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16.正義と覚悟! 聖也、最後の戦い

 セイヴァー本部 司令室。


 遥斗はると聖也せいや、霧島の3人は、朝から司令室に集まっていた。


こうが行方不明って本当ですか!?」


 遥斗は霧島に言う。


「ああ。昨日ここを出てから、彼との連絡がつかないんだ。なにかに巻き込まれてないといいが…」


 霧島は、煌に電話をかけながらそう言った。


「もし一条に何かあったのなら、それは俺のせいだ。俺が絶対見つけて救い出す。」


 聖也は、そう強く決めていた。


 その時だった。霧島がかけた電話に誰かが出たのだ。


「煌くん!? 昨日は一体どうしたんだい?」


 霧島は電話に向かってそう言った。


『一条煌について、伝えなければならない事がある。君の研究室で話をしよう。

 君と飛翔くんと私の3人でね。』


 電話に出たのは、三上だった。三上がそれを言うと、すぐに電話は切られた。


「すぐに行かなくては。」


 聖也は立ち上がる。遥斗はそこに口を挟んだ。


「俺も行かせてください。」


 霧島がすぐに返した。


「三上先生が何を考えているのかは分からない。もしかしたら、煌くんを人質に取ってる可能性だってある。

 だから、君はここに待機だ。何かあればすぐに呼ぶよ。」


 それを言うと、聖也と霧島は司令室を出た。遥斗は、心配しながらもその場に留まるのだった。




 セイヴァー本部 霧島の研究室。


 聖也が勢いよくその扉を開ける。そこには、霧島の椅子に座っている三上がいた。


「一条はどうなった!」


 聖也は三上に詰め寄る。三上は、落ち着いた様子であるものを取り出した。


「彼は…残念ながら死んでしまったようだ。」


 三上が手に持つそれ…フェニックスコインを机に置いた。

 霧島と聖也は驚く。


「三上先生! あなたが…彼を手にかけたのですか?」


 霧島は三上に問う。嫌な予感が霧島を駆け巡っていた。


「さあ、どうだったか…

 そんなことより霧島。君に…プレゼントをあげよう。」


 三上はニヤッと笑いながらそう言った。


「そんなことだと!? 一条を手にかけたのなら、いくらあなただろうと許しはしない!」


 聖也は三上の胸ぐらを掴む。だが、三上は落ち着いた様子で続ける。


「霧島。君は今、複雑な感情を抱いているね。

 飛翔くんにアセンションギアを使わせたかった自分と、使わせたくない自分。2人の自分の葛藤。そして…使わせてしまったことへの後悔だ。」


 三上は聖也のことを無視して、霧島に告げた。霧島の顔が暗くなる。聖也は、三上を離した。


「そして、その負の感情は、最悪の力となるのさ!」


 三上がそう高らかに言うと、扉からヴァルガが入ってきた。


「ヴァルガ…貴様ら、グルだったのか!」


 聖也はそう言うと、ディバイドギアを取り出した。


 ヴァルガは、霧島に手をかざす。すると霧島のポケットが紫に光り、中から麒麟きりんコインが出てきた。


「私は、取り返しのつかないことをしてしまった。

 ゼクスの目的を知るために、君にこれをわざと使わせていた…そんな私が、君に許されていいわけが無い…」


 霧島は、ぼそぼそと呟く。そこに、陽気なドクターの面影は無かった。


「だめだ霧島! 闇に飲み込まれるな!」


 聖也は必死に叫ぶ。ガチャ、と霧島のサングラスが落ちた。


 苦しむ麒麟の影が現れ、それが霧島を包む。霧島の体が、どんどん怪人へと近づいていく。


「霧島!!!」


 聖也の悲痛の叫びも虚しく、霧島は怪人となってしまった。

 麒麟の怪人だが、ゼクスのものとは見た目が違う。金色は澱んでおり、角も歪んでいる。


「ははっ! セイヴァーの研究者がこんな闇を抱えていたなんてな!

