25.防衛:決戦の時
「さあ、殲滅の時です。」
地下都市へ入ったゼクスは、アセンションギアを手に取る。
そこに、ミオラが現れた。
「よくも現れたわね、ゼクス。」
ゼクスが地下都市に来ることを想定し、既に大部分の住民の避難は終えていた。
あとは、現状の最大戦力…遥斗が来るまで持ちこたえるしかない。
「今の貴方に戦う力はありません。それに、もうヴァルガもいない。
ここに現れても、どうしようもありませんよ。」
ゼクスはベヒモスのコインをミオラに見せつける。
「みんな、この場所を愛していた。この場所を守るために、命を投げ出して…
私は、これからもこの暖かい場所で、笑顔を見届けたい。」
ミオラには普段のほんわかとした雰囲気はなく、強くゼクスを睨んでいる。
「やれやれ…かつての絶望から、死に場所を探している貴方が、他人のために生きるとは。
その絶望と権能で、支配者にだってなれたはず。実に勿体ない。」
ゼクスは、アセンションギアにペガサス、麒麟、ヒュドラのコインを投入した。
ギアの紐を揺らすと、ガラガラと鐘の音が鳴る。黄色いペガサスのオーラを纏い、蛇が絡みついた剣を持つ戦士ルーサスとなった。
「生の権能がいつまで持つか、試させていただきます。」
ルーサスが高速でミオラに迫り、剣で右腕を切り落とした。だが、落ちた腕はすぐに消滅し、ミオラにはすぐ右腕が生えてくる。
「私のコイン、返しなさいよ!」
ミオラがそう言うと、巨大な鎌を生成した。黒く、禍々しく光るそれを持つ様はまるで死神のようだ。
「生の権能にそんな力があるとは…ますます厄介ですね。」
ルーサスもこれは初めて見たようだった。冷静に分析する。
「生の権能には、死の力もある…ま、私は死ねないし、あんまり使いたくないんだけどね。」
ミオラが鎌を振るう。それをルーサスが剣で受け止めた。
途端、剣がボロボロになって消えた。
「それに触れると朽ち果てる、というわけですか。なら、当たらなければいいだけの話。」
ルーサスが人差し指で頭をトントンと叩くと、領域のようなものが現れる。0101…という文字が無数に飛び交うその領域は、知の権能によるものだ。
ミオラが鎌を振るうが、高速で移動するルーサスはそれを全て避けた。
そして、アセンションギアにベヒモスのコインを投入する。
ルーサスが地面を叩くと、ミオラの体が重くなった。
「ベヒモスの重力操作で動きを鈍らせ、麒麟の高速移動で畳み掛ける…通常の相手なら、もうとっくに死んでいるはずなんですけどね。」
ルーサスが何度攻撃しても、ミオラは一向に息絶える気配がない。
「三頭一鼎の力なら、権能を分離できると思いましたが…ベヒモスだけでは足りない、と。」
ルーサスはそう言った。三頭一鼎…ユダヤの伝承にある、ベヒモス、レヴィアタン、ジズのことだ。
「なら、拘束する方向に変えましょうか。」
そう言ってルーサスはスカラベのコインを投入した。
分身したルーサスは、ヒュドラの蛇を無数に出現させる。
「気持ち悪いわ!」
ミオラは鎌を振るって分身を消していく。だが、数が多く、あっという間に蛇に拘束されてしまった。
「この都市が壊れる様を、指を咥えて見ていてください。
その後は、避難したという人々を消し去りますか。」
ルーサスが地面を叩こうとする。地面に拳が当たる直接、黄金の斬撃が飛んできた。
「やめろ…ゼクス! この都市は、俺たちが守る!」
斬撃が飛んできた方には、エクリブリアムを握りしめた天城遥斗が立っていた。
その横には、一条煌も立っている。
「このタイミングでお出ましですか。貴方たちの役目は、もう終わりました。」
ルーサスは知の権能によって攻撃が来ることを察知していたため、斬撃を躱していた。
「役目…? お前たちが何を企んでいるかは分からないけど、僕たちは、与えられた役目のために戦うんじゃない!」
一条煌がそう叫ぶ。手にはディバイドギアが握られていた。
「ああ。俺たちが戦う理由は、俺たちで決める! いくぞ、煌!」
遥斗がそう言うと、エクリブリアムに4枚のコインがはまった。朱雀のコインも光を取り戻している。
煌は、ディバイドギアにフェニックスコインをセットする。
天秤が右に傾き、深呼吸。釣り合うとフェニックスのオーラを纏った。
遥斗も黄金の龍のオーラを纏う。
リループ・ゴセイとフェイトが並び立った。
「貴方たちじゃ、私には勝てません。」
ルーサスは再び蛇で剣を作り出した。
「確かに、あの時はお前に負けた。でも今は、1人じゃない!」
リループ・ゴセイがそう言う。
フェイトは、彼を見て頷いた。
「僕たちが、笑顔を守る!」
ルーサスはそれを聞くとフッと笑う。
「あの時と違って、今日の私は本気です。知の権能がある以上、貴方たちに勝ち目はない。」
ルーサスが高速で移動する。
「知の権能の対処法ならある!」
