↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/50

32.達成:終末の阻止

 怪人と人間が融合したような戦士、リループ・ラグナロクが誕生した。


「あなたを、止める。」


 リループ・ラグナロクは重打撃武器、狼牙棒を右手で引きずりながらゆっくり歩く。


「今の俺は、あいつより強い!」


 テューポーン怪人が右手を突き出すと、キマイラ、ヒュドラ、スフィンクスの影が出現する。


 キマイラの影が、リループ・ラグナロクに向かって火炎を放つ。


 火炎は、直撃した。だが、それが直ぐに吸い取られた。


「お返しだ。」


 リループ・ラグナロクが左手を前に出すと、キマイラの影に火炎が放たれる。

 キマイラの影は火炎を放ち対抗するが、リループ・ラグナロクが放ったものの方が威力が高く、業火に焼かれて消滅した。


 ポトッとコインが落ちる。


「倒しても無駄だ! 何度だって!」


 テューポーン怪人がキマイラコインを吸い寄せようとする。

 リループ・ラグナロクがそこに左手をかざすと、コインとテューポーン怪人の間の空間が裂ける。そして、コインが裂け目に消えた。


「確実に、止める。」


 リループ・ラグナロクが狼牙棒を振るう。振るった瞬間、狼牙棒は巨大化し、ヒュドラの影に命中した。

 ヒュドラの影は呆気なく消え去り、コインが落ちる。そのコインも、空間の裂け目に消えた。


「だから、戻ってきてください。」


 リループ・ラグナロクが狼牙棒を置くと、それが消えた。そして、グッと1歩踏み込むと、高速でスフィンクスの影へ迫る。


 そして右手にエクリブリアムを出現させ、左手に牙を生やし、両手で切り裂く。

 スフィンクスの影も消え去り、コインは裂け目に消える。


「なんだ…この力は…! あいつも、こんな化け物みたいな力を使っていたのか!」


 テューポーン怪人は驚いた。英雄に相応しい高潔な力を想像していたが、その実態は破壊を想起させるような歪んだ力だった。


「化け物を化け物たらしめるのは力じゃない。心の強さで、どんな者だってヒーローになれる。」


 怪人となり、命を落とした和成かずなり。見た目こそ怪人だったが、彼の思想は立派なヒーローだった。


 リループ・ラグナロクはそのことを思い出しつつ、再び狼牙棒を手に取り、振るう。


 テューポーン怪人の元から、複数の神獣がコインとして分離した。それらも空間の裂け目に消える。


『俺の本来の力は捕食と破壊。コインの力を、俺に喰わせろ。』


 ラグナロクハウラーからフェンリルの声が響く。リループ・ラグナロクが左手を横に伸ばすと、空間が裂ける。その裂け目に、手を入れた。


 ベヒモス、レヴィアタン、フェニックスのコインを取り出し、ラグナロクハウラーに飲み込ませる。


「貴方も、彰吾しょうごくんにとってのヒーローだったはずだ。」


 リループ・ラグナロクが地面を叩くと、テューポーン怪人に重さが伸し掛る。

 そして、テューポーン怪人の左右の空間が裂け、水と炎がそれぞれ噴射される。


「ぐっ…もう、彰吾はいないんだ!」


 テューポーン怪人は攻撃をくらい、更にコインを落とす。だがなんとか攻撃を振り払う。


「結局俺は、ずっと逃げてたんだ。自分の罪と向き合わないで、あくまで師匠としてしか接してあげられなかった。名前だって、ちゃんと呼ばずに…」


 嘘を付き、罪から逃げて暮らしてきた。そんな自分はヒーローではないと感じている。


「それでも貴方はヒーローだったはずです。彰吾くんのことを誰よりも考えていたじゃないですか。

 貴方が禁断の果実を作ったのは、俺の母ちゃんを救うため。間違ったことなんてしていない。」


 リループ・ラグナロクはナハシュ、ヒュドラ、スカラベのコインをラグナロクハウラーに飲み込ませる。


 無数の蛇が出現し、テューポーン怪人へと迫る。

 テューポーン怪人も負けじと肩の蛇を這わせ迎え撃つ。


「貴方だけが背負うことじゃない。俺が、俺たちが、貴方の分まで背負って戦います。貴方は、力なんてものに縛られないでください。」


 テューポーン怪人の足元に空間の裂け目が生まれる。

 テューポーン怪人はそこに落ちた。そして、リループ・ラグナロクの真上に裂け目が生まれ、そこから落下する。


「罪悪感が、力を求める願いが貴方を縛る鎖なら、それを引き裂きましょう。」


 リループ・ラグナロクが体に力を込める。そしてラグナロクハウラーのレバーを弾いた。


「アオォォーーーーン!」


 リループ・ラグナロクが遠吠えをあげる。すると一瞬にして夜となり、満月が浮かび上がった。

 リループ・ラグナロクの見た目が完全な狼に近づく。そして高速でテューポーン怪人に何度も両手の牙をぶつける。

 その後上に飛び立ち、狼牙棒を手に取ると、両手でそれを振るった。


