35.復 讐
繰り返される死の中で、遥斗は記憶を追体験する。確かに自分の経験だが、記憶には残っていなかった、0周目の記憶。
◆◆◆
ある日の天城遥斗。彼は、妹が忘れた弁当を届けるために自転車を漕いでいた。
そこで見た、崩壊した街並み。さらに先で起こった、妹の死。
「結愛……」
遥斗は、呆然と立ち尽くしていた。頭の中は整理が追いついておらず、ぐちゃぐちゃだ。
一体どれほど経っただろうか。
ようやく状況を理解してきて、心が悲しみに支配されてきた。
そんな時、ぐちょぐちょとした白い化け物が遥斗に飛びつこうとした。
「危ない!」
遥斗が襲われる直前、その化け物に蹴りを入れた人物が。セイヴァー司令官、飛翔聖也だった。
「いてて…大丈夫か?」
聖也は怪我で療養中にも関わらず、人命救助のために奔走していた。そして数少ない生存者を見つけたのだ。
「とりあえず、ここは危険だ。避難するぞ。」
聖也は、遥斗を抱えて行った。
とある建物で、遥斗と聖也、霧島と他の何人かの人々が集まった。
「生存者はこれだけか…継裔会、ついに仕掛けてくるとは。」
聖也は拳を握りしめてそう言う。
「煌くんも、レヴィアタンとの戦いの中で命を落としてしまった。…なんとか、ギアとコインだけは回収できたよ。」
霧島は傷だらけになりながら、戦場からディバイドギアとフェニックスコインを持ち帰っていた。
「一条…お前の分まで、必ず平和を実現させる。」
聖也はギアとコインを受け取ると、そう誓った。
「…あのテロリスト集団が、結愛の命を奪ったのか。」
遥斗は、聖也と霧島にそう語りかける。声には怒りが滲み出ている。
「ああ。この大規模侵攻を仕掛けたのは、継裔会だ。」
聖也はそう答えた。遥斗は、一度目を閉じて深呼吸をした後、声を出す。
「俺も、そいつらと戦わせてくれ。」
その言葉に、聖也は悩む。霧島が口を開いた。
「もはやセイヴァーの生き残りもここに居る人達のみだ。人員が多いに越したことはない。いいだろう。」
こうして、遥斗と生き残ったセイヴァーの人々は手を組み、継裔会へ反旗を翻すために立ち上がった。
継裔会との戦いは、熾烈を極めていた。
飛翔聖也は、ディバイドギアとフェニックスコインで戦士フェイトとなって怪人と戦う。
その強さは凄まじく、次々と怪人を撃破していた。
だが、あの大規模侵攻を経て継裔会が占領した都市を取り返すには戦力の差が大きすぎた。
「俺にも、戦う力をくれ。」
ある日、遥斗は霧島に頼み込む。
「そうしたいのは山々なんだけどね。君の持つフェンリルコインは、聖也が使おうとしても全く反応を示さなかった。恐らく、特別な力があるはずだ。」
霧島は残念がる。そして遥斗に告げた。
「でも、戦う方法はある。四聖獣を探し出し、試練を受けて力を貰えば、君も戦えるようになるはずだ。」
遥斗はそれを聞き、四聖獣の試練を受けることを決意する。情報が全くないため、毎日四聖獣を見つけるために奔走した。
それから、多くの月日が流れた。継裔会は確実に世界を占領していき、それに対抗する人々はレジスタンスと呼ばれた。
そしてそのレジスタンスも、聖也と霧島と遥斗しか生き残っていなかった。
そんなある日、遥斗はある神社にたどり着いた。そこで、四聖獣の一角、白虎と出会う。
『来たか。我が試練を受ける準備はいいだろうな。』
白虎は遥斗にそう言った。遥斗には何の情報もエクリブリアムもなかったが、執念だけでそこへ辿り着いたのだ。
「ああ。必ず突破する。」
遥斗はそう決意した。そして試練に挑むが…
『復讐に囚われた哀れな男よ。貴様には、我が力を使う資格などない。』
白虎は遥斗の前から姿を消した。遥斗は、白虎に認められなかった。
「おい! 何故だ! 俺に力を寄越せ!」
遥斗はそう言ったが、そこには誰もいない。神社に虚しく声が響く。
ある日、聖也と遥斗は、継裔会へ突入することを決意した。
このまま隠れながら戦っても埒が明かない。戦いの中で霧島も命を落とし、生き残ったのは2人だけだ。侵攻の日から、2年が経過していた。
「この作戦で、まずはヴァルガを叩く。すると新たな怪人は生まれなくなるから、後はひたすら倒すだけだ。」
聖也はそう遥斗に言う。遥斗は頷いた。
「囮役は俺に任せてくれ。絶対死ぬなよ、聖也。」
遥斗は聖也にそう言った。生き残った唯一の仲間。遥斗と聖也は2年間の戦いの中で、相棒とも呼べる関係になっていた。
