36.超 戦
何度も、何度も、殺されては時間が戻る。一体何回銃声が聞こえただろうか。
だが、その終わりのない地獄の中でも、天城遥斗は諦めない。
銃声が聞こえる間隔も段々短くなっていた。三上蒼一も、痺れを切らしているのだろう。
もはや遥斗が目を開ける前に撃たれる始末だ。遥斗は、暗闇の中で何度も命を落とす。
死ぬ度に、何度も痛みを感じる。常人ならきっと今頃心が折れ、廃人となっているだろう。
だが、天城遥斗は決して諦めず、三上を倒す方法を考えていた。
「神が現れないならもういい。君の時の権能をもらうとしよう。」
降臨した神を見つけるため、遥斗を何度も殺していた三上。遥斗が死ぬ度に時間が巻き戻る性質を利用しようとしたが、神は現れなかった。
三上が手をかざすと、遥斗の体から青白い光の塊が現れる。その光の塊は、三上の体へとあっさり吸収された。
遥斗は目を覚まし、三上を睨む。
「やはり固定の力は奪えないか…だが、時間の力は全て奪い取った。これで君が死んでも、もう世界は戻らない。」
三上は銃口を遥斗に向けた。
「君は実に役に立ってくれた。さよならだ、天城遥斗。」
三上が引き金に手をかける。
「三上いいい!!!!!!!!!」
もはや何も出来ない遥斗は、最後に怒りの籠った声をあげる。
時間が戻ったことで、煌は再び三上を信じているはずだ。依然として聖也は消えたままだろう。
遥斗が死ぬと、もはや戦える戦士はいない。これまでの戦いは全て無駄だったのかもしれない。
三上は笑みを浮かべ、引き金を引いた。
パンッ
銃声が響いた。
笑顔のために戦い、数々の困難を乗り越えてきた伝説の戦士…天城遥斗は、ここで死ぬ。
はずだった。
「困るなぁー。勝手なことしちゃってさ。」
銃弾は、遥斗の目の前でピタリと止まった。
「現れたか…神よ。」
三上はそう言った。三上と遥斗の間の空間が光り輝く。
そしてそこから、帽子を被った1人の男が出現した。
目は明るい緑に煌めいており、黒いハットに茶髪ショートの髪が映える。黒いベストに白いインナーを身につけている。
とても、神には見えなかった。だが、三上は神と呼ぶ。
「僕がこの子にあげた権能を、横取りするなんて…絶許、だよ。」
神はそう言うと遥斗の方を向いた。
「服装選んでたら来るのが遅れちゃった。ごめーん!」
神は両手を合わせてごめんなさいのポーズをする。てへっとウインクをした。
「よくここまで苦しみに耐えてくれたね。流石は僕の子だ!」
そう言うと、再び三上の方を向く。明るい表情だったのが、一気に怖くなった。
「さて、罰を与えないとね。人間ってのは神裔ちゃんたちと違って悪い子ばっかりだ。」
神はそう言うと右手で銃のポーズを取る。
「バーン」
神がそう言うと、撃つ真似をする。…いや、真似ではなかった。
三上はそれを受け、吹っ飛ぶ。だが、すぐに立ち上がった。
「流石は神だ! だが、私はこれまで君を殺すために準備をしてきたよ。
表に出ようじゃないか!」
そう言うと三上はシュンッという音とともに消えた。
「後は任せて。」
神は遥斗の方を向き、頭をポンポンと優しく叩いた。そして、三上と同じように消えた。
「あれが…神。」
残った遥斗は、呆然としていた。突然の出来事に、理解が追いついていない。
「お兄ちゃん! なんの音ー?」
下から声が聞こえてきた。1階にいる結愛が、遥斗に聞いたのだ。
「な、なんでもない!」
遥斗はそう大声で叫ぶと、ベッドから出る。
まずは今がいつなのか、そして何が起ころうとしているのかを確かめなければならない。
そして、全ての記憶を取り戻し、タイムリープの力を奪われた今、もう一度結愛に会いたかった。
『速報です。不思議な力で我々を脅かすテロリスト集団、「継裔会」。彼らから…』
遥斗はテレビを見て、理解する。世界は今、侵攻の日に戻っている。ディバイドギア完成のニュースが流れていることから、霧島も生きているはずだ。
次に遥斗は、継裔会についてネットで調べる。ミオラやヴァルガの事は記載されているが、ゼクスについては情報が全くなかった。
恐らく聖也同様、完全に存在しない事になっているのだろう。
「お兄ちゃん、今日は朝ごはん無し?」
結愛は遥斗にそう聞いた。遥斗が起きて早々、結愛はハグされた。それからずっと遥斗は慌ただしく調べ物をしている。
「ごめんな結愛、これから行かなきゃいけない所があるんだ。…今日は、学校を休んでくれ。」
遥斗はそう言うと、玄関に行こうとする。
「待って、お兄ちゃん。」
結愛は遥斗を引き止めた。自分でも、引き止める気はなかった。
「ごめん! お兄ちゃん、何か大変な事に巻き込まれてる…そんな気がして。」
