05. 2周目開始!? ループせし戦士!
「結愛が、生きてる…!?」
信じられないという思いと期待を胸に抱き、慌ただしく階段をかけ降りるこの青年の名は、天城遥斗。
怪人と戦い、心を押し殺していた復讐と向き合った戦士、リループだ。
リビングのドアを開けると、1人の少女がいた。
「お兄ちゃんおは…うわぁ! いきなりなに!? どしたの?」
死んだはずの妹、天城結愛を見ていきなり抱きつく遥斗。
もう会えないと思っていた人が、目の前にいる。遥斗は涙を流し、強く抱きしめた。
「うぐっ…生ぎでで、よがっだ…」
涙混じりに安堵の声を漏らす遥斗。対する結愛は困惑している。
「生きてるに決まってるでしょ。悪い夢でも見た?」
悪い夢。きっとその通りだと遥斗は思う。
遥斗は結愛から手を離す。そして涙を拭った。
「よーし、兄ちゃん特製味噌スープ、ちゃちゃっと作ってやるからな!」
遥斗はキッチンに立ち、料理を始めた。
「「いただきまーす」」
リビングの机で、2人仲良く手を合わせる。
その時、ティロリンという音がテレビから鳴った。
『速報です。不思議な力で我々を脅かすテロリスト集団、「継裔会」。彼らから私たちを守るために設立された組織「セイヴァー」が、遂に対抗装備「ディバイドシステム」を完成させました。繰り返します…』
「ねぇお兄ちゃん、ディバイドシステム?ってなに?」
「それは…」
結愛の質問に返しかけた時、遥斗はあることを思い出した。
遥斗の部屋で、ガチャンと落ちたディバイドギア。
その存在は、これまでが夢でなかったということを証明している。
「結愛! 今日は学校に行っちゃダメだ!」
遥斗は必死にそう言った。結愛は目を丸くする。
「え? 急にどうしたの?」
「もし結愛が学校に行ったら、この後…
俺は結愛を失いたくない! だから、行っちゃダメだ。」
結愛を失わないために、あの悲劇を起こさないために、遥斗はそう言う。
結愛には、遥斗の必死さが伝わったようだ。
「分かった。お兄ちゃんがそこまで言うなら、今日は行かないよ。最近物騒だもんね。」
遥斗はほっと安堵した。結愛が家にいれば、死なずに済む。
「ありがとう。今日はずっと家にいてくれ。兄ちゃんは、ちょっと出てくるよ。」
遥斗はそう言い残して部屋へ行く。そして、ディバイドギアを見つめた。
「これがあるってことは、あれは本当に起きたことなんだよな…コインもちゃんと3枚ある。」
フェンリル、レヴィアタン、ケルベロス。3枚のコインが遥斗の手元にはあった。
「なんでこの日に戻ったのかは分からないけど、これはチャンスだ。急いでこのことを伝えないと。」
遥斗の脳裏には、煌との死闘が浮かぶ。
苦しみだし暴れ出す怪人と、それを止めた時の、ありがとうという消えそうな声。
あの光景は、もう見たくない。その気持ちで遥斗はギアとコインを握りしめ、着替えてセイヴァーへと向かった。
セイヴァー本部 エントランス。
遥斗はそこで、警備員に捕まっていた。
「離してくれ! 俺は霧島さんや一条さん、聖也さんの知り合いだ!
あの人たちに伝えなきゃいけないことがある!」
前へ進もうとする遥斗だが、警備員にガッチリ掴まれている。そんな時だ。
「ヘイ、なんの騒ぎだい?」
しわくちゃな白衣にピンクのサングラスをかけたドクター霧島がやってきた。傍には一条煌もいる。
「霧島さん!…一条さん。天城遥斗という者です!あなた達に話があります!」
「オーケーオーケー。ヘイユー、彼を離してやってくれ。」
警備員が遥斗を離した。
「話とは、一体なんだい?」
「司令室でゆっくり話します。」
そう言いながら遥斗は、フェンリルのコインを取り出した。
霧島はサングラスを上げて、そのコインを見て笑う。
「これはサプライジングだね。いいだろう。司令室へ行くとしよう。」
そうして、司令室へと通された。
セイヴァー本部 司令室。
絵画が並ぶこの部屋で、遥斗は2人に告げる。
「今日の正午頃、継裔会による侵攻が起こります。その侵攻を止めたいんです。
だから、力を貸してください。」
遥斗は頭を下げる。霧島は訝しげな表情だ。煌が口を開いた。
「大丈夫だ。既に継裔会に対抗する装備は完成している。
僕がディバイドシステムを使って侵攻を止めるから、安心してくれ。」
煌は誇らしげな顔でそう伝えた。だが、霧島が口を挟む。
「待て。なぜそんなことを君が知っている?
