23.粛清:正偽
「眩しっ! 地上に出るのは久しぶりだ! 太陽ってこんな暖かかったっけな!」
継裔会のメンバー、司堂和成は地上の街ではしゃいでいる。
「たまには来てもいいんじゃないか?」
和成と一緒にいる天城遥斗はそう言った。
2人は、セイヴァーと交渉するために地上に出ていた。
「…ほら俺、地下都市を守らないといけないし。でも、無事にゼクスを倒したら、遊びに行ってもいいかもな!」
和成はそう返した。彼は、遥斗の父親から受け継いだ使命を背負っているようだった。
「そうだな。その時には、俺の行きつけのカレー屋を紹介してやる。」
遥斗は、和成の気持ちを察したかのようにそう言った。
全部終わった時、真の意味で人間と神裔の間の壁が無くなるといい。そう遥斗は感じていたのだ。
セイヴァーと継裔会が協力するのは、そのための第1歩になる。その気持ちを胸に、セイヴァーへと赴くのだった。
セイヴァー本部 エントランス。
遥斗と和成が受付に行こうとした時、一条煌が現れた。
煌は何やら焦っている様子で外に出ようとする。
「煌! 待ってくれ!」
遥斗は煌に気づき、そう言った。煌が振り向く。
「お前は…あの時の!」
そう言うと、遥斗たちの元へ近づいてきた。
「お前は継裔会なのか!?ジズコインはどこにある!」
煌はそう言った。彼は連日、継裔会の手がかりを探すために外に出ていたのだ。
「落ち着いてくれ、煌。今日は、お願いがあってきた。」
遥斗が頭を下げる。和成も一緒に頭を下げた。
煌は一瞬困惑したが、すぐに受け入れた。
「…とりあえず、司令室まで来い。話くらいは聞いてやる。」
そう言うと3人は、司令室へと向かった。
セイヴァー本部 司令室。
絵画とモニターが並ぶ部屋で、煌と遥斗、和成が対面している。
「俺たちは、継裔会だ。単刀直入に言う。俺たちと一緒に、ゼクスと戦って欲しい。」
和成がそう言った。煌は、少し考えた後にこう返す。
「…仲間割れか。セイヴァーは正義の組織だ。お前らに味方する気はない!」
煌はそう言うと、ディバイドギアを取り出す。それを遥斗が宥めた。
「落ち着いて聞いてくれ! …継裔会は、煌が思ってるほど悪の組織じゃない。…少なくとも、今は。
彼らの大部分は戦いとは無縁で、地下にある都市で平和に暮らしているんだ。
その平和を、ゼクスが脅かそうとしている。だから、一緒に守って欲しい。」
遥斗は、冷静に説明する。だが煌は、それにふっと笑う。
「何言ってんだ。継裔会は犯罪者集団だ。5年前に多大な数の犯罪形跡がある。
最近はあまりないが、それも時間の問題だ。既に僕は、やつらが怪人になる様を見ている。」
煌はそう言った。それに和成が反論する。
「待ってくれ! 5年前の犯罪は、全て当時の支配者…三上蒼一の指示だ。
逆らえば死ぬ。だから仕方なかったんだ。
それからは平和に暮らしていた。お前らがディバイドシステムとかいう兵器で都市を破壊しようとするまでは、地上に出る計画すら立っていなかった。」
和成は必死にそう言う。
「三上蒼一だと? バレる嘘はつかない方がいい。…それに、僕は地下都市の存在を今知った。破壊しようとするわけが無い。」
煌は笑いながらそう返した。和成が反発する。
「なっ…ではなぜ、ディバイドシステムなんて作った! もし破壊する気がないなら、そんなもの必要ない!」
それを聞いた煌も、声を大きくする。
「お前たちが世界を支配しようとするからだろ! このシステムは、支配者になろうとするお前たちから人類を守る、正義のシステムだ!」
遥斗は、何かに引っかかる。継裔会に潜入したが、支配を目論む様子はヴァルガとゼクスからしか見受けられなかった。
幹部たちが個人的に計画を進めていることも分かっている。
なら、神裔が世界を支配することは継裔会全体の意思ではない。だがセイヴァー側は、継裔会全体がそうだと思っている。
そしてディバイドシステムは、街を守るために作られたはず。だが継裔会側は、地下都市を壊すためのシステムだと感じている。
両者の認識の差が一体何なのか。セイヴァーと継裔会、どちらにも干渉できる人物は…
「…三上蒼一。セイヴァーも、継裔会も、あいつに騙されているのでは?」
遥斗は、ある結論に辿り着いた。そもそもこの両者の戦い自体、仕組まれていたのではないかと。
一体なぜか…それは分からないが、これまでの情報から、そう推測できる。
「ふっ…なんで三上さんが僕を騙すんだ。
まあだが、ゼクスはセイヴァーにとっても敵だ。あいつを倒すまでは協力してやってもいい。
ただし、条件がある。」
三上に騙されてるとは思えない。そう煌は感じていた。
