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17.世界の終焉!? 最凶の怪人!

「…お兄ちゃん、元気ないね。」


 暗い遥斗はるとの顔を見て、結愛ゆあはそう言った。

 遥斗は、煌や聖也、霧島を失ったことから、明らかに元気を失っていた。

 せっかく与えられた2周目のチャンスが、以前より酷い結果となっている。


「今日は私が味噌汁作るね。お兄ちゃんは座って待ってて!」


 結愛はそう言うと、キッチンに立った。遥斗は、この先について考えている。


 戦える戦士は遥斗1人。継裔会けいえいかいの幹部は、残すところミオラのみ。

 そして、三上という謎の男の存在。


 ヴァルガが倒れた以上、新たな怪人が生まれる心配はないだろうが…。


 遥斗の頭の中には、ある考えがあった。ミオラと手を組んで三上を倒すことだ。


 以前、玄武げんぶの試練での1件から、遥斗はミオラをただの敵とは思えない。もしかしたら、協力してくれるかもしれない。


 そんなことを考えているうちに、結愛が味噌汁を持って机へやってきた。


「お兄ちゃん、ちょっとは元気だしてね。笑顔でいることが1番だって、お父さんもよく言ってたでしょ?」


 遥斗は、味噌汁を飲む。とても、温かかった。遥斗の目から涙がこぼれる。


「ぐすっ…」


 遥斗の涙は止まらなかった。仲間が全員いなくなり、追い詰められていたのだ。そこに結愛の優しさが沁みた。

 結愛は、そんな遥斗を優しい表情で見つめている。


「…ありがとう、結愛。」


 遥斗は再び決心した。この日常を、守っていくと。


 ピンポーン


 そんな時、インターホンが鳴る。遥斗がそれに出た。


『はーるーとーくーん。えへっ、来ちゃった。今から遊ぼーよー!』


 ミオラだった。遥斗は、仲間に引き込むチャンスだと感じた。


「ああ、すぐに行く。」


 それを聞いた結愛は、遥斗に興味津々な様子で聞く。


「お兄ちゃん、今のって…もしかして彼女さん!?

 いつ出来たの!? あんな可愛い彼女さんがいるなんて、お兄ちゃん意外とやるねー!」


 結愛は、なにやら勘違いしているようだ。そんな結愛の質問攻めを振り払い、何とか遥斗は外に出るのだった。




「待たせたな、ミオラ。」


 遥斗はミオラにそう告げる。ミオラは、嬉しそうにコインを取り出した。


「本当に待ったんだから。やーっと2人きりで戦えるね!」


 だが、遥斗はディバイドギアを取り出さない。そしてミオラに伝えた。


「もはや継裔会の戦力はお前だけだ。俺たちの戦いに、意味はあるのか?