 もはや誰も、こいつを止められないさ!」


 霧島は苦しみ出し、暴れだした。どうやら自我は無いようだ。


「くっ…やるしか、ないのか…」


 聖也はディバイドギアにペガサスのコインをはめる。天秤が右に傾き、徐々に釣り合っていく。

 完全に釣り合った時、白いペガサスのオーラが現れて聖也を包んだ。戦士ルーサスとなったのだ。


 その時、ガチャリとドアが開いた。いても立ってもいられなくなった遥斗が、やって来たのだ。


「聖也さん! そして、怪人…ヴァルガ、お前まさか!」


 遥斗は一瞬で状況を飲み込んだ。麒麟の怪人が目の前にいたことが全てを示している。ヴァルガが、また人を怪人化させたのだ。


「やあやあリループ! お前の相手はこの俺だ!」


 ヴァルガは笑い、ベヒモスのコインを取り出すと怪人となった。


「くっ…聖也さん、そっちは任せました!」


 遥斗はケルベロスのコインを取り出すと、ディバイドギアにセットする。

 以前、ヴァルガに効いた力だ。


 ケルベロスのオーラを纏ったリループは、犬の影をセイヴァーの外へ出した。

 そして、ヴァルガを掴んでワープする。


「霧島…お前の正義は、俺が守る。」


 ルーサスも、暴れる怪人との戦いを始めるのだった。怪人が部屋の壁を壊し、外へと出たためそれを追う。


「さて…これでこの世界に、用は無くなった。」


 三上はなにやら呟くと、研究室を後にした。




「くっ…」


 リループは犬を出してワープしつつ、隙を見て攻撃をする。

 だが、ヴァルガにダメージはない。


 やはり、3頭の力を集めたビームぐらいしか効かないようだ。


「同じ手が、何度も通じると思ったか!」


 ヴァルガはそう叫ぶと、犬の影を破壊する。


「そうか、なら新しい力を見せてやる。」


 そう言うと、リループの右手に光が集まり、剣となった。エクリブリアムだ。

 彼の元から4枚のコインが勝手にエクリブリアムへと装填される。


「いくぞ! 黄龍こうりゅう!」


 エクリブリアムを天に掲げると、そこから実体化した黄龍が現れる。リループを包むと、ケルベロスのオーラをかき消して黄金のオーラとなる。


「リループ・ゴセイ。お前を倒す!」


 リループ・ゴセイは背中から炎の翼をバッと広げると、そう宣言した。


 翼がバサッと羽ばたくと、炎の渦が現れる。ヴァルガはそれを、正面から受け止める。

 そこに、リループ・ゴセイは水をぶつけた。ジュワーっという音とともに、湯気がヴァルガを包む。視界を一時的に奪ったのだ。


 その隙にリループ・ゴセイは背後へと行き、エクリブリアムを突き立てる。

 ヴァルガはその力を前に、ダメージを食らった。


「なかなかやるじゃねぇか。俺に本気を出させるとはな!」


 ヴァルガはそう叫ぶ。すると、グチョグチョとした白い異形が大量に現れた。異形達は1つにまとまると、巨大なモンスターへと姿を変えた。

 図体がでかい人型のモンスター…まるでゴーレムのようなものがリループ・ゴセイを襲った。

 リループ・ゴセイはそれを躱す。


「そんな力を隠していたんだな。」


 リループ・ゴセイはそう告げると、エクリブリアムを構えるのだった。




「霧島! 俺のことがわからないのか!」


 麒麟の怪人と成り果てた霧島に、ルーサスはそう告げる。だが、その声は届かず、麒麟の怪人は暴れる。

 ゼクスが見せた美しい戦いとは全く違う、ただの破壊だ。


「目を覚ませ!」


 ルーサスは怪人に殴りをいれようとする。だが、怪人の周りが熱に囲まれており、攻撃が出来なかった。

 ルーサスは、翼を広げる。雷を落とそうとしたが、それは不発に終わった。


「ディバイドギアじゃ、限界なのか…」


 そう言うと、拳に雷を纏う。ディバイドギアとアセンションギアでは出力が異なるため、以前とは違った戦いを要求されるみたいだ。


「お前の正義は偽りだったのか! 霧島!!!」


 ルーサスは雷を纏った拳を霧島にぶつけた。相手が熱を纏っていようと関係ない。


 怪人は一瞬よろめくと、あるものを落とした。アセンションギアだ。


「霧島、お前が悩む必要はない。お前は、俺が認めた男だ。だから、その闇を振り払ってみせろ!」


 ルーサスは必死に怪人に言う。怪人が頭を抑え、苦しみだした。

 その隙に、ルーサスはアセンションギアを手に取る。


「やつにダメージを与えれば、霧島は闇を払えるかもしれない。」


 ルーサスはディバイドギアからコインを外すと、それを迷いなくアセンションギアへと投入した。


「例えお前が俺を忘れようと…俺がどうなろうと。お前が闇に落ちるのを、黙って見てはいられない。

 お前の心に火をつけたのは、この俺だ。それでお前が苦しむなら、俺のことは忘れるに限る。」


