦うさ。」


「センキューだよ、聖也。これでまた継裔会けいえいかいへ対抗できる。対抗といえば…遥斗くん、継裔会への対抗手段がもう1つあるよ。」


 遥斗は対抗手段…? と聞き返す。そんなこと、聞いたことがなかった。


「人間と神裔の話は知っているね?神獣は基本的にゴズコインに入っているが、中にはこの世界に実体として存在するものがいる。

 そして、人間や神裔関係なく、自身が課した試練を突破したものだけを認めるものがいるんだ。」


四聖獣しせいじゅうだな。だが、彼らは伝説の存在だ。そう簡単に会えるかも、試練を突破できるかも分からないぞ。」


 聖也は知っているようだった。神裔なだけあって、神獣の知識は深い。


「イグザクトリー。でも、四聖獣の足取りがやっと掴めたよ。

 以前君がみた巨大な鳥。あれは四聖獣の一角、朱雀すざくで間違いない。

 遥斗くん、朱雀の向かった方向の調査と捜索を頼むよ。既に煌くんも向かわせている。」


「そうか…街の防衛は俺がやるから、天城くんは朱雀の試練に集中してくれ。」


「分かりました。2人とも、ありがとうございます!」


 リループの伝説、アセンションギア、四聖獣…これまで聞いてこなかったようなことを知り、少しずつ未来が変わってきていると遥斗は実感しつつ、司令室を後にした。




 以前グリフォン怪人と戦った現場から、遥斗は朱雀が飛び立った方向、南へ向かった。


 オフィス街を抜け、住宅街を抜けた先…山の麓までたどり着いた。

 通常なら車で移動する距離も、フェンリルの力なら一瞬だ。道中、それらしきものは見当たらなかった。


 だが、この山の麓で遥斗はある人影を見つける。

 グチョグチョという音と共に動く、3匹の異形。以前、遥斗が初めて経験した侵攻の時に大量発生して人々を襲っていたやつだった。


 遥斗は急いでギアにコインをはめ、リループとなる。グッと踏み込むと化け物の側へ近づき、蹴りを放つ。

 驚くほど簡単に、3匹の異形は消滅した。コインもなにも落とさない。こいつらは神獣の力を持つ神裔ではないようだ。


 その時、近くでぼうぼうと燃える音がする。山が燃えていないから、山の中ではなさそうだ。

 音がする方へリループは一瞬で向かう。そこには、フェイトと怪人が交戦していた。

 ライオンのような頭部で、背中からはヤギのような頭が出ているこの怪人はフェイトの炎を自身の炎で相殺している。


「天城! こいつは僕とは相性が悪い。来てくれて助かった!」


 フェイトはリループに声をかける。リループは再びグッと踏み込み、怪人の背後へ回る。

 リループは蹴ろうとして、止めた。怪人の背中には、ヤギのような顔があったからだ。

 死角がない相手との戦い方は、もう学習している。


「一条さん、これを!」


 リループはレヴィアタンのコインを取り出し、フェイトへ渡す。

 フェイトはそれをギアにはめて、青いレヴィアタンの影を纏った。

 リループはケルベロスのコインをセットした。

 フェイトは水で作った槍で怪人に攻撃を、リループは2匹の犬を怪人の側へやる。


 だが、怪人は槍を火炎で蒸発させ、素早い犬を尻尾の蛇で消し去った。


「ふはははは。無駄だ。私の持つキマイラの力には、誰も敵わない。」


「それはどうかな。」


 声がした。リループでも、フェイトでもない。声の主の方を見ると、そこには聖也がいた。


「聖也さん!? どうして?」


「神裔である俺に取って、コインの力を1部使うことは造作もないことさ。

 このペガサスコインの力を使って、天から駆けつけた。」


 そう言い、新たなギア、アセンションギアを取り出す。


「お前たちは先に行け。ここは俺が引き受ける。」


 コインを、ギアへと落とした。チャリン、という音がなり、ペガサスの影が聖也の前に現れる。

 聖也がギアの横についている紐を揺らす。ガラガラと、鐘の音が鳴る。すると、ペガサスの影が聖也に纏わりついた。


「我が光で、悪を正す。戦士ルーサス、ここに誕生だ。」


 黄色に輝く神々しいペガサスのオーラを纏った戦士、ルーサスがそう告げた。





【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス


一条煌…フェニックス、レヴィアタン、グリフォン


飛翔聖也…ペガサス

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