22.対抗:ゴズコイン
「なんなんだ! あいつは一体!」
セイヴァーの司令室にて、一条煌は机を叩く。
「継裔会にあんな力があるなんて聞いてないぞ!」
そこに、ドクター霧島が笑いながら言う。
「ただのテロリスト相手に、なぜ三上先生はこんな組織を作って、私にディバイドギアを作らせたのか…
こんな力を持っていたのなら納得だね。」
霧島は、さらに続ける。
「彼らは、5年間もこのパワーを隠していたのか…? それとも、最近手に入れたものか? 実に興味深い。」
煌は、そんな霧島に怒りをぶつけた。
「大体、このディバイドシステムが弱いから僕は負けたんだ! もっと強くできないんですか!」
笑顔でパソコンをカタカタする霧島、見当違いな怒りを見せる煌。
正義を失ったセイヴァーの空気は、最悪であった。
継裔会の地下都市。
天城遥斗、ミオラ、司堂和成の3人が集まっていた。
「結局彰吾くんは見つけられなかった…2人も、見つけたら教えて欲しい。」
遥斗は彰吾を探していたが、ミオラからの招集を受けて一度そちらに向かったのだ。
テューポーン怪人の誕生までは、まだ時間があるはず。目先の問題...地下都市をゼクスから守ることも、並行して行う必要がある。
「分かった。地下都市を守るために、今必要なのは戦力だ。ミオラさんがコインを失った今、ゴズコインの力を全て扱えるのは遥斗と…ヴァルガさんだけだ。
あの人の力の権能を使えば、みんなも戦える。」
和成はそう言った。手には力が籠っている。
「だーめ。あの力は危険なものよ。最悪死んじゃうんだから。
それに、あんたも今コインを持っていないじゃない。」
ミオラはそう返した。ヴァルガによって怪人になった者は、コインを失うと消滅する…以前、霧島に起きた悲劇を遥斗は思い出した。
「ここを守るためなら命を投げ出す覚悟はできてる。コインを見つけないとな…一体どこに行ったんだ、レヴィアタン。」
和成はそう言うと持っていたバッグを漁り出した。コインを探すかのように。
「レヴィアタン、だって…?」
遥斗はそれを聞いて衝撃を受けた。レヴィアタン…遥斗が初めてリループになった時に倒した怪人だ。
だが、同時に納得がいく。
あの怪人は、セイヴァーを壊そうとしていた。この都市を守るための行動だとすれば、中身が和成でも違和感がない。
遥斗は知らず知らずのうちに、和成を手にかけていたのだ。
タイムリープによって遥斗がレヴィアタンコインを引き継いだことで、彼が怪人になる運命も変わったというわけか。
立場が変われば正義もまた、違って見える。
あの日、ディバイドギアが完成したことで、都市を守るために怪人は戦っていたのだとすれば。
あの侵攻は、誰が起こしたことなのだろう。
「とにかく、戦力のためにも、ヴァルガさんもここに呼ぼう。」
和成はそう言った。ミオラはしょうがないなーとヴァルガに連絡をする。
「…もう1つ、戦力になりうる人がいるかもしれない」
遥斗は、そう言った。ここが平和な都市だとすれば、きっと正義感のあるあの男も手伝ってくれるだろう。
「煌…一条煌だ。彼もまたディバイドギアを使う戦士だから、ここを守れるはず。」
遥斗の知る煌は、正義に溢れた人間だ。一度は闇に飲まれたが、最後は正義が打ち勝った。
それから試練を通して絆を結び、最高の相棒とまで呼べる存在となっている。
「そいつって、セイヴァーの戦士だろ? 継裔会に味方はしないだろうな。」
和成はそう言った。セイヴァーを完全に敵視している。
「でも、話してみる価値はあると思う。俺が後で交渉に行くよ。」
遥斗は、煌を味方にしようと決めた。和成もそれに着いていきたいみたいだ。
そこに、ヴァルガがやって来る。
「ゼクスが裏切ったとは、本当か?」
ヴァルガは息が荒かった。走ってやってきたのだろう。
「うん。あいつはここを壊すって言ったわ。次にいつ来るか分からないから、今のうちに戦力集めが必要なの。」
