第15話「連盟の『大嘘』と、反乱の火種」
バルバロッサのカジノから命からがら脱出したルカたちは、ジャックの隠れ家である『ジャンク屋・ジャック電子堂』の地下室に身を潜めていた。
持ち帰った『極秘通信のバイパスコード』をジャックが端末に差し込むと、無数のホログラムスクリーンが暗闇に浮かび上がる。そこに映し出されたのは、星間連盟の最高機密――全銀河を揺るがす『大嘘』の証明だった。
「……おい、ジャック。これって、どういうことだ?」
ルカは画面を見上げ、息を呑んだ。
画面には、連盟が安全を保証しているはずの主要なワープゲートの、正確な「エネルギー摩耗データ」が並んでいた。
「見ての通りさ。連盟は『銀河のインフラは永久に不滅だ』と抜かしてるが、実際はとっくに限界だ。数年以内に、銀河中のワープゲートが連鎖崩壊を起こす」
ジャックは苦い顔でタバコの煙を吐き出す。
「崩壊すれば、すべての植民星は孤立し、物流が止まって数億人が飢えて死ぬ。……そして連盟の連中は、その大災害を生き延びるために、自分たちの上層部だけが乗る『特権階級専用の超巨大移民船』を極秘裏に作ってやがる。お前さんの隣にいる、その『システム・アイリス』はその移民船の動力源であり、逆らう星々を焼き払うための切り札だ」
『そんな……。私は、一部の人間だけを助けるために、他のたくさんの人たちを見捨てるために作られたんですか……?』
アイリスのホログラムが小刻みに震え、ノイズが走る。
アイリスが断片的に思い出した「白い船を見て泣いている人々」の記憶。それは、連盟に見捨てられる一般市民たちの絶望の姿だったのだ。
「ふざけんなよ……!」
ルカは机を強く叩いた。
自分の不利益になる事実を隠蔽し、世界の終わりを前に自分たちだけが助かろうとする星間連盟。ジャンク屋として宇宙の片隅で泥臭く生きてきたルカにとって、その欺瞞は到底許せるものではなかった。
「なぁジャック。このデータを全銀河にぶち撒けたら、どうなる?」
「連盟の信用は失墜、全植民星で一斉に暴動が起きるだろうな。……だが、個人の端末から発信したところで、連盟の強力な情報統制で一瞬で握りつぶされて終わりだ」
ジャックは不敵にニヤリと笑い、大きなホログラム地図を展開した。
「データを全銀河の全端末に、強制的に同時配信できる場所が一つだけある。連盟の喉元――セクター0にある中央情報要塞『アイギス』。あそこの超大型メインパラボラアンテナを乗っ取るしかねえ」
「上等だ。そこへ行って、連盟の手配書も、この汚い大嘘も、全部ひっくり返してやる」
ルカがスパナを強く握りしめると、隣の彼女が不安を押し殺すように、だけど力強く頷いた。
『マスター、私も行きます。自分の作られた本当の理由がこれなら……私は、連盟の悪事を止めるために、この力を使いたいです!』
「おう。お前はもう兵器なんかじゃない。俺の最高の相棒だ」
「へっ、言うねぇ。だが、中央要塞に俺たちだけで突っ込むのは流石に自殺志願者だ。まずは連盟のやり方に反旗を翻してる、命知らずのレジスタンス共を仲間に引き入れにいくぞ。……さあ、忙しくなるぜ?」
ジャックが端末を引き抜き、コートを翻す。
星間連盟という巨大な壁を壊すため、ジャンク屋とポンコツAI、そして情報屋の、銀河を揺るがす大反撃がここから始まる。




