24.衝突:正義
街の外れで、晴れ渡った空の元、2人の戦士が睨み合っている。
リループとフェイト。かつては味方として並んで戦った戦士だ。
「お前の正義は、どこに行った!」
リループはそう叫ぶと、高速で移動した。
「正義は、僕の元にある。僕が正義だ!」
フェイトはそう返した。そして天へと水を噴射する。
以前ゼクスとの戦いで見せた、水滴で位置を特定する手法だ。
「そこだ!」
迫るリループの位置に気づいたフェイトは、その位置に水の槍を構える。
リループは咄嗟にエクリブリアムを身体の前に置き、盾にした。
槍と剣がぶつかり合う。
「今のお前は、これまでとは違う! 三上の駒になっていいのか!」
リループはそう言った。もしセイヴァーと継裔会の対立が仕組まれたことなのだったら、倒すべきは三上だ。
「僕は神裔を1人残らず倒す!それが司令官としての務めだ!」
違う…リループはそう感じた。彼の知るセイヴァーの司令官は、人間と神裔が手を取りあって生きることを望んでいた。
自らを犠牲にしてまでも、平和な未来のために同族と戦った。
人の心の正義を信じ、それを守るために散っていった。
今の煌は、正義を盾にしているだけだ。こうなってしまったのは、聖也の消滅が影響しているのかもしれない。
「神裔を、怪人を倒すことが正義だ。僕は、正しいことをしている。仲間を倒した僕への言いがかりはやめてもらおうか!」
フェイトはそう言うと、水の槍をもう1本作り空いている左手で持つ。
それを突き刺そうとした時、リループが瞬時に移動した。
「…復讐は、もう辞めにした。俺はただ、みんなの笑顔を守りたいだけだ!」
リループは叫ぶ。和成が死に、怒りはあるけど、復讐に呑まれてはいけない。
ただ、和成の使命を、地下都市を守り抜くという使命を引き継ぐ。
復讐は、何も生まない。このことをリループは痛いほど知っている。
「笑顔? 僕がジズコインを手にしてヒーローになれば、みんなも笑顔になるはずだ!」
フェイトはそう言うと、体に力を込める。巨大な水の龍の影が現れた。
それを見たリループは感じる。今の彼に正義の心は微塵もない、と。
かつてのフェイトは、正義と闇の間で迷い、神獣の影を扱えなかった。その後、正義に目覚めて扱えるようになった。
今の彼がそれを扱えるということは、もはや迷いなんてものはないということだ。
「…俺が間違ってた。お前にも正義の心があるって、信じていたよ。」
リループが体に力を込めると、狼の影が出現する。それと同時に、右手には牙のようなものが出現した。
水龍と狼がぶつかり合う。その瞬間、リループが高速でフェイトに迫った。
「聖也さんに託された正義を、その役割を俺が引き継ぐ!」
リループはそう言うと、右手から生えた牙でフェイトに攻撃する。
完全に突き刺せる場面だが、それをあえてずらした。
彼の狙いは…フェイトの持つ、フェニックスコイン。
「お前を正義に、引き連れる。そうして初めて、お前は戦士になれる!」
リループは、ギアにフェニックスコインをセットした。
赤く燃える不死鳥のオーラが纏わりつく。
「戦士…フェイトだと!?」
コインを取られたフェイトは驚く。不死鳥の力を纏って戦うその戦士は、まるでフェイトそのものだ。
「違う。俺はリループだ! 2人の英雄の遺志を継ぎ、世界に笑顔を取り戻す伝説の戦士、リループだ!」
フェニックスのオーラを纏ったリループがそう言うと、不死鳥の影が出現する。
咄嗟にフェイトはレヴィアタンの影を前に出すが、その直後、影が消えた。
フェニックスの影はフェイトにぶつかり、フェイトの全身が燃える。
「一緒に正義の道を歩もう、煌!」
リループが手をかざし、掴んだ。するとフェイトの周りの炎が爆発する。
フェイトを包むレヴィアタンのオーラは消え、煌はその場に倒れ込む。