 裏で三上という男がなにやら不穏な動きをしている。一緒に、あいつを止めよう。」


 それを聞いたミオラは、露骨にテンションが下がる。


「あーもう、そういうの全部どーでもいいの。戦いに意味なんて求めちゃだーめ。

 さ、戦いましょう? 新しい力を見せてちょうだい。」


 そう言うと、ミオラはヒュドラコインを弾いて怪人となった。

 遥斗は仕方なくエクリブリアムを手に取り、掲げる。


 ヒュドラ怪人となったミオラと、リループ・ゴセイが対峙した。


 ミオラは、無数の蛇を触手のように操る。それに迎え撃つかのように、リループ・ゴセイは蔓を操る。

 そして金属で槍を作り出すと、それをミオラ向かって投げつけた。

 ミオラに命中。だが、それを引き抜くとすぐに再生した。


「いい攻撃だねー、さっすが遥斗くん。」


 ミオラは自分の腕から伸びている無数の蛇を、槍で切り落とした。

 切り落とされた蛇はそれぞれが意志を持ったかのように動く。


「再生できないほど、粉々に砕くしかないか…」


 リループ・ゴセイが蛇を避けつつ天に手を突き出すと、隕石が降り注ぐ。

 ミオラはそれに命中して押しつぶされた。


 だが、それでも起き上がる。


「ヒュドラだけの力だったら、今のはやばかったかもねー。

 でも、生の権能を持つ私は不死身だよ?」


 ミオラは蛇を鞭のように扱い、リループ・ゴセイへ攻撃する。


「やっぱり、戦いって楽しいね!」


 笑いながら攻撃するミオラ。遥斗は、ミオラが笑っているのを初めて見た。


「戦いが、そんなに楽しいか?」


 遥斗はミオラに問う。


「楽しいよ。命をかけて、私と向き合ってくれるんだもん。」


 それを聞いたリループ・ゴセイは、悟った。ミオラは、完全に狂っている…と。


「その楽しい時間も、終わりみたいだ。」


 リループ・ゴセイは、ミオラを倒すかどうか悩んでいた。


 だが完全に相容れないとわかった今、倒す覚悟を決めた。

 体に力を込めると、5体の神獣の影が現れる。

 エクリブリアムにエネルギーが注がれると、リループ・ゴセイはミオラへ向かって走る。


「遥斗くんなら、私を倒してくれるかな…」


 ミオラがそう呟いた。リループ・ゴセイは、攻撃しようとしていた手を咄嗟に止めてしまった。


「ミオラ…死にたいのか?」


 そうミオラに聞いた。ミオラは、生身の姿に戻った。


「はー、手を止めちゃったか…完全に気分冷めちゃった。次はちゃんと倒してね? 遥斗くん。」


 リループ・ゴセイもオーラを消した。今日はここまでのようだ。


 その時だった。地面がグラグラと揺れだしたのは。


「!? …地震か?」


 遥斗はそう告げる。だが、ミオラがそれを否定する。


「いや、これは…そっか、あの人が…

 遥斗くん、もし世界を終わらせたくないなら、私と一緒に継裔会の基地へ行こう。」


 ミオラは、さっきとは違い真面目な顔でそう告げる。そして遥斗の手を掴むと、引っ張った。


「一体、何が起きたんだ?」


 遥斗はミオラに聞いた。ミオラは答える。


「世界を終わらせる程の力を持った…テューポーンの怪人が、生まれたみたい。」


 テューポーン。ギリシャ神話における最悪の怪物。様々な怪物たちの父と言われる存在だ。

 そんな怪人が、突然現れたらしい。


「テューポーンの怪人…三上の仕業か?」


 三上は、世界が終わると言った。このことなのだろうか。


「三上…あいつが私たちの元に来る前から、テューポーンの力は継裔会にあったよ。

 だから、関係あるかは分かんないや。」


 ミオラは、そう告げた。遥斗はミオラに聞く。


「お前は、それを止めたいのか? 継裔会が世界を支配するなら、これは好都合では?」


 ミオラは、少し悲しげな顔をした。そして、返答する。


「…私は、世界に終わって欲しくないよ。みんなが、笑顔で暮らせればいいと思う。本当に、みんなが。」


 ミオラは心からそう言った。その願いは、遥斗と通じるものがあった。


 彼女がなぜ継裔会にいるのか…ますます謎は深まる。


 そうこうしているうちに、ミオラが足を止めた。


「ついたよ、ここが継裔会。…随分、変わっているけどね。」


 ミオラが継裔会と言った場所は、もはやほとんど跡形もなかった。


