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21.超越:神と悪魔

「ゼクス…なぜこの都市を破壊しようとする! 破壊には興味がなかったんじゃないのか!」


 リループ・ゴセイはルーサスと剣を交えながら、そう言った。

 2人は秘密基地から出て、外で戦っている。


「破壊には、確かに興味がありません。ですが、私が戦うことに意味があるのです。」


 ルーサスは高速で移動すると、後ろからリループ・ゴセイに剣を突き刺そうとする。


 カキーン


 突如リループ・ゴセイの体が固くなり、剣を弾いた。白虎びゃっこの持つ金の力だ。


「どういうことだ? むしろお前がそれで戦い続けると、お前は世界から消えてしまうぞ。」


 かつての聖也せいやのように。それこそが、アセンションギアの代償であり、悲劇の始まりだ。


 リループ・ゴセイは炎の翼を広げ、飛び立った。

 ルーサスも翼を広げて飛ぶ。


「消える…ほう、そんなことまで知っているとは。やはり失われた時の権能の1部は、貴方にあるようですね。」


 ルーサスは自身の体に雷を纏うと、空中を高速で移動した。

 まさに電光石火。自在に空を駆け回る姿は、本物のペガサスのようだ。


「時の権能が、俺に…?」


 リループ・ゴセイは一瞬驚く。その一瞬で、ゼクスは瞬時に攻撃を仕掛けた。

 咄嗟にリループ・ゴセイは水の壁を展開。だが、水は雷をよく通す。

 リループ・ゴセイは攻撃を食らってしまい、地面へと落ちた。


「アセンションギアを使うと存在が消える。それは決して代償ではありません。

 神になるためのプロセスなのです! だから、私は戦う必要がある。」


 ルーサスはそう言うと、体に力を込める。

 地面にペガサスの影が現れ、リループ・ゴセイを蹴りつける。

 リループ・ゴセイは空中へ飛ばされた。


「怪人と戦うことで、先生の悲願も果たされる。

 なら、怪人を呼び出すためにも都市の破壊は最高のスパイスになるでしょう。」


 ルーサスは翼を広げ、天から蹴りを放つ。

 リループ・ゴセイはその蹴りをもろに受けた。咄嗟に金の力で体を守ったため致命傷は避けたが、エクリブリアムを落としてしまう。


「これが、アセンションギアと麒麟きりんの力。知の権能を使うまでもありませんね。」


 そう言うとルーサスは、ギアからコインを抜いた。


「あなたに今死なれると困ります。せいぜい、生き長らえてくださいね。では、私はこれで。」


 ゼクスはそう言うと、すぐに帰っていった。今すぐ都市を破壊する訳ではないらしい。


 遥斗はるとは、自分の無力さを感じた。以前は3人がかりでやっとゼクスを倒せたが、今の遥斗は1人で戦わなければならない。

 それに、ゼクスはアセンションギアを持って以前より強くなっているのだ。


 傷だらけで倒れる遥斗の元に、ミオラがやってきた。


「遥斗くん!? 大丈夫? …ありがとね、都市のために。」


 ミオラは遥斗の手を取ると、遥斗の体が徐々に回復して行った。


「ゼクスは、地下都市を狙っている。今の俺たちにできることは、そこを守ることだ。」


 遥斗は、そう強く決めた。父が守った都市を、次は自分が守る。


「うん。ヴァルガや都市のみんなにも、このことは伝えるよ。…絶対、守り切ろうね。」


 ミオラはそう言った。長い地獄の中で、唯一掴んだ幸せな居場所を、手離したくない。




 一方、フェイトvsヴァルガ。こちらの勝負は、一瞬だった。

 フェイトは、初めて戦士として怪人と戦ったため、コインの使い分けが一切出来ていない。

 以前のような余裕もなく、ただ目先のコインのために突っ走るも、ことごとくヴァルガに完封された。


 ヴァルガはジズのコインを手に取ると、こうに言う。


「貴様は弱い。戦士として戦うつもりなら、もっと強くなれ!」


 ヴァルガは煌を殺すでもなく、そう言うと去っていった。




 怪しげな暗い部屋で、ゼクスは三上に言う。


「アセンションギア。やはりこれは素晴らしい。私も、すぐに神になりたいものです。」


 ゼクスは満足げに笑う。


「まあ待て、ゼクス。私が神を降臨させ、殺す。そしたら君が、新たな神になるといい。」


 三上は、ゼクスにそう告げる。


「ええ、分かっています。そのためにあなたは、わざわざセイヴァーを作りましたからね。

 私も怪人どもを倒し、貴方に貢献するとしましょう。」


 ゼクスは当たり前のようにそう言った。2人の計画は、もはや最終段階に進んでいた。


