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38.無 限

 世界の終焉はすぐそこまで迫っている。

 巨人、女神、精霊など様々な魑魅魍魎ちみもうりょうが街を破壊していく中、天城遥斗あまぎはるとは前へ進む。

 魑魅魍魎の数が増えている。神と三上の戦いが激化している証拠だった。


 そんな遥斗の元に、1人の男が落ちてきた。


「ぐっ…かなり本気だね。」


 黒いベストに白いインナー…茶髪が目立つその男は、神だ。


「さあ、死ぬがいい!」


 怪人となった三上が、鎌を振り下ろそうとしている。


 遥斗は、咄嗟とっさにリループ・ラグナロクとなり、空間の裂け目を使って神を自分の近くへ逃がした。


「どこまでも邪魔を…」


 三上はそう言うと、手を突き出す。すると、全ての時が止まった。

 リループ・ラグナロクの意識はあれど体は動かない。


「これで、邪魔なく戦える。」


 三上は神の方を向き、そう言った。

 既に傷ついている神は立ち上がり、笑う。


「一体なぜ、僕を殺そうとするんだい?」


 神はそう言った。本来、この世界に干渉することのできない神。彼を殺す理由が、思い当たらなかった。


「復讐、だ。」


 そう言うと三上は息を吐いた。すると、瞬く間に気温が下がる。


「お前のせいで、人間は淘汰されてきた!我らが人間の積年の恨みを今晴らす!」


 氷を纏った鎌を、神へと振るう三上。


「しょーもないなー。そんなことのために、子供たちをたくさん犠牲にしちゃってさ。」


 神が手を横にすると、1本の槍がその手に向かって飛んでくる。それを掴むと、三上の振るう鎌へと迎え撃った。


 2つの武器が交わった瞬間、時が動きだした。


 凄まじい衝撃と共に、周囲の魑魅魍魎が消し炭となった。街も、一瞬にして更地となる。

 そしてその衝撃は、リループ・ラグナロクをも飲み込む。


「あちゃー、世界にはもう、僕と君しかいないみたいだね。」


 神は、残念そうにそう言った。


「すぐに、私1人になるがな。」


 三上はそう言うと大声をあげる。すると、気温が上昇し、鎌は炎を纏った。


「この世界が壊れかねないけど…そろそろ本気、出しちゃうか。」


 神がそう言うと、空中に文字が描かれる。


「イサズ、ラグズ、ハガラズ。」


 神がそう言うと、刻まれた文字から氷と水の波動が現れる。

 それと共に、氷の塊が空から降ってきた。


「ルーン魔術か、面白い。」


 三上は炎を纏った鎌で迎え撃つ。


「ナウシズ」


 神がそう言う。すると、三上の体が動かなくなった。


 そこに氷と水の波動が直撃する。三上は、呆気なく爆散した。


「うっ…ぐっ…」


 突然、神が左目を抑えだした。

 ルーン魔術。北欧神話において最高神オーディンが解き明かしたルーン文字の秘密から生まれた魔術だ。オーディンはその代償に、片目を捧げたという。


「捨て身の技、だな。」


 三上は復活し、鎌を振り下ろした。鎌が神に直撃する。


「まだ…力を…」


 2度倒れてなお、三上が集めた神の力は残っていた。ここまで時の権能を扱い続けるのに、どれ程の神裔しんえいが犠牲となったのだろう。


 神が倒れた。その傍には、遥斗も倒れている。


「ふははははははは!!!!!! ようやく、殺せる!!!」


 三上はそう言うと、倒れた神へ鎌を振り下ろす。


「まだ…終わりじゃない!」


 その瞬間、遥斗が立ち上がり、神を庇った。


 遥斗目掛けて鎌が振るわれる。その直前、彼の体が光り輝いた。


「生きていたとは…どこまでも邪魔を。」


 三上は苛立つ。何度も邪魔をされている。だが、今度こそ遥斗は死んだはずだ。


 ドッシーン


 突然、遥斗と三上の間に超絶巨大なホースのようなものが出現した。

 否、これはホースではない。よく見ると、蛇のような模様がある。


『ドドーンと参上! 遥斗、兄者、大丈夫か?』


 地面には、真っ二つに割れた結愛ゆあのお守りと、その中に入っていたであろうコインが砕けて落ちていた。


 遥斗が三上の鎌に切り裂かれる直前、お守りが遥斗の体から飛び出て盾となったのだ。


「ヨルムンガンド…」


 三上がそう呟く。遥斗は、何が起きたか分からない様子だった。




