↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/39

37.笑 顔

「世界を、壊すな!」


 神と三上の壮絶な戦い。その間に、リループ・ラグナロクは割って入った。


「死に損ないが。邪魔をしないでもらえるかな?」


 三上はそう言うと鎌を振るう。


「危ない!」


 神がリループ・ラグナロクの前に立ち、半透明のバリアを展開し、防ぐ。

 その衝撃波で、周囲の家が吹き飛んだ。


「大丈夫? 危ないじゃないか。」


 神はリループ・ラグナロクに笑いかける。リループ・ラグナロクは神を睨み、反発した。


「お前らが戦うと、世界は滅ぶ。だから、戦うのは辞めてくれ。」


 それを聞いて、神は声を上げて笑った。


「あはは、大丈夫だよ。あいつを殺せば、残ったエネルギーで1度だけ時間を戻せる。そしたら全部元通り。」


 神は笑った。それを聞いたリループ・ラグナロクは、狼牙棒を手に取った。


「なら、俺が三上を倒す。神様がやられると世界が戻せなくなるかもしれないから、黙って見ててくれ。」


 意外にも、神はあっさり引き下がった。


「僕がやられる訳ないと思うけど、愛しい我が子の頼みなら仕方ないね。」


 これで、リループ・ラグナロクと、怪人となった三上の一騎打ち。


「三上! お前を倒す!」


 リループ・ラグナロクが狼牙棒を振るう。その瞬間、狼牙棒は巨大化する。

 三上は、それに対して鎌で迎え撃った。鎌が狼牙棒にぶつかると、狼牙棒が砕ける。


「アダマスで出来たこの鎌に、切れないものはない!」


 アダマス…あらゆるものを切り裂く強度を持つ、不壊の金属。それで出来た大きな鎌を、更に三上は振るう。


「くっ…」


 リループ・ラグナロクは咄嗟とっさに空間の裂け目を作る。その裂け目すら、切り裂かれた。


「無駄だ!」


 更に鎌で連撃する三上。その攻撃が、リループ・ラグナロクに直撃した。


「ぐはっ!」


 リループ・ラグナロクは吹き飛ばされ、地面に這いつくばる。

 たった一撃で、この有様だ。


「馬鹿な。確かに切り裂いたはず…まだ生きてるとはな。」


 三上の鎌は、あらゆるものを切り裂ける。少し掠っただけで神が傷ついた程の代物だ。

 それが直撃したリループ・ラグナロクは、真っ二つになってもおかしくなかった。


「なんとか…な。」


 リループ・ラグナロクの手には、ケルベロスコインが握られていた。

 三上に切り裂かれる直前、ラグナロクハウラーにケルベロスコインを喰らわせた。そして咄嗟に犬を呼び出し、盾にしたのだった。


 だが、それでもリループ・ラグナロクは衝撃で飛ばされ、もはや動くこともできない。


「しぶとい。だが、すぐに楽にしてやろう。」


 三上は鎌を握ると、リループ・ラグナロクへ迫る。

 更に、脅威はそれだけではない。今や地上には、神の血から生まれた魑魅魍魎ちみもうりょううごめいている。


 圧倒的、無力。もはや、何もできない。

 世界はもはや壊滅状態だ。それを引き起こした元凶を前に、ボロボロの体は言うことを聞かなかった。


 父を殺し、多くの神裔しんえいを殺し、人間と神裔の共存を壊し、聖也せいややゼクスを世界から消した男を前に…


『絶対、帰ってきてね。』


 遥斗はるとの心に、ある言葉が流れる。脳裏に、帰りを待つ結愛ゆあの姿が浮かんだ。


「負け、られない…!」


 その時、4枚のコインが現れた。朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ四聖獣しせいじゅうのコインだ。