 蛇が、無数にいた。怪人となったミオラすら可愛く見えるほどの、かなりの数の蛇だ。その中心には、さらに巨大な蛇の怪人がいた。


 上半身は人の形をしており、下半身はとぐろを巻いている。肩から100匹を超えるほどの蛇の頭が生えているそれは、まるでギリシャ神話のテューポーンそのものだった。


「力…力を…!」


 怪人の声はひどく歪んでいる。そして怪人は、衝動を抑えきれないかのように周囲の建物を破壊する。

 そこに、三上がやってきた。


「さあ、テューポーン! 今こそ侵略の時だ!」


 三上はそう叫ぶと、無数のコインを投げる。テューポーン怪人は、それらをあっさりと破壊した。


 するとコインから、様々な神獣が現れる。空を飛ぶもの、炎を吐くもの、不気味な顔を持つもの…かなりの量だ。


 神獣が、叫ぶ。まさに咆哮ほうこう飛び交う魑魅魍魎ちみもうりょう


「もっと、もっと力を!」


 テューポーン怪人がそう叫ぶと、神獣たちを吸収した。そして、更に巨大な姿へと至る。


「これ以上破壊される前に、止めないと!」


 遥斗はエクリブリアムを握りしめ、リループ・ゴセイへと至る。


 朱雀すざくの力で空を飛び、怪人へと剣を突き刺す。


 だが、全く刃が通らなかった。大量の神獣を取り込んだその怪人は、圧倒的な強さを持つ。

 巨大な怪人が尾を振るうと、リループ・ゴセイは呆気なく吹っ飛んだ。


 強大な敵相手に、どう戦えばいいか…そんなこと考える暇もなく、怪人はリループ・ゴセイへ攻撃を続ける。


「力を…寄越せ!」


 怪人がそう言うと、リループ・ゴセイを握りしめる。

 巨大な手は、簡単にリループ・ゴセイを掴んだ。


「ふんっ!」


 怪人がリループ・ゴセイを握りしめる。そして、地面へ叩きつけた。

 いとも簡単にリループ・ゴセイを纏うオーラが消え、遥斗は地面に突っ伏した。


「世界を…我がものに!」


 怪人が体に力を込めると、辺り一面が吹き飛んだ。街は一瞬で消え去り、人々は、一瞬で跡形もなく消え去る。


「遥斗くん、危ない!」


 ミオラは、遥斗を庇い、なんとか遥斗を助ける。

 ミオラは跡形もなく消滅した…かに思えたが、一瞬で復活した。


 ミオラが遥斗の手を取ると、遥斗の傷が一瞬で回復した。遥斗の消えかけていた意識も、すぐに戻る。

 だが、ミオラは疲れきった様子だ。どうやら、生の権能の力を連発しすぎたようだ。


「俺が、あいつを止めないと…他の戦士たちの分まで背負って、絶対に!」


 遥斗は、ディバイドギアを取り出すと、フェンリルのコインをセットした。

 天秤が右に傾く。そこに平和への願いを込めると、天秤は釣り合った。


 白い狼のオーラを纏った、リループが今、牙を剥く。




 その勝負は、一瞬だった。リループが高速で怪人の背に乗ったその瞬間、地に落とされた。

 そして怪人は、リループを踏みつける。もはや、どんな手も通用しなかった。

 

 消えゆく意識の中で、遥斗はこれまでを振り返っていた。


 四聖獣の試練を突破し、希望を胸にゴセイの力を得た。


 だが、その直後から絶望が始まった。


 なぜこうなったのか、全く分からない。あの怪人がなぜ生まれたのか…唐突すぎて見当もつかない。


 世界を、守ることができなかった…ただその事実を受け止めながら、遥斗の意識は遠く消え去る。最期まで、結愛の笑顔が頭から離れなかった。



 ◆◆◆



「はっ! …はぁ、夢…じゃないよな。また、時間が戻ったんだ。」


 目を覚ますと、天城遥斗はベッドの中にいた。


「あの怪人を絶対に誕生させちゃいけない。正体を突き止めて、阻止しなくちゃ。

 …この世界から、もう笑顔を奪わせない。」


 遥斗は、そう決意した。リループの戦いが、再び始まる。





【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀、玄武、青龍、白虎


三上蒼一…ジズ、メドゥーサ、フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス、ペガサス、グリフォン、キマイラ、スカラベ、麒麟、ベヒモス…

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