「危険な役回りをさせてしまって申し訳ない。勝って落ち合おう。」
聖也と遥斗は拳をコツンとぶつけると、作戦へ移る。
この2年間で、遥斗の両親が神裔であったことが発覚していた。つまり、純血の神裔である遥斗は継裔会に入る資格がある。
顔が割れてる聖也とは違い、遥斗を知る継裔会の者はほとんどいない。継裔会に潜入し、ヴァルガを倒す隙を作るのが遥斗の役目だった。
その作戦は、失敗に終わった。
遥斗は継裔会に潜入後、なんとかヴァルガを誘き出すことに成功した。
そして聖也は戦士フェイトとして、無事にヴァルガを撃破する。
その直後、ゼクスが死角からフェイトを貫いた。
ゼクスは、知の権能によって遥斗の潜入を見抜いていたのだ。
「聖也!」
遥斗は叫ぶ。だが、もはや聖也は息をしていなかった。
「ゼクス…お前!」
遥斗はゼクスに怒りをぶつける。ゼクスは、遥斗に言葉を返した。
「ヴァルガを倒していただきありがとうございます。貴方は殺すなという指示を受けているので、私はこれで。」
ゼクスはそう言って立ち去ろうとした。
「ふざけるな!」
怒号が響いた。ゼクスが遥斗の方を向くと、そこには怒りに満ちた遥斗…聖也のギアと自身のフェンリルコインを使った、戦士リループがたっていた。
「おっと、これは予想外ですね。」
リループとゼクスの戦いは、決着がつかずに終わった。ミオラの介入により、一度見過ごされた。
その後、衝撃的な出来事が起こる。
ゼクスは継裔会を裏切り、数多くの神裔を手にかけた。
そして、奪った大量のゴズコインを全て砕いたのだ。
世界には、数多の神獣が出現した。暴れるものもいれば、何もしないものもいる。
瞬く間に人々は消されていき、世界の滅亡はすぐそこだ。
赤い空、割れる大地、咆哮飛び交う魑魅魍魎。
息絶えた大勢の人間には見向きもせず、1人の青年は前へ進む。
「俺は…お前らを倒す! …大切な人たちを奪ったお前らを許さない」
世界に噛みつく神話の狼の力を纏う青年…天城遥斗の目には、恨みが宿っていた。
継裔会、神獣、ゼクス…遥斗の倒すべき相手は多い。たった1人で、妹や仲間たちを奪われた復讐を果たすために立っている。
そして、それと同時にある事を思っていた。
「やり直したい…」
全ては、あの日の侵攻から始まった。もう一度、あの日に戻ることができたらどれほど良かっただろうか。
誰も失わず、結愛と楽しく笑っている日常。そんな日常が続いて欲しかったと、切に願う。
そしてその願いに、神が応えた。
遥斗が空を見上げた。以前までの青い空はそこにはなく、血のように赤かった。
その空から、一筋の光が見えた。その光は、遥斗へと向かっている。
遥斗はその光に手を伸ばし、掴んだ。
その時、遥斗の視界がある人の背中で覆われた。
「この時を待っていた! 権能よ、私に力を!」
遥斗の前に立ったのは、三上蒼一。三上は、その光を浴びた。三上の後ろにいた遥斗は、微量の光を浴びる。
「1部だけ取りこぼしたか。だがいい。大部分は私の中にある! さあ、時間よ戻れ!」
三上はそう高らかに宣言するが、何も起こらない。
「やはり、私に権能は扱えないか。彼に力の1部が残ったのは、逆に良かったと言うわけだな。」
三上はそう言うと、遥斗の方を向く。
「お前は…何者だ!」
遥斗の体が青く光った。三上はそれを見て笑う。
「もう時間の力が覚醒したか。わざわざこんな地獄を作り上げた甲斐もあったと言うわけだ。
天城遥斗。君の復讐劇を楽しませてもらったよ。」
そう言うと、三上は遥斗に拳銃を突きつけた。
「固定の力は…まだ未覚醒か。なら、君が私を知るのは、もう少し先になる。」
遥斗は、三上を睨んだ。
「ふざけるな!!!」
パンッ
三上は、遥斗を撃ち抜いた。
◆◆◆
そして、遥斗は目を覚ます。だが、記憶も装備も引き継いではいない。
ここから先は、今の遥斗の記憶にもある出来事だ。遥斗は、長い死の苦しみの中で、似た苦しみの記憶を取り戻したのだった。
今でも遥斗は、目覚めては殺される。だが、決してその心は折れない。
これまでの経験と、取り戻した記憶が、必ず平和を取り戻すと決意させる。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、キマイラ、朱雀、玄武、青龍、白虎、ジズ、ペガサス