 そして、ラグナロクハウラーが動き出し、それらを喰らう。


「うおおおおおおおおお!!!!」


 リループ・ラグナロクは声を上げ、立ち上がる。右手にはエクリブリアムが握られている。


「力を、貸してくれ!!」


 リループ・ラグナロクは叫ぶ。すると、エクリブリアムのコイン装填部に、ラグナロクハウラーが合体する。


 エクリブリアムから実体化した黄龍こうりゅうが出現。そして、四聖獣の4色のオーラを纏ったフェンリルも現れた。


『手を貸そう。天城遥斗あまぎはるとよ。』


黄龍はそう言った。


『ああ。それにあいつは気に食わん。』


フェンリルも言葉を発する。


「絶対に、帰るんだ!」


 凄まじい衝撃波が、天へと広がった。

 黄龍とフェンリルが三上へと噛み付き、そこにリループ・ラグナロクはエクリブリアムを投げ飛ばす。

 エクリブリアムが、三上に突き刺さった。


「ぐっ。こんなことまで、出来るとは…」


 三上が、爆散した。リループ・ラグナロクはその姿を維持できなくなり、人間の姿へと戻ると倒れ込む。


「勝て、た…」


 遥斗の顔には笑顔が浮かんでいる。


「そう簡単にやられるとでも?」


 その瞬間、広がった爆発が収束する。まるで逆再生のようだ。

 そして、傷1つない三上が出現した。


「時の権能を持った私は、不死身だよ。」


 シュンッ


 その音と共に、三上は姿を消した。


 まだ、終わっていない…


「うーん、困った力だ。自分自身の時間を戻すとは…」


 神は、遥斗の元へ降りるとそう言った。そして遥斗に手を差し伸べる。


「あいつはただの人間。神の力を消費し切ると権能は使えなくなると思うから、もう後は無いはずだよ。」


 神はキリッとした顔でそう言う。遥斗は、神の手を握り立ち上がった。


「つまり、次に全てを賭けてくるはず。その時は、僕も戦うからね!」


 そう言うと、神も消えた。

 遥斗は、周囲を見渡す。


 魑魅魍魎たちによって破壊される街。セイヴァーも崩壊している。


「帰らないと…」


 遥斗はそう言うと、歩き出した。




「お兄ちゃん! 大丈夫?」


 結愛は、ボロボロになって帰ってきた遥斗を見てそう言った。


 世界各国が更地になり、近くの都市では化け物が蠢いていることはラジオで知っている。だが、結愛は遥斗の帰りを待ち続けていた。


「…ああ。世界は、今どうなってる?」


 遥斗はそう聞いた。神と三上の戦いは、想像を絶するほどの被害をもたらした事だろう。


「もう、だめみたい。お兄ちゃん、何か知ってるんでしょ!なんでこんな、こんなことに…」


 結愛は、泣いていた。完全に絶望し切った表情だ。

 遥斗はそれを見て、ある決意をする。

 それはずっと前、青龍の試練で決めたこと。


「結愛…全部、話すよ。」


 遥斗の口から、結愛にこれまでの事が明かされる。


 父親が戦士だったこと、そして自分も戦士になったこと、何度も同じ時間を繰り返していること…そして、世界のためにこれから戦わなきゃいけないこと。


 結愛は、ゆっくりそれらを聞いた。にわかには信じられないことだが、それでも信じる。

 目の前にいる遥斗が、大きな覚悟を背負っている。そのことを、感じ取っていたから。


「お兄ちゃんじゃなきゃ、だめなの? お兄ちゃん1人で、あんな化け物に立ち向かって!」


 信じることはできても、受け入れることはまた別だ。大好きな自分の兄が、こんなにボロボロになってまで戦う。それを、認めることはできなかった。


「結愛…そんなに悲しそうな顔をするな。」


 遥斗は、笑っていた。こんなに絶望的な状況で、一体なぜ笑うことができるのか、結愛には分からなかった。


「…例えどんなに苦しくても、諦めずに立ち向かえば、世界はきっと良くなる。だから、平和な世界を夢見て笑うんだ。」


 遥斗は思い出す。


 フェニックス怪人との戦いで、死にそうになっても遥斗はこうに語りかけた。その結果、煌の中の正義感を知り、タイムリープを重ねて相棒になれた。


 テューポーン怪人との戦いで、1度は惨敗した。だが諦めずに立ち向かった結果、陽介ようすけを救い、人間と神裔の共存が実現した。


 今も、世界は絶望的な状況だ。あらゆる国が滅んだ、紛れもない終末。それでも遥斗は諦めずに戦う。

 例え何度も殺され続ける地獄を経験しても、決して諦めなかった。


「笑う…うん、そうだね。」


 結愛はそう言って、笑顔を作ろうとする。だが、上手く笑えなかった。


 遥斗は、それを見て感じる。笑顔を守ると決めたはずなのに、結愛の笑顔すら守れていない。

 まずは、目の前の妹を笑顔にしてやろうと決めた。


「よし、兄ちゃん特製味噌スープを作ってやる。これを飲めば、心も体もほっかほかだ。」


 遥斗は、キッチンへと向かった。結愛も、涙の混じった声で返す。


「お兄ちゃん、いっつもそればっかり…でも、これが無いとね。」


 非日常的な世界の中で行われる、たった1つの日常。この日常を大切にしたいと、遥斗は改めて思った。




 2人は、食卓を囲み味噌汁をすする。結愛は、安心からか涙を流した。でもその顔は、笑顔を浮かべている。


 その時。


 ドゴォーンと、どこからか音が響いた。恐らく、神と三上の戦いが始まったのだろう。


「俺、行かなくちゃ。世界を救いに。」


 遥斗は、味噌汁を飲み干すと立ち上がる。結愛は、そんな遥斗を見つめた。


「お兄ちゃん、頑張ってね。これ、お守り。きっと、お父さんとお母さんが見ててくれるから。」


 結愛は遥斗にお守りを差し出した。


 5年前、父親から貰ったお守り。このお守りは、元々母親が持っていたものだと聞いていた。


 結愛はそれを、いつも肌身離さず持ち歩いている。


「ありがとう、結愛。よーし、ちょっくら世界を救ってくるか!」


 遥斗は、わざと明るくそう言った。そして、家を後にする。




 赤い空、割れる大地、咆哮飛び交う魑魅魍魎。全ての記憶を取り戻した青年は、再び起こった終末を前に、立ち上がる。

 覚悟を瞳に宿した青年…天城遥斗の手の中には、結愛から託された、大切なお守りが握られていた。





【所持コインリスト】


 天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、キマイラ、朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ、ジズ、ペガサス

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。