「くっ…なんで…」
煌はそう言った。そこに、ギアからコインを外した遥斗が手を伸ばす。
「人間と神裔は、手を取り合える。それを引き裂いたのは、三上だ。
俺たちは、共に戦おう。みんなが笑顔で生きられる世界を作るために。」
先程の戦いの最後、フェイトの召喚したレヴィアタンの影が消えた。それは、煌に迷いが生まれ始めている証拠だった。
「…僕の正義は、間違っていたのか?」
煌はそう問いかける。遥斗の答えは決まっていた。
「間違っていたわけじゃないさ。だが、立場を変えれば、正義もまた反転する。
だから手を取りあって、みんなが幸せになれる真の正義を目指すんだ。」
そう言って笑う遥斗の顔が、煌には眩しく見えた。かつての煌の憧れ…飛翔聖也の面影が、今の遥斗には確かにある。
「…ああ。僕は、お前と共に戦うよ。」
煌は、遥斗の手を取った。怪人を倒すことよりも、認められることよりも、何よりも大事なものを今、手に入れた。
「俺は天城遥斗。遥斗って呼んでくれ。これからは仲間として、世界を守ろう。」
遥斗はそう言った。
もしかしたら、煌には元々正義なんてものは持ち合わせていなかったのかもしれない。
彼を正義に駆り立てたのは、飛翔聖也という存在そのものだった。
彼がいない今、その役割を、遥斗が果たしたのだった。
一方、継裔会の基地の前。
「おや? 力の権能とはこの程度ですか?」
余裕な態度でゼクス…戦士ルーサスは、そう言った。その前には、ボロボロになりながらも立つ、ヴァルガの姿が。
「この先には行かせない…地下都市は、俺が守る!」
ヴァルガは覚悟の籠った声でそう言った。ルーサスはそれに対して笑う。
「かつての貴方と同じような、力無き弱者を守るとは、随分偉くなりましたね。
リループの伝説のせいで失望された無力な貴方が、力の権能を手に入れた途端これですか。」
ヴァルガはそれに対して激昂した。
「黙れ! 俺は、この力で弱者の踏みにじられない世界を作る!!
そのためにもこの地を守り抜く!」
それを聞いたルーサスは、呆れた表情を見せる。
「はぁ、結局他者、ですか…
そんなものに囚われてちゃ、進化はできませんよ。」
ヴァルガは、それに対して答えた。
「進化など必要ない! 世界を支配し、導く。その理想が、俺に力の権能を与えたんだ!」
ヴァルガは自分のコインを握ると、そのコインが紫に光る。力の権能による怪人化を、自分にも使おうとしていた。
「愚かですね。私たち権能の所有者は、代償なくコインの力を扱えるというのに。
そんなに死に急いでいるなら、すぐに楽にして差し上げましょう。」
その瞬間、ヴァルガの前に立っていたルーサスが即座に背後に移動した。
彼の手には、ヒュドラコインで作り出した剣が。
ドサッ
直後、ヴァルガが倒れた。ルーサスによる一撃を食らったのだ。
ヴァルガはコインを落とすが、肉体は消滅はしなかった。力の権能を使う前に決着がついていた。
「全く…他者とは、導くものではなく見下すものだ。貴方には、支配者に相応しい器がありません。」
ヴァルガを倒し、ベヒモスコインを拾い上げると、ゼクスは地下都市へと足を踏み入れた。
ヴァルガが命を落としたことで、もう新たな怪人は生まれない。ミオラもコインを失った今、地下都市にはもはや戦力がなかった。
ゼクスの顔は、狂気の笑顔に満ち溢れている。
「神裔を皆殺しにし、彼のために神の力を集めるとしましょう。」
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍、白虎、ナハシュ、ジズ
一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス
ゼクス…ペガサス、グリフォン、キマイラ、麒麟、ヒュドラ、ベヒモス