だがゼクスが危険であることは、セイヴァーも認識している。手を組めば、確実に1人倒せると考えれば、組むのも悪くはない。
「ジズコインを、渡してくれ。そしたら協力してやる。」
ジズコイン。それを手にすれば、煌は世間に認められたヒーローになれる。
だが、それに対して和成が言う。
「…それは無理だ。悪いが、絶対に渡せない。」
和成は強くそう言った。遥斗は少し戸惑う。
「渡してやってもいいんじゃないか?」
遥斗は和成に言った。だか、和成は答える。
「ジズコインはここにある。でも、これを手放すと俺は…」
そう言った時だった。一条煌が立ち上がる。
「交渉決裂だな。表に出ろ。お前らを倒して、そのコインを貰う。」
喉から手が出るほど欲しかったジズコインが目の前にある。煌にとって、戦わない以外の選択肢は無かった。
「いいだろう。俺たちが勝てばディバイドギアを貰おうか。戦力になる。」
和成は乗り気で立ち上がった。最初から戦う気でいたようだ。
睨み合う両者と、戸惑う遥斗。もはや話し合いなど意味がなかった。
街の外れで、煌と和成が向き合っている。
煌はディバイドギアにフェニックスのコインをはめると、戦士フェイトとなった。
「俺は、あの人が守った都市を守るんだ…!」
和成がジズコインを握りしめると、怪人へと変貌した。胸に鳥の顔があり、腕と羽が一体化している。ジズ怪人だ。
「怪人になっていたから、コインを渡せなかったのか…」
ヴァルガの力の権能は、他者を怪人にする力がある。だが怪人となった者は、コインを手放すと消滅してしまう。
和成はヴァルガに頼んで、ジズコインを貰い怪人となっていたのだった。
フェイトが背中の炎の翼を広げ、飛び上がる。ジズ怪人も、両手を広げると飛び上がった。
ジズ怪人が翼を広げると、昼間なのに夜のように暗くなる。そしてたちまち、嵐が起こった。
その暗闇の中で明るく燃えるはフェイト。フェイトは炎の剣を右手に持ち、ジズ怪人へと迫る。
「うおおおおお!!!」
ジズ怪人が叫ぶ。すると、衝撃波が起こった。いわゆるソニックブームだ。フェイトはそれをくらい、前に進めない。
「2人とも、戦うのをやめろ!」
遥斗は2人の戦いを見てられなかった。かつての仲間と、今の仲間。どちらも胸に抱える正義は同じなのに、なぜ戦わなければならないのか。
遥斗はエクリブリアムを天に掲げ、リループ・ゴセイとなる。
朱雀の力で羽を広げ、空へと飛ぶ。フェイトとジズ怪人の間に行った。
「まずはお前からやってやる!」
フェイトがリループ・ゴセイに迫る。炎の剣とエクリブリアムがぶつかりあった。
その時だ。エクリブリアムにセットされてる、朱雀のコインが輝きを失った。
たちまちリループ・ゴセイの背中の羽が消えると、リループ・ゴセイは地面へと落ちる。
もはや黄龍の力すら維持できなくなり、纏っていたオーラが消えた。
「!? なんで…」
急な出来事に、困惑する遥斗。朱雀の試練は、煌との絆の証だ。だが今の遥斗と煌の間に、絆などなかった。
「貰った!!!」
フェイトは炎の剣を持ち、空中から地面の遥斗に向かって勢いよく移動する。遥斗を貫こうという算段だ。
グサッ
生々しい、残酷な音が響いた。
フェイトの攻撃が遥斗に命中した…かに思えたが、遥斗とフェイトの間には、ジズ怪人が。
和成が、咄嗟に遥斗を庇ったのだ。
「天城さん…俺、強くなれたかな…」
ジズ怪人はそう呟いた。直後、ジズ怪人が消滅した。
残ったコインだけが、ポトッと地面に落ちる。それを遥斗は握りしめた。
嵐が止み、空が明るく、晴れ渡る。
「…なぜ、殺した。」
遥斗はフェイトを睨み、そう言った。脳裏には、和成の笑顔がちらつく。
地上ではしゃぎ、カレー屋を紹介すると約束した。孤独な潜入先で出来た、初めての仲間だった。
煌は、高らかに笑う。
「これは正義だ! 怪人を倒して何が悪い! 次は、お前の番だ!」
煌はディバイドギアからフェニックスコインを外すと、レヴィアタンのコインをセットした。
以前遥斗が煌に渡した、和成のコインだ。
「…お前に、もう正義なんてない!」
遥斗はそう叫ぶ。怒りを隠しきれない。
ディバイドギアを取り出し、フェンリルのコインをセット。戦士リループとなった。
リループとフェイトが、睨み合う。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍、白虎、ナハシュ、ジズ
一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス
ゼクス…ペガサス、グリフォン、キマイラ、麒麟、ヒュドラ




