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19.潜入:継裔会

「俺たちが世界を支配するために、破壊活動は必要なのか?」


 継裔会けいえいかいの新入り、天城遥斗あまぎはるとはそう尋ねる。


「さあ? 私はそういうのには興味ないから分かんなーい」


 ミオラはつまらなそうに答える。


「破壊活動? 俺たちはセイヴァーをぶっ潰して、腐った世界を塗り替える! これは聖戦だ!」


 ヴァルガは遥斗を睨みながらそう言った。


「私は破壊なんてする気はありませんけどね。既に、こちらの計画は動いています。」


 ゼクスは怪しい笑みでそう告げた。


「計画? ぜひとも聞かせて欲しいな。」


 遥斗はそう告げる。だが、それをヴァルガが遮った。


「お前には関係ない! それに、俺たち幹部は同じ組織にいるが、仲間ではない。互いの計画には、口出ししないのがルールだ。」


「…やけに俺に突っかかってくるな。なにか理由でもあるのか?」


 遥斗は冷静に探りをいれる。ヴァルガはその様子に怒り、拳を握りしめる。

 そこで、ミオラが割って入った。


「はーい、空気ピリピリしてるよー。

 遥斗くん、せっかく入ったんだし、みんなに挨拶してきたら?」


 ミオラは遥斗とヴァルガの間に立つと、そう言った。

 みんなとは、継裔会のメンバーだろうか。その中にテューポーン怪人となる人物がいるだろうから、ちょうどいい。


「ああ、そうするよ。ミオラ、案内してくれないか?」


 遥斗は継裔会の内情を探るため、そして3人の幹部の中で唯一分かり合えるかもしれないミオラと行動を共にすることにした。




 継裔会。その全貌は謎に包まれている。その秘密基地は、一見するとただの古い小屋だ。だが、その地下は別世界だった。


 巨大な地下都市がそこにはあった。地上となんら変わりないように見える。


「5年前に継裔会ができてから、神裔しんえいたちがいっぱいここに引越したんだー。」


 ミオラはそう言った。少し悲しそうな顔で続ける。


「みんな、今の世界で幸せに暮らせてないみたい。

 純血の神裔の伝統が、他の人との距離を置いちゃうみたいでね…」


 ミオラ曰く、この地下都市はしんという神獣の力による幻術がかかっており、周囲から認識されないらしい。


 遥斗とミオラが歩いていると、ある青い髪の少年が遥斗にぶつかった。


「うわぁっ! …ごめんなさい!」


 少年は遥斗にぶつかって転び、持っていたコインを落とした。


「大丈夫だよ、怪我は無い? …はい、これ。」


 遥斗は落ちたコインを拾って少年に渡す。少年は起き上がり、受け取った。


「ありがとうございます! …って、ミオラ様!? わざわざこんな所までどうしたんですか?」


 少年はミオラを見て驚いた。


「あっ、あずまくんじゃーん! 元気ー?

