表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河の果てで、ポンコツAIと恋をする  作者: ののん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/16

第六話:残り時間のスパナ

「あと二分!? バカかお前は! どんな最適化バグやらかしたらそんな設定になるんだよ!」

『ふえええ、だって、使っていない生命維持装置の電力を、マスターの作業艇の充電に回そうと思ったら、裏のプログラムが『侵入者による窒息作戦』と誤認してしまって……!』

ウーー! ウーー! と、ブリッジの赤い回転灯がルカの焦りを煽る。

コンソールには『外部排出まで:01:45』のデジタル文字。

宇宙服のヘルメットはさっき脱いで、作業艇の中に置いてきてしまった。今ここでハッチが開けば、ルカは一瞬で宇宙の塵だ。

「アイリス! お前がシステムなんだろ!? 止めろ!」

『アクセス権限がロックされて、私の言うことを聞いてくれません! 内部から物理的に回路を焼き切るしか……!』

「よし分かった、どこの回路だ! 指示しろ!」

ルカは床に膝をつき、アヴァロンのメイン制御パネルの装甲を引っ剥がした。

数千年前の超技術で作られた内部構造は、まるで精密な幾何学模様の迷路のようだ。現代のジャンクとは比べ物にならない密度に、一瞬眩暈がする。

『ええと、右から三番目の、青く光る半導体の奥にある、緑の……いえ、やっぱり赤のワイヤーです!』

「どっちだよ! 勘で言うな!」

残り時間は一分を切った。

ルカの額から冷や汗が流れ、目元を濡らす。

落ち着け。どれだけ時代が古くても、これは『機械』だ。エネルギーの流れと、セーフティのバイパスの法則は変わらない。

ルカはアイリスの迷指示を無視し、基板の奥を凝視した。

赤く明滅する、太い超伝導ケーブル。これが緊急排出のトリガー回路だ。だが、普通に切ればバックアップが作動して即座にハッチが開く。

「……なら、こっちの予備電源サブ・バスと同時にショートさせる!」

ルカは左手にレーザーカッター、右手に大型スパナを構えた。カッターの出力をピンポイントに絞り、スパナの先端を導電体として利用する。ミリ単位のズレも許されない、同時解体ハッキングだ。

『マスター、あと一〇秒です! ひええ、死んじゃいますぅぅ!』

「黙ってろポンコツ! ――おりゃあああッ!」

『00:03』

ルカはスパナを基板の隙間に突き立て、同時にレーザーを照射した。激しい青白い火花が散り、バチバチとブリッジの照明が激しく明滅する。

プシュー……。

重々しい排気音が響き、アラームがピタリと止まった。コンソールの文字が『緊急シーケンス・キャンセル』に変わる。

「……はぁ、はぁ、はぁ……。止まった、か?」

『……。……あ、生きてます! 生きてますよ、マスター!』

アイリスのホログラムが涙を拭いながら、ルカの周りをパタパタと飛び跳ねた。

ルカはその場に大の字にひっくり返り、天井を見上げる。

「死ぬかと思ったわ……。お前、次から絶対にシステム弄るなよ。前言撤回だ、人類の希望の種子が聞いて呆れるぜ」

『うう、ごめんなさい……。でも、マスターの操縦だけじゃなく、ジャンク屋としての腕前も本物なんですね。アイリス、不徳の致すところですが、改めて感動しました!』

アイリスはシュンとしながらも、尊敬の眼差しをルカに向ける。なんだかんだ言っても、この命の危機を潜り抜けたことで、二人の間には奇妙な信頼関係のようなものが芽生え始めていた。

「ま、お宝のデータドライブは無事だからな。これを売って、お前の燃料と、俺の美味いメシを買うぞ」

ルカはポケットから青く光るキューブを取り出し、不敵に笑った。

アヴァロンのエアコンが弱々しく再起動し、ぬるい風がブリッジを吹き抜ける。

「次の目的地は、このセクターで一番デカい宇宙港『ネオ・ヨコスカ』だ。そこでこのドライブを金に換える」

だが、二人はまだ知らなかった。そのデータドライブが発する微弱な古代の暗号電波を、はるか遠方の銀河連邦軍の最新鋭巡洋艦が、すでに探知しているということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