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銀河の果てで、ポンコツAIと恋をする  作者: ののん


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第3話:針の穴を通す神技

『警告、磁気アラート発令。マスター、前方に高エネルギーのプラズマ帯を感知しました。当たればこのボロ船は一瞬で一炭いちすみです!』

「一瞬で炭、だろ! 噛んでんじゃねえ!」

ルカは怒鳴りながら、作業艇のツインレバーを握りしめた。

フロントシールドの向こうは、紫色の稲妻が狂ったようにのたうち回る地獄絵図だ。

強力な磁気嵐が、作業艇の電子機器を激しく狂わせる。

計器類は使い物にならず、モニターは砂嵐で真っ白だ。

「目視と……指先の感覚だけでいく!」

ルカは不敵に笑うと、なんとメインモニターの電源を完全に切った。

頼るべきは、強化ガラス越しに見える、生々しい宇宙の暴力のみ。

ビキィッ!至近距離で激しい放電が弾け、船体がガタガタと悲鳴を上げる。

『キャーッ! マスター、右からプラズマの津波が来ます! 右に回避を――あ、間違えました、左です!』

「どっちだよ!? お前のナビはあてにできねえ!」

ルカはアイリスの指示を無視し、逆に右レバーを限界まで押し込んだ。

作業艇は激しくロールしながら、プラズマの隙間へと突っ込んでいく。

それは「操縦」というより、荒れ狂う波の動きを予測する「ダンス」に近かった。

ルカはジャンク屋として数々のデブリを扱ってきた。

だからこそ、電磁気の流れによってデブリがどう弾かれるか、その「軌道」が直感で読めるのだ。

「そこだっ……!」

ルカはフットペダルを蹴り込み、逆噴射をかけた。

作業艇の鼻先をわずか数センチメートル掠めて、巨大な電磁ボルトが通り過ぎる。

熱波でコックピットの温度が跳ね上がる。

『素晴らしいですマスター! 今のは完全に死んだと思いました!』「まだ死んでねえよ! 次が本番だ!」

目の前には、磁気嵐によって超高速で回転するデブリの群れ。さながら、巨大なミキサーの刃だ。その刃の隙間を縫わなければ、目的の沈没船には辿り着けない。

ルカは深呼吸をし、レバーを握る手の力を絶妙に抜いた。機体の慣性を利用し、スラスターの細かなパルス噴射だけで、回転するデブリの間をすり抜けていく。

右、左、斜め上。ミリ単位の正確さで、作業艇はデブリの「隙間」を縫うように加速した。

ドンッ!大きな衝撃と共に、作業艇はついに磁気嵐の渦を突き抜けた。

静寂が戻った空間の正面に、小惑星の裂け目に挟まった、巨大な影が姿を現す。旧大戦の、情報輸送艦だ。

『……突破、ですか? まさか本当に生還するなんて……。マスター、あなたは天才のジャンク屋か、ただのイカレポンチのどちらかですね』

インカムから聞こえるアイリスの声は、珍しく本気で感心しているようだった。

「へっ、両方だよ。さあ、Wi-Fiの電波が切れる前に、サクッと金庫室からお宝を回収して帰るぞ」

ルカは沈没船の壊れたハッチに向けて、作業艇を接舷させた。

だが、その時。静まり返った沈没船の内部から、怪しく光る「赤い眼」が、いくつもルカの機体をロックオンした。

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