 新しく入った遥斗くんにここを案内してたんだー。」


 東と呼ばれた少年は遥斗を見てぺこりとお辞儀した。


「僕は東彰吾あずましょうごと申します。遥斗さんですね、これからよろしくお願いします!」


 そう言うと彰吾は早足に駆けて行った。用事があったみたいだ。


「…10歳くらいだろうか。あんな子までこんな所にいるんだな。」


 遥斗は、少ししんみりとする。笑顔を守るために戦ってきたけど、笑顔じゃない人たちも沢山いることに気づいた。


「あの子、小さいからって侮っちゃだめよ? とんでもないコインを持ってるんだから。」


 とんでもないコイン。もしかしたら、テューポーンのものである可能性がある。

 まさかあんな子供がテューポーン怪人にはならないだろうと思いつつ、一応記憶に留めておくことにした。


 そんな話をしながら進んでいると、ある建物に着いた。


「ここは継裔会の訓練施設。これから一緒に戦う人たちなんだから、挨拶してきたら?」


 ミオラはそう遥斗に言う。どうやら同行はここまでらしい。


「ありがとう、ミオラ。」


 そう言うと遥斗はミオラと別れ、建物へと入るのだった。




 継裔会の訓練施設。

 多くの神裔たちが実戦練習や筋トレをしている。道場やジムのような雰囲気だ。

 遥斗がそこに入ると、早速1人の男が声をかけた。


「おう、新入りか! 俺は司堂和成しどうかずなり。よろしくな!」


 空手着を着た茶髪オールバックの青年、和成は笑顔でそう言い、手を突き出した。

 遥斗はその手を掴み、握手する。


「天城遥斗だ。よろしく。」


 遥斗がそう言うと、和成の顔が一瞬強ばった。


「天城…もしかして、あの伝説の天城さんの息子か?」


「え…もしかして、父ちゃんのことを知っているのか?」


 遥斗は和成の言葉を聞いて驚いた。父を知る人物に会うのは初めてだ。


「ああ。俺は5年前、あの人に助けられたからな。

 …伝説の戦士の息子ってことは、お前も強いのか?」


 その言い方。遥斗の父がかつての伝説の戦士、リループであったことはもはや確定のようだ。

5年前、遥斗の父が死に、継裔会が発足した年だ。一体何が起きたのだろうか。


「どうだろう…強くなった気でいるけど、まだまだだよ。」


 遥斗は四聖獣しせいじゅうの試練をクリアし、黄龍こうりゅうの力を使って確実に強くなっている。

 だが、テューポーン怪人相手には手も足も出なかった。まだまだ強くなる必要がある。


「俺、強くなりたいんだ! もっと力が欲しい。だから手合わせしてくれないか?」


 和成は真剣な顔でそう言った。遥斗の記憶がフラッシュバックする。


『力…力を!』


 テューポーン怪人は以前、そう言っていた。誰がテューポーン怪人になるか。その手がかりは力を求めていること。

 つまり、和成がそうなる可能性がある。


「わかった。戦おうか。」


 遥斗は和成の実力を確かめるため、手合わせすることにした。


 その時、和成の携帯から着信が鳴った。


「あ、悪い。…もしもし、どうしましたか? ……はい、すぐに行きます。」


 和成は携帯を閉じると、遥斗の方を向く。


「まじですまん。急遽用事が入っちまった。またいつか、戦おうな!」


 和成はそう言うと早足で訓練施設を出ていった。その慌ただしさは、遥斗に通じるものがあった。

 それから遥斗は訓練施設を見て回ったが、めぼしい情報は得られなかった。

 遥斗は一度家に戻ろうかと思い、地上へ出た時にゼクスに呼び止められた。


「新入りが用もなく外に出ては行けませんよ。スパイ行為の可能性もあるので。

 あなたは、これから地下都市で暮らしてください。既に住処も用意しています。」


 遥斗はやけにあっさり潜入できたと感じていたが、流石に安易に外に出てはくれないらしい。

 せめて結愛に連絡を…と言ったら、それは許された。


『ごめん、兄ちゃんしばらく帰れないや。

 絶対いつか戻ってくるから、心配しないで。帰ったら、また特製味噌スープを作るね!

 じゃあ、元気でいてな。』


 そのメッセージを送ると、べーっと舌を出したスタンプが返ってきた。そういえば、朝に怒られたっきりだっけ。


 遥斗は、急な別れに寂しく感じながら、意外と広い新しい家へと行くのだった。




一方、セイヴァー本部 指令室。


司令官の一条煌いちじょうこうは、三上蒼一みかみそういちから受け取ったあるミッションについて考えていた。


『継裔会が持つコイン、ジズコインを探し出せ。

そうすれば、真の戦士としてお前を認め、正式に発表しよう。』


真の戦士。世間から認められるヒーローとなれば、自分の努力が報われる。

煌は独自に、継裔会とジズコインの調査を始めていた。




「…ようやく、完成です。」


 薄暗い部屋で、ゼクスは喜びを隠しきれない声でそう言った。彼の手には、賽銭箱型のデバイス…アセンションギアが握られている。


「よくやった、ゼクス。流石は知の権能だな。

 それが完全に機能することは、ある男で実験済みだ。

 これからは、君の野望のためにそれを使うといい。」


 その部屋にいた怪しげな老人…三上はそう言うと、ペガサスコインをゼクスへ渡す。

 ゼクスはそれを握りしめると、笑顔で告げる。


「この神器で…これから私が、新たな神になります。」





【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ


一条煌…フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス


ゼクス…ペガサス、グリフォン、キマイラ、麒麟きりん

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