私たちの名前も知っていたね。入念に調べてきたようだ。
それにあのコインは神裔しか持ちえないもの。
遥斗くん、君が継裔会のメンバーで、私たちを罠にはめようとしているのではないかね?」
「違います。このコインは父から貰ったもので…俺も戦士なんです。」
遥斗はディバイドギアを取り出して見せた。霧島が目を見開く。
「ワッツ!? ディバイドギア!? 私はこれを1つしか作っていない! 何がどうなってるんだ!?」
「俺は未来で、このギアを使って戦士として戦っていました。
でもそれは、最悪の未来。だから全ての元凶であるこの日の、この侵攻を止める必要があります。」
遥斗の覚悟は本物だ。
「そんなの、非科学的すぎる…。解明したい所だけど、時間があまりないようだね。
こんなものを見せられたら、私は信じるしかない。被害エリアを教えてくれ。」
霧島はディバイドギアを見て、遥斗を信じることにしたようだ。煌が口を挟む。
「待ってくれ。もしその話が本当だとして…戦士は僕がなるはずだ。
その最悪の未来で、僕はどうなったんだ?」
遥斗は口を噤む。あの未来のことを煌に伝えていいのだろうか。
「一条さん。なにはともあれ今は仲間です。戦士同士協力して、怪人を倒しましょう。」
遥斗ははぐらかすことにした。
煌の中に正義があることは分かっている。それを押し殺させないためにも、黙っておく。
こうして、セイヴァー側は侵攻に対処するための作戦を練ることとなった。
正午の少し前。社会人の賑わうオフィス街に、2人の男と1人の怪人が現れた。
青いロングコートに金のマフラーをした男、ゼクス。
灰色のタンクトップを着た大柄の男、ヴァルガ。
そして、翼と巨大な爪が生え、鷲の意匠が胸に施されたグリフォン怪人。
だが彼らを待ち構えていたかのように、2人の男が立ちはだかる。
「現れたな、継裔会。戦士として、お前らは僕が倒す!」
「最悪の未来を変えるために、この侵攻は絶対起こさせない。」
2人はディバイドギアを取り出した。
「ディバイドギア…まさか2台も作っていたとは。」
ゼクスは冷静に分析する。
遥斗と煌、2人は天秤の右にコインをはめる。コインが右へと傾く。
煌は目を閉じ、深呼吸。遥斗は決意と覚悟を胸に、力をくれと強く願う。
すると2人の天秤が徐々に左へ傾いていき、釣り合った。フェンリルとフェニックスの影が現れ、2人を包む。
燃える鳥のような赤いオーラを纏った戦士フェイト。狼のような白いオーラを纏った戦士リループ。
2人の戦士が、初めて並び立った。
対するゼクスとヴァルガは、それぞれのコインを弾く。コインがそれぞれの神獣の影となる。
鹿のような体に龍のような顔、1つの角が生えた神獣、麒麟。
強靭な肉体と巨大な尾を持つ4足歩行の神獣、ベヒモス。
それらの影がゼクス、ヴァルガにそれぞれ吸収され、胸から全身にかけて怪人へと変貌していった。
こうして両者構えをとる。
リループは、あることに気づいていた。相手の怪人が以前とは違うのだ。
以前の怪人、レヴィアタンのコインはすでに手元にある。
つまり、ゴズコインはディバイドギアとは違って2つに増えない。その気づきを得て、戦いは始まる。
最初に動いたのはリループだ。グッと踏み込んだと思ったら、ヴァルガの後ろへ回って蹴りを入れる。蹴りはヴァルガに命中した。
「ふんっ!」
ヴァルガはその蹴りを受けたのに、微動だにしない。耐えてみせたのだ。
「なに!?」
リループはすぐにもう1歩踏み込み、フェイトの横へと戻る。
次に動いたのは、グリフォン怪人。翼を羽ばたかせ、空から迫る。
それをフェイトが炎で防いだ。フェイトの纏うオーラが羽ばたき、フェイトも空を飛ぶ。
「こいつは僕が引き受ける!」
フェイトとグリフォン怪人の空中戦が始まった。
リループはコインをレヴィアタンへと変え、水を激流のごとく噴射する。
それをゼクスは俊敏に避け、ヴァルガは受け止める。
ゼクスは一瞬でリループの横に行き、焔を噴出。リループは水で作った盾で受け止める。