結愛は悲しげな表情をしている。兄の様子がおかしく、心配になっていた。
遥斗は、そんな結愛に優しく笑いかける。
「安心しろって。ちょっとほら、仕事の面接にな?」
バレバレの嘘だった。でも結愛は、それ以上深くは聞かない。
「絶対、帰ってきてね。」
結愛はただ、そう言う。遥斗は頷くと、家を出ていった。
「何とかしないと…!」
遥斗は、セイヴァーへと急いで向かっていた。今遥斗がすべきことは2つ。
1つは、これから起こるはずの侵攻を止め、セイヴァーと継裔会の因縁を無くすこと。
継裔会はディバイドギアから地下都市を守るために、侵攻を起こそうとしているはずだ。
もう1つは、三上を倒すこと。三上の言ったことが本当なら、もう世界は巻き戻らない。もし三上が神を倒すと、何が起こるか…とにかく、これがラストチャンスだ。
その為に、まずは煌を説得する。そして侵攻を止める。そしたら煌、ミオラ、ヴァルガを連れて三上と戦う。それが作戦だ。
自転車を必死に漕ぎ、セイヴァーへと急ぐ。そしてようやく、セイヴァー本部のビルが見えてきた。
だがその横から、凄まじい光が輝く。遥斗は咄嗟に目を閉じた。
ドゴォーン
爆音が、耳を揺らした。遥斗が目を開ける。そこにあったはずのセイヴァーのビルは、一瞬にして崩壊していた。
「そんな…なんで…」
もはや跡形もない。中にいるはずの煌や霧島、他のセイヴァー隊員たちは無事なのだろうか。
崩壊したビルの方をよく見ると、2人の影が見えた。赤い怪人…恐らく三上と神が戦いあっている。
「まずい、止めないと…!」
2人が戦うと、周囲への被害が凄まじい。その事に気づいた遥斗は、ラグナロクハウラーを手に取った。
セイヴァー本部崩壊の少し前。
三上と神は、ある開けた場所に来ていた。
「さあ始めようか。神を、殺す。」
三上はそう言うと、空に手を掲げる。すると、天から1匹の赤い龍が現れ、三上を包んだ。
「へぇ、燭龍。時の権能と同等の力を持ち、更に増幅させる神獣が、君に味方するとは。」
神は興味深そうにニヤッとした。三上は告げる。
「偶然手にかけた神裔がそのコインを持っていてね。これなら神を超えることも容易いだろう。」
三上はそう言う。燭龍…時を司る神獣だ。
三上の体が青白く光り、赤い龍を吸い込んだ。その直後、三上が怪人となる。
全身の至る所に砂時計のマークがあり、赤い蛇のような模様がある。
大きな鎌を手に持ち、威風堂々と立っている。
「時の権能と燭龍の力を身にまとったか…ただの人間である君が、権能を扱うとは。一体何人の子供たちを…!」
神の声色に怒りが混じる。先程までの、どこかチャラチャラとしていた様子は一切見受けられない。
それから、2人が一瞬交わった。その瞬間、凄まじい衝撃が響く。
2人はあらゆる地を超え、戦っていた。
攻撃をする度に、天地が歪む。ブラジル、アメリカ、オーストラリア…あらゆる国が更地となっていく。
地球すら超え、宇宙でも戦っていた。月は砕け、数々の星も破壊されていく。
「ただの人間がこの僕と渡り合えるとは、やるじゃん。」
神は余裕そうにそう言った。
「神裔どもに力を与えすぎたな、神よ。権能を失ってなおその力とは、流石だ。」
三上も余裕、といった様子だ。若干、三上の方が優勢である。
力、知、生、時。神はこの4つの権能を手放していた。それぞれ、ヴァルガ、ゼクス、ミオラ…そして遥斗に渡されたのだ。
三上は、そのうち時の権能を奪い、多くの神裔を殺すことで自分も扱えるようにした。そして、燭龍の力で増幅させている。
「確かに強い。でも、その神の力は有限だろ?」
神がそう言って三上を蹴り飛ばし、地球へ戻る。
そして追撃のビームを出した。
それは三上に命中し、三上の傍にあったセイヴァーのビルが崩壊したのだった。
「やるな、だが…!」
三上は大鎌を振るう。神は避けようとしたが、かすってしまった。
ポトッと血が落ちる。その血から、様々な魑魅魍魎が生まれた。
ギリシャ神話において、クロノスという存在が天空神ウラノスを鎌で殺した。その時の血から、様々な化け物が生まれる、という話がある。
まるで、神話のような戦いだ。
「僕を傷つけるとはね。」
神はそう言うと、拳を握りしめる。
「傷だけではない。すぐに死ぬ。」
三上も、拳を握りしめた。
2人は拳を振るい、今にも衝突しそうだ。
「やめろ!!!」
その時、2人の間の空間が裂ける。2人は、咄嗟に声の方を見た。
そこには、狼と完全に融合したような姿の人間…リループ・ラグナロクが立っていた。
「世界を、壊すな!」
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、キマイラ、朱雀、玄武、青龍、白虎、ジズ、ペガサス