 アセンションギアの紐を揺らす。ガラガラと、鐘の音が鳴ると、ルーサスを纏うペガサスのオーラが黄色く輝く。


「これが俺の、飛翔聖也としての最後の戦いだ…

 お前も、お前自身に打ち勝てよ。」


 そう言うと、ルーサスは翼を広げる。雷が、怪人へ直撃した。


「聞こえるか、霧島。お前はもうすぐ俺を忘れる。だから、その苦しみも消えるさ。」


 ルーサスはグリフォンのコインを追加した。風が、巻き起こる。


「例え俺を忘れても、お前がこれまで自分のシステムで世界を守ってきた事実は消えない。

 お前は、許されていいんだ。」


 ルーサスはキマイラのコインを追加する。右手から、炎が噴出される。


「だから、この先は任せたぞ!」


 雷、風、炎。それらが苦しむ怪人に命中した時、麒麟コインが地面へ落ちた。


「はぁ、はぁ…流石に効いたよ、聖也。」


 汗にまみれた霧島がそう言った。ルーサスの圧倒的な強さと、霧島の気持ちが、ヴァルガの力を振り払ったのだ。

 ルーサスの顔が笑顔になる。霧島も、笑顔を見せた。


 だが、その直後、霧島は消滅した。


「無駄だ。一度力の権能に呑まれたものは、いずれ消滅する運命にある。

 抗ったなら、それが早まるのも当然だ。」


 ヴァルガは、ルーサスのいる方へと来ていた。リループ・ゴセイはゴーレムと戦いながら、それを見つめる。


「お前たちがこれまで倒してきた怪人も、コインを落とすとすぐに消滅しただろう。

 力の権能に呑まれた者は、そのコインを失うと、すぐに消滅するんだよ!」


 衝撃の事実だった。思えば、これまで倒してきた怪人たちは、コインを落とすとすぐに消滅した。ゼクスを除いて。

 これは、ヴァルガの力の権能がもたらした残酷な結末なのだ。


 リループ・ゴセイとルーサスは拳に力を込める。


「お前は、お前だけは許さない!」


 リループ・ゴセイが怒りを露わにすると、ゴーレムを引き裂いた。

 そして、五体の神獣の影が出現。


「ここで、決着をつける!」


 ルーサスも体に力を込めると、ペガサスの影が出現した。


 四聖獣しせいじゅうと黄龍が、エクリブリアムへエネルギーを注ぐ。それをリループ・ゴセイはヴァルガへ投げつける。


 ヴァルガはそれを躱した。そこに、ペガサスの影が蹴りをいれる。

 ヴァルガはそれを腕でガード。


 その背後に、飛んできたエクリブリアムの柄を握ったルーサスが立っていた。


「消え失せろ!! 悪魔が!!!」


 ルーサスはそう叫ぶと、力任せにエクリブリアムを突き刺した。


「ぐああああ!!!!」


 ヴァルガが、爆発した。

 生身の姿に戻ったヴァルガは、あっけなく倒れた。ベヒモスのコインが転がる。


「計画はもう…誰も止められない…」


 その言葉を最後に、ヴァルガは意識を失った。目に光はない。

 コインを拾ったルーサスは、ペガサスのオーラを消しながら静かに告げる。


「…霧島、闇に打ち勝つ正義、見せてもらったぞ。」


 聖也は大粒の涙を流しながら、コインを強く握りしめるのだった。


「聖也さん…ギア、使ったんですね。」


 遥斗が聖也にそう告げた。聖也の体が、消えかかっていた。


「…君は、俺のことを覚えているんだな。

 なんとなく、消える気はしていたよ。君が特別なだけで、もうこの世界に俺の生きた証はない。


 …いいか、よく聞け。本当の敵は、三上だ。

 残った戦士は1人。君の正義を、貫いて見せろ…」


 その言葉を最後に、聖也は完全に消滅した。誰よりも正義を貫いた男は、その正義を遥斗に託す。

 煌、霧島、聖也。消えていった仲間を思い浮かべながら、遥斗は彼らの遺志を受け継ぐと決意した。


「さあ、これでアセンションギアが完成した!」


 突然、背後から三上が現れ、地面に落ちたアセンションギア、ディバイドギア、聖也とヴァルガの持っていた計6枚のゴズコインを拾いあげる。


 そして、遥斗にこう伝えた。


「世界の終わりはもう目前なようだ。君も、覚悟するといい。

 では、また会う日まで。」


 その言葉を最後に、三上は遥斗に背を向ける。遥斗は咄嗟にエクリブリアムを取り出した。三上を、倒そうと。

 その時、大地が震え上がった。


 何かが、起こり始めている。遥斗は咄嗟に後ろを向いたが、そこにはなにもいない。

 再び前を向くと、三上はもう見えなくなっていた。





【所持コインリスト】


天城遥斗…フェンリル、ケルベロス、朱雀すざく玄武げんぶ青龍せいりゅう白虎びゃっこ


三上蒼一…ジズ、メドゥーサ、フェニックス、レヴィアタン、スフィンクス、ペガサス、グリフォン、キマイラ、スカラベ、麒麟きりん、ベヒモス…

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