そしてすぐフェンリルにコインを戻し、拳を入れる。
だがそれをゼクスは避け、蹴りを。リループはそれを躱し、距離を取る。周囲を置き去りにした高速バトルだ。
リループがゼクスのスピードについていくにはフェンリルのスピードが必要だ。だが、それではヴァルガには通用しない。
リループはどうしようかと頭を悩ます。そこであることを思いだした。以前フェンリルで苦戦した、ケルベロス怪人との戦いだ。ケルベロスならこの状況に対処できるかもしれない。
リループはギアのコインを抜き、ケルベロスのコインをセットする。3つの頭を持つ地獄の番犬の赤黒いオーラが、リループを包んだ。
その上空では、フェイトとグリフォン怪人が戦っていた。
フェイトの出す炎を怪人は華麗に避け、爪による攻撃をしようと近づく。フェイトは怪人を近づけないよう炎で牽制し、距離を置く。
これでは決着がつかない。そう感じたフェイトは、捨て身の戦法へ打って出る。
あえて炎を途切れさせた。すると、怪人は迫り、爪で攻撃をする。
その瞬間、フェイトは炎で剣を作り出し、迎え撃った。
一閃。
両者の翼が切り落とされ、地面へと落ちていく。
その地面では、赤黒いケルベロスのオーラを纏ったリループが戦っていた。リループが纏う3つの頭を持つケルベロスから、2つが分離して犬の影となった。
2匹の犬と、リループ。3匹の犬へと別れる。
ゼクスが高速でリループの背後に周り、焔を放つ。その瞬間、リループは片方の犬へとワープして回避した。
リループが纏うケルベロスの影の頭に、犬が合わさり2つになった。もう1匹の犬の影が、ヴァルガの方へ向かう。
大柄のヴァルガの攻撃を、犬は華麗に避ける。そんなヴァルガの元に、リループが。
リループ、ヴァルガ、犬の影の順で並んでいる。ヴァルガはリループへ攻撃。その瞬間、リループはヴァルガの背後、犬の影へワープ。リループの纏うケルベロスの頭が、3つに戻った。
3つの頭が、0距離でヴァルガにエネルギービームを吐き出す。ヴァルガは仰け反り、ダメージを食らう。
どうやら3つ頭がある状態だと、凄まじい火力を発揮するようだ。3頭に別れてのワープと、3頭纏まっての火力を両立するのがケルベロスの力だった。
「さすが伝説の戦士リループ。ヴァルガ、ここは退きますよ。」
ゼクスとヴァルガは黒いモヤに包まれ、姿を消した。そこに、フェイトと怪人が落ちてくる。
「天城、決めるぞ!」
フェイトが叫ぶ。
「分かった。俺が動きを封じる。」
リループは体に力を込めた。ケルベロスの影が目の前に現れる。その影は怪人に噛み付いて離さない。そこにフェイトが剣を突き刺した。
「ぐはっ! …例え私が倒れても、数多の同胞がお主らを倒すだろう…」
怪人は爆散し、コインが落ちた。無事に侵攻を食い止めたのだった。
それぞれギアからコインを抜き取り、顔を見合わせる遥斗と煌。
その時、2人の上空を巨大な影が遮る。眩い光を纏って羽ばたく、美しい鳥だ。2人は上空を見上げるが、その鳥はすぐに通り過ぎて行った。
セイヴァー本部 司令室。
霧島はモニターを見ていた。
「ディバイドギアを完全に使いこなしている。本当に未来の戦士なようだ…」
そこに、1人の男が入ってきた。
「久しぶりだな、霧島。」
白のまじった灰色の髪に、霧島とは違って一切シワのない白衣を着た男。
「三上先生!? …お久しぶりです、一体なんの用ですか?」
霧島はこの男、三上に対してそう聞いた。少し警戒しているようだ。
三上は優しい笑みで語りかける。
「君に…装備を提供しようと思ってね。」
彼は箱状のものを取り出した。紐と鐘が横についたその箱は、まるで賽銭箱のように上側が空いている。
「君の兄弟子が作り上げた装備だ。性能に、興味があるだろう?」
箱とともに机にコインを置く三上。
翼を広げた天馬…ペガサスのコインが、キランと輝いた。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、レヴィアタン、ケルベロス
一条煌…フェニックス、グリフォン