「4回も同じ時を過ごすと言うのは、少々退屈だな。だが、これでようやく終わりだ。

 懸念点があるとすれば…テューポーンだな。

 やつの出現だけは、私にとってもイレギュラーだよ。以前は世界を終わらせることに貢献してもらったが。」


 三上は、そう言う。

 テューポーンのことは天城遥斗に任せよう。そう考えていた。




「あれ、遥斗さん! ここに住んでるんですか?」


 遥斗は自分のアパートの敷地で、東彰吾あずましょうごと出会った。10歳ぐらいの少年だ。


「ああ、そうだよ。彰吾くんは、どうしてここに?」


 遥斗は意外な人物と出会って、内心驚いた。


「知り合いの部屋に行くんです。僕のコインは強大なものだから、その力に飲み込まれないよう鍛えてるんですよ!」


 彰吾は得意げに言った。遥斗は、一応聞いておく。


「そのコインって、一体なんのコインなんだ?」


 彰吾は、さらに得意げな顔をして、コインを掲げた。


「なんと! 最強の怪物、テューポーンです! それに選ばれるなんて、僕って特別なのかな?」


 遥斗は、唖然とした。目の前にいる少年が、最悪の終末をもたらしたコインを持っている。


「…そのコイン、すぐに渡してくれ! それは危険だ! 世界を滅ぼすことになる!」


 遥斗は、必死にそう言った。だが、彰吾は少し不機嫌になる。


「大丈夫ですよ、今師匠の元で修行してますから!

 大体、入ったばかりのあなたより、僕が持ってる方が安全です!」


 そう言うと彰吾は逃げていった。だが、遥斗は逃がす訳にはいかないと追いかける。


 そして、ある部屋の前についた。彰吾はインターホンを鳴らす。


 遥斗も追いついたが、ちょうどドアから人が出てきた。


「来たか、少年! …って、遥斗くん? どうしたんだい?」


 ドアから出てきた人物…山宮陽介やまみやようすけは、2人を招き入れた。




「このコインは、確かに危険だ。でも、少年は俺の元で修行しているから大丈夫さ。」


 陽介はそう言った。でも、遥斗も引き下がれない。


「実は、俺は未来を見たんです。そこでは、テューポーン怪人が暴れてて…世界が終わりました。」


 それを聞いて、陽介は笑った。


「はっはっは。未来なんて、急に変な冗談言うね。

 それに君がリループの力を持ってるなら、もしそんな未来が来ても大丈夫さ。」


 遥斗はキョトンとする。陽介の言葉が何を指すか、理解できていない。


「30年前、君のお父さんはリループとなって神を追い返したんだ。そして君のお母さんを助け出した。

 神を追い返すほどの力があれば、テューポーンなんて怖くないさ!」


 陽介はそう言う。30年前に父がリループだったことはこれまで何度か聞いたが…母を助けたというのは初耳だ。


「母ちゃんを助けた!? どういうこと?」


 遥斗は驚いた。遥斗の母は結愛ゆあを産んですぐに亡くなったため、あまりよく知らない。


「まあ、その話はまた今度。それより今気になるのは、ゼクスの裏切りだ。

 この都市を守ることが、俺とあいつの約束でね。遥斗くんさえ良ければ、俺のコインを受け取ってくれないか?」


 そう言って陽介はコインを差し出した。蛇が描かれている。


「これはナハシュコインだ。何に使えるかは分からないし、そんなに強い力がある訳でもないけど、よかったら君に。」


 ナハシュ。ヘブライ語で蛇を意味する言葉だ。

 こんなものまでゴズコインになっているのか…と感じつつ受け取る。


「ありがとうございます。

 …でもテューポーンのコインを受け取るまで絶対に帰れません。渡してください!」


 遥斗はコインを受け取りつつも、そう陽介に言う。だが辺りを見回しても、彰吾がいなかった。


「あれ、少年がいないみたいだ…さては逃げたな?」


 陽介はそう言った。遥斗は慌てて外に出る。


「探してきます! もし見かけたら連絡ください!」


 そう言うと、彰吾の捜索が始まったのだった。


「…あの子は、俺が絶対に守る。あの子が生きるためには、テューポーンの加護が必要なんだよ。」


 誰もいなくなった部屋で、陽介はそう呟くのだった。





【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ、ナハシュ


一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス


ゼクス…ペガサス、グリフォン、キマイラ、麒麟きりん、ヒュドラ

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