ルーサスがリループ・ゴセイに剣を突き刺そうとした瞬間、リループ・ゴセイの纏っている黄金のオーラが実体化し、黄龍となった。
黄龍がルーサスを弾き飛ばそうとした時、ルーサスが高速移動で避ける。
「何も考えなければ、お前は俺らの動きを読めない!」
リループ・ゴセイは、何も考えていなかった。
「そんな馬鹿な…さすがに、神獣の思考は読めませんね…
だが、その状態でまともに戦えるわけがありません。」
ルーサスは、余裕な態度を崩さない。
「何も考えない…やってみよう!」
フェイトは体に力を込める。すると、フェニックスの影が現れた。
「貴方の思考は丸見えです…」
ルーサスは迫るフェニックスを躱すと、フェイトを追い越してリループ・ゴセイへ迫る。
「戦いは、神獣に任せた!」
リループ・ゴセイがエクリブリアムを天へ掲げると、エクリブリアムにはまった4枚のコインが光り出す。
すると、朱雀、玄武、青龍、白虎の影が出現する。
「神獣の力を解放するとは…でも、貴方自身は神獣の力を使えなくなるはずです!」
四聖獣と黄龍を掻い潜り、高速で移動するルーサスはリループを捉えた。
アセンションギアにキマイラのコインを投入し、右手にライオンの頭を纏う。
「さて、ジ・エンドです。」
ルーサスはリループ・ゴセイに向かって炎を放つ。
「遥斗、危ない!」
フェイトがリループ・ゴセイを庇った。フェイトは炎に包まれる。
「ぐあああああ!」
フェイトに攻撃が直撃し、苦しむ。
「絶対に、笑顔を守る!」
フェイトはそう強く叫んだ。その時だ。
朱雀の影がフェイトを包んだ。
『我に身を委ねよ。』
フェイトを纏っていた炎が、全て消えた。
「炎を、呑み込むとは…」
ルーサスが驚いた。
「行くぞ、朱雀!」
フェイトは叫ぶと、炎で剣を作り出してルーサスへ挑む。
ルーサスは自身の剣でそれを弾くが、フェイトは左手でもう1本剣を作り出し、攻撃する。
「なっ、思考と行動が一致しない!?」
ルーサスは驚いた。彼は知の権能により、確かに行動が分かっていた。
だが、フェイトはそれとは違う行動をしたのだ。
「煌、すごい…」
リループ・ゴセイが言葉を漏らす。
「俺にも分からない。体が勝手に…!」
フェイトは、驚いている。
「なるほど、朱雀が手を貸しているのですね。…実に厄介だ。」
ルーサスはそう言うと、体に力を込める。ペガサスの影が出現した。
「黄龍! あれ、俺もできないか!」
リループ・ゴセイはそう言った。フェイトのように、神獣に身を委ねれば、ルーサスに勝てるかもしれない。
『うむ。我に呑まれぬよう、強く意志を持て。』
実体化した黄龍が、リループ・ゴセイを包むと再びオーラとなった。
「ちっ、消えてもらいますよ!」
ルーサスは更に体に力を込める。麒麟、ヒュドラ、ベヒモス、スカラベ、キマイラの影も出現した。
「僕たちがこの地を守るんだ!」
フェイトとリループ・ゴセイを包んでいる影が濃くなる。
2人に、ルーサスの召喚した6匹の神獣の影が立ちはだかる。
神獣の影が彼らに迫る時、2人の前に新たに3体の神獣の影が現れた。
『こやつらは我らが抑える。行け、戦士たちよ!』
玄武、青龍、白虎の影が迎え撃ったのだ。
その間を、2人の戦士は駆けて行く。
「この都市を!」
リループ・ゴセイが叫ぶ。
「笑顔を!」
フェイトも叫ぶ。
「「守り抜く!」」
炎の剣と、エクリブリアム。
2つがルーサスへ命中した。
「馬鹿なっ!! この私が…!」
ルーサスは6体もの神獣の影を召喚したことで疲弊しており、避ける体力が残っていなかった。
2人の攻撃を食らったルーサスは吹っ飛ぶ。
神獣の影が消え、纏っているオーラも消えた。
ゴトン、と真っ二つに割れたアセンションギアが地面へ落ちる。
「これ程とは…だが、もはや計画は止められない…!」
床に這いつくばったゼクスは、腕を伸ばして2枚のコインを掴み取った。
麒麟と、ペガサス。それらを掴むと、黒いモヤに包まれて消えた。逃げたのだ。
「守り、抜いたんだ…」
遥斗と煌、2人も倒れ込んだ。
「神獣の力と融合するなんて、無茶するから。」
ミオラが、2人に手をかざした。2人の体力が戻っていく。
「あー生き返るー! ……やったな、煌!」
復活した遥斗は、煌に笑いかける。
「ああ。守り抜けた…」
煌はレヴィアタンのコインを握りしめる。
「僕、これからもこの地を守っていくよ。」
煌は決意を新たにする。
「後は、テューポーンのコインだな。」
目の前の脅威、ゼクスは去った。
後に来る脅威…テューポーン怪人の誕生を阻止して、新たな未来を掴む。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍、白虎、ナハシュ、ジズ
一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス
ゼクス…ペガサス、麒麟




