第4話:ジャンク屋流の解体ショー
プシュー。
ルカは宇宙服の気密を確認し、レーザーカッターを手に沈没船の暗い通路へと足を踏み入れた。
すでにアイリスの通信圏内(Wi-Fi)の限界だ。インカムからはザザザ……と激しいノイズしか聞こえない。
「ここからは完全にソロプレイだな」
ルカは息を潜め、暗闇を進む。目指す金庫室は通路の突き当たりだ。
だが、その時。
ギギギギギ……ッ!
不気味な機械音が静寂を破った。
通路の天井から、三機の球体型ロボットが静かに降りてくる。
旧大戦時の自動防衛ドローン。中心のセンサーが、侵入者であるルカを捉えて赤く発光した。
チャキッ、とドローンの下部から小型のレーザー銃口が競り出してくる。
「戦闘用ドローンか! 骨董品のくせに元気なこった!」
ルカは反射的に近くの隔壁の影に飛び込んだ。
直後、彼がいた場所を何条もの熱線が貫き、壁の装甲がドロドロに溶ける。まともに喰らえば、宇宙服ごと身体を焼かれる。
「一、二、三機か。銃なんて上等なもんは持ってねえ。だが……」
ルカは腰のベルトから、普段から愛用している大型のエーテル・スパナを引き抜いた。
超硬質合金で作られたその工具は、鈍い金属光沢を放っている。
「機械の『壊し方』なら、そこらの軍人より俺の方が詳しいんだよ!」
ルカは壁を蹴り、一気にドローンの懐へと突っ込んだ。
ドローンが銃口を向けるより速く、ルカは一番近い機体の「首」にあたる関節部分へスパナを叩き込んだ。
ガキンッ! と激しい金属音が響く。
ただ叩いたのではない。ルカの目は、ドローンの装甲の隙間にある「動力ケーブルの結合部」を正確に捉えていた。
スパナの先端で結合部を強引にこじ開け、一気に引きちぎる!
ショートした火花を散らしながら、一機が機能停止して床に転がった。
「あと二機!」
残る二機が同時にレーザーを放つ。
ルカは機能停止したドローンの残骸を盾にして熱線を防ぎつつ、もう片方の手に握った工業用レーザーカッターの出力を最大に設定した。
これは本来、戦艦の分厚い装甲を切り出すための工具だ。射程は短いが、威力だけなら軍用のレーザー銃にも劣らない。
「オラァッ!」
死角から回り込み、二機目のドローンのカメラレンズに向けてカッターの光線を照射する。
強力な工業用レーザーがドローンの電子の目を焼き切り、機体は完全に盲目となった。暴走して天井に激突するドローンを無視し、ルカは最後の三機目を見据える。
最後のドローンは、ルカの宇宙服の胸元を狙ってレーザーをチャージし始めた。
銃口が眩しく輝く。発射まで、あと一秒もない。
「させ(・・)ねえよ」
ルカはチャージの光に怯むことなく、逆に間合いを詰めた。
そして、ドローンの銃口の「冷却スリット」に向けて、手元にあったジャンクのボルト(ネジ)を全力で投げつけたのだ。
小さな金属片が、チャージ中の銃口に見事にはまり込む。
銃身の冷却が妨げられ、エネルギーが内部で逆流した。
ドカンッ!!
ドローンは自らのエネルギーに耐え切れず、派手に自爆した。
爆風で舞い上がった煤煙の中、ルカはスパナを肩に担ぎ、ふぅと息を吐いた。
「ふいー。やっぱり古い機械は、構造が単純で助かるぜ」
工具だけで戦闘用ドローンを瞬殺した少年は、何事もなかったかのように、目的の金庫室のハッチへと歩き出した。




