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銀河の果てで、ポンコツAIと恋をする  作者: ののん


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2/14

最初のお仕事、難易度「無理ゲー」

「――というわけで、これが現在の我が家の全財産だ」

アヴァロンの広大なブリッジ。その中央に置かれた折りたたみ式の安物テーブルの上に、ルカはジャラジャラと硬貨をぶちまけた。

「合計、三二ガバス。……お前の燃料である『エーテル結晶』は、一欠片で十万ガバスだ」

『なるほど。絶望的ですね、マスター!』

アイリスはホログラムの体を器用に動かし、テーブルの上の硬貨を数えようとして――指がすり抜けて空を掴んだ。「あ、また忘れてました」

とテヘペロ風に頭をかく彼女を見て、ルカは深い溜息をつく。

「笑い事じゃねえ。このままだと、俺たちはこの巨大な鉄の塊の中で餓死するか、窒息死するかの二択だ。ライフラインを維持するだけでも、作業艇のバッテリーを回してあと三日がいいところだぞ」

『ご安心ください。アヴァロンのセンサーは超高性能です。この海域のデブリの中から、最も価値の高い『お宝』をすでにロックオンしています』

アイリスが胸を張ると、空中に立体的なホログラムの地図が展開された。数キロ先、巨大な小惑星の割れ目に、一隻の沈没船が挟まっている。

『旧大戦時の情報輸送艦です。あの金庫室には、現代でも高値で取引される『暗号化データドライブ』が手つかずで残されています。あれを持ち帰れば、数万ガバスにはなるかと』

「マジか! よし、さっそく作業艇を出して――」

『ただし、問題が三点あります』

アイリスは一本ずつ指を立てた。

『第一に、あの小惑星の周囲は強力な磁気嵐が発生しており、通常の操縦では激突します。第二に、船内には防衛用の自動ドローンがまだ生きています。そして第三に……』

「第三に?」

『私の本体(戦艦)が動かせないため、私はアヴァロンのWi-Fiが届く範囲――つまり、ここから半径五〇〇メートルまでしか同行できません。潜入はお一人になります』

「……それ、ジャンク屋がソロでやる難易度じゃねえだろ!」

ルカは頭を抱えた。磁気嵐の中の超絶操縦、古代の殺戮ドローンとの戦闘、そしてナビゲーター不在の暗闇の探索。どれか一つでも命を落とすレベルの「無理ゲー」だ。

「……だが、やるしかねえか。座して死ぬよりはマシだ。アイリス、お前の言う『超高性能センサー』とやらは、ここからでも俺の通信機インカムに繋がるな?」

『はい! ギリギリまでマスターの命の灯火を見守っています!』

「縁起でもねえこと言うな! サポートしろ!」

ルカはスパナとレーザーカッターを腰のベルトに差し、宇宙服のヘルメットを被った。ボロい作業艇に乗り込み、アヴァロンのカタパルトから暗黒の宇宙空間へと飛び出す。目指すは、不気味に放電を繰り返す磁気嵐の渦、そしてその奥に眠る沈没船。

「いくぞ、ポンコツ。俺の腕を信じろ!」

『了解です、マスター。これより『作戦名:お財布救済ミッション』を開始します!』

通信の向こうで、アイリスは軍人のようにピシッと敬礼してみせた(なお、ホログラムの足元が滑って背景の壁に頭をぶつける音が、ノイズ混じりに聞こえたのは見逃すことにした)。

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