 テューポーン怪人はそれをくらい、テューポーンコインと山宮陽介やまみやようすけに分かれた。


 月は消え、昼に戻る。リループ・ラグナロクの見た目も元に戻る。


「俺は…俺は強くならなきゃなんだ…!」


 地面に転がった陽介は、そう言う。だがその頭の中には、彰吾と一緒におでんを食べる暖かな食卓が浮かんでいた。


「貴方は、強い。だからもう、強さに固執しないでください。」


 リループ・ラグナロクはナハシュコインを手に取り、砕いた。

 ナハシュが出現する。


『久しぶりだな、陽介。まさかお前が強さを求めるなんて。既に十分強いのに。』


 ナハシュはそう言った。陽介は、ナハシュを見つめる。


『30年前だって、我に禁断の果実を作るよう頼み込んだだろ?

 あれを人に直接与えた者は死ぬ。それを知りながら、お前は果実を使おうとした。その強い覚悟を見たから、我はお前に力を貸したんだ。』


 30年前、陽介は自分を犠牲に遥斗はるとの母親を救おうとした。強く、立派なヒーローだ。


「俺が…強い…? そうだな、きっとそうだ。」


 陽介はなにかを思い出したかのように笑っている。


「あいつも、ずっと俺を強いって言ってくれてたな。これ以上変な姿見せたら、あいつに笑われちまう。」


 空を見上げ、微笑む陽介。まるで自分ももうすぐそこへ行くことを悟っているようだった。


「おじさんは、これからも生きてください。彰吾くんの分まで。」


 リループ・ラグナロクはラグナロクハウラーを投げると、それがフェンリルコインへと変わった。そして天城遥斗としての姿に戻る。


「…ああ。優しい師匠を、見せてやらないと。」


 陽介は涙を流しながらも、笑っている。こうして、戦いは幕を閉じたのだった。




 1ヶ月後。


 継裔会けいえいかいの地下都市は壊滅状態に追いやられていたが、神裔しんえいたちの犠牲は少なかった。

 以前ゼクスが攻めた際に確立した避難ルートにより、多くの人が生き延びていたのだ。


 そして、神裔たちは再び人間社会で暮らすこととなった。

 最初は不安もあっただろうが、地上と地下であまり違いはなかった。

 自分が神裔であるというプライドが無くなれば、人間と神裔の間に大きな違いはないのだ。


 2台のディバイドギアの修復も完了した。ドクター霧島は自分のギアを頼ることに満足しつつも、テューポーンのデータから新たな装備を開発中だ。

 相変わらず聖也せいやを忘れたことで失った正義は取り戻せていないが、今は開発に熱中している。


 ミオラは、ヒュドラとベヒモスのコインを手に取りどこかへ消えてしまった。

 遥斗やこうは何度か探したが、見つけられていない。


 そして、陽介は神裔の子供たちと触れ合う学童の先生となった。

 子供たちを笑顔にし、優しい先生として慕われている。

 彼の作る特製おでんは、学童でも屈指の人気メニューだ。

 一度怪人となった彼だが、力の権能ではなくテューポーン自身の能力であったため、消滅の危険は無かったようだ。

 だが彼は彰吾の形見として、テューポーンコインを常に持っている。


 煌は、この平和な世界に喜びを感じつつ、今後迫り来るであろう脅威に備えていた。

 三上とゼクス。まだ敵は残っているため油断はできない。

 ギアとコインを片手に、今日も街をパトロールする。


 そして、遥斗は...結愛ゆあとの平和な暮らしに戻っていた。

 以前怒られ、それから潜入もあり会えていなかった2人。遥斗はまた怒られると思っていたが、久しぶりに家に帰った日、結愛から抱きしめられた。

 ずっと、心配をかけてしまっていた。でももう離れ離れになる必要もない。2人は仲直りをし、毎朝一緒に味噌汁を食べる日々が帰ってきた。




 一方、三上とゼクスは、暗い部屋で話している。


「ついにアセンションギア修復が完了しました。あと一度戦えば、私は完全な神となれる!」


 ゼクスはそう高らかに笑うと、アセンションギアとペガサスコインを手に取る。


「ようやく、計画を完遂する時が来たな。」


 三上は、満足気に笑っていた。





【所持コインリスト】


 天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、キマイラ、朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ、ジズ


 一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス、グリフォン、スカラベ


 ゼクス…ペガサス、麒麟きりん


 ミオラ…ヒュドラ、ベヒモス


 山宮陽介…ナハシュ、テューポーン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。