 ヨルムンガンド。北欧神話における巨大な海の大蛇。世界を囲む程の巨体を持ち、フェンリルを兄に持っている。


『遥斗、大丈夫? ほら、シャキッとしなよ!』


 ヨルムンガンドは呑気にそう言った。遥斗は思考停止していたが、我に返った。


「なぜ、俺を助けた?」


 遥斗はヨルムンガンドに聞く。


『それが結愛の願いだから。君を守って欲しいって。』


 ヨルムンガンドはそう答えた。1つの真実が遥斗の頭に浮かぶ。


 遥斗が純血の神裔であるということは、妹の結愛もそうであることを意味する。

 つまり、彼女を選んだ神獣…結愛が生まれながらに持っていたコインも、どこかにあるということ。そしてそれが、ヨルムンガンド。

 5年前、遥斗が父親からフェンリルコインを渡されたように、結愛もお守りを渡されていた。

 そのお守りの中にヨルムンガンドコインが入っていた…ということだ。


「今更遅い! 失せろ…!」


 三上はそう言い、ヨルムンガンドへと近づく。余裕な態度が若干崩れていることから、神の力の限界が近いのだろうの推測できる。


『俺に近づくと、死ぬよ?』


 ヨルムンガンドがそう言うと、三上に猛毒を放った。


 三上はそれを避ける。近づくに近づけなかった。


『俺の力を使いな、遥斗。結愛と、両親。そして君自身の願いで、世界を救うんだ。』


 そう言うと、ヨルムンガンドは自分の尾に噛み付いた。

 その時、遥斗の体が光り輝く。その光が、ヨルムンガンドをも包んだ。


「固定の力が合わさった…だと…」


 三上は驚いた。遥斗の持つ固定の力が、ヨルムンガンドを進化させる。


 固定の力。遥斗が時の権能を手にした時は未覚醒だった力だ。だから遥斗は、その時の記憶が以降のタイムリープで引き継がれていなかった。


 だが、遥斗はその後のタイムリープでは装備や記憶を引き継いでいる。


 つまり、遥斗が戦士となり、フェニックス怪人と戦ったあの時間…あの数日の間に、固定の力が覚醒した、ということになる。


 固定の力と合わさったヨルムンガンドが変化し、小さな円形のガジェットとなった。同時に1枚のゴズコインが遥斗の手に出現する。


 そのコインに描かれていたのは、いかり。まるで、固定の力を表すかのようなその象徴。


 円形のガジェットの見た目は、自分の尾を自分で噛む蛇そのもの。その円の空洞に、遥斗はコインをセットした。


 すると、遥斗の体が光り輝いた。

 遥斗の胸元に、蛇が現れる。蛇は∞を描き、自分の尾に噛み付く。


 その後、マントが出現。紺色を基調としたそのマントは、まるで宇宙に光る星々のように所々煌めいていた。


 更に、三上と同じような砂時計のマークが手の甲や首元に現れる。


「ウロボロス…」


 それを見た神が呟いた。


 ウロボロス…それは無限の象徴である、自分の尾を噛んだ蛇。まさに、遥斗が手に持っているガジェットだ。


 遥斗は、そのガジェット…コインとそれを囲む蛇を、ディバイドギアにセットする。すると、天秤が傾いた。


 母親が持っていたお守り。それにヨルムンガンドコインを入れ、結愛に託した父親。そしてそのお守りを、遥斗へ託した結愛。


 託されて、強くなる。遥斗は、笑顔を浮かべる。


 すると、天秤が釣り合った。虹色の蛇のオーラが出現し、遥斗の周りを囲む。


 そして遥斗は、そのオーラを纏った。神獣のガジェットによる変化と、ディバイドギアによるオーラ…2種類の力を手にした、新たな戦士となる。


 見た目は、完全に人間。マントを羽織り、胸元に蛇が浮かび上がり、砂時計のマークは所々にあるが、完全に人間だ。

 ディバイドシステムによって、神獣のオーラを纏っている。


『無限と固定の力が生んだ、最強の戦士!』


 ガジェットとなったヨルムンガンドが、声を高らかにそう言った。


「リループ・ウロボロス、誕生だ。」


 天城遥斗…リループ・ウロボロスは、三上へと向き合った。





【所持コインリスト】


 天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、キマイラ、朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ、ジズ、ペガサス、ウロボロス

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