ミオラは少し怒りの入った声でそう言った。
「それで俺ってわけか。…リループとチームを組みたくはねぇが、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇな。
幸い、戦力となるコインがここにある。」
そう言ってヴァルガはコインを取り出した。巨大な怪鳥の描かれた、ジズコインだ。
「三上とやらから存在を聞いて、探してたんだが…ちょうどいいタイミングだったな。」
「「三上だって!?」」
遥斗と和成、2人のリアクションがシンクロした。
「三上…最近入ったヴァルガさんは知らないかもだけど、かつてこの都市を支配して…天城さんを殺した、最悪の男だ。」
遥斗はさらに驚く。聖也から聞いていた、真の敵である三上蒼一…彼が、自分の父親の仇だったのだ。
「その三上は今どこにいる!? 今すぐ会わせろ!」
遥斗は激昂した。父を殺した人間を許すわけにはいかない。
「落ち着けリループ。そいつが今、どこで何をしているかは分からない。今はここを守ることが先決だ。
…リループ、伝説で聞くような完璧超人ではないんだな。俺が勘違いしていたみたいだ。」
なんと、ヴァルガが遥斗を宥めた。ヴァルガは、味方として見ると意外と大人だ。
「…そうだな、今はゼクスの方が問題だ。ヴァルガ、あまり犠牲を出したくないから、力の権能は使うなよ。」
遥斗は落ち着きを取り戻しつつ、ヴァルガに釘を刺す。
「当たり前だ。この力は手に入れたばかりのもの。...まさか、怪人がやられると跡形もなく消えるとは、思わなかった。」
ヴァルガはそう言った。最近手に入れた力…以前、侵攻の日にグリフォン怪人とキマイラ怪人を怪人化させた時初めて、その危険性を知ったのかもしれない。
「とりあえず、住民には万が一に備えるように警告と避難経路の用意だ。それと…彰吾くんを見つけたら、捕まえといてくれ。」
そう言うと、一度解散となった。遥斗は彰吾の捜索に、ミオラは避難経路の用意に取り掛かる。
「ヴァルガさん…願いを、聞いて欲しい。」
和成はヴァルガに、あることを告げるのだった。
一方、山宮陽介の家に、東彰吾は戻ってきていた。
「師匠、この力ってそんなに危険なのでしょうか?
遥斗さんがあんなに必死なら、渡した方がいいのかも…」
彰吾はそう陽介に言う。もし遥斗の言うように世界が終わるかもしれないなら、自分が持っておく理由はない。
最初は逃げていたが、次第にそう思うようになっていた。
「それはだめだよ少年。君なら、きっとテューポーンの力を使いこなせるさ。だから心配することはない。」
陽介は笑顔でそう言う。だが、彰吾の迷いは晴れない。
「僕、怖くなってきたんです。僕はこの都市が大好きだから、壊したくない。」
彰吾は、子供だ。自分は特別だと思い込んでいたが、遥斗の話を聞いて怖がるのも無理はない。
「…大丈夫さ。そのコインは、悪魔の力じゃないんだから。君を毒から守ってくれてるんだよ。
もし君が、そのコインを手放すと、君の命は尽きてしまう。」
陽介は彰吾に告白した。彰吾の体は、毒に犯されている。それをテューポーンの加護が守っていると言うのだ。
「僕が、毒に…?」
彰吾は、驚いた。自分がそんな状態にあることは知らない。陽介がなぜそれを知っているのかも、分からなかった。
「そのコインは、君の命そのものだと思ってくれ。全力で死守する必要がある。
君が闇に飲まれないよう、俺が全力で君を強くしてやる。だから安心してくれよ、少年。」
そう言った陽介の顔は、罪悪感に満ちていた。
【所持コインリスト】
天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍、白虎、ナハシュ
一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス
ゼクス…ペガサス、グリフォン、キマイラ、麒麟、ヒュドラ




