第14話「海賊市場のキャット・ファイト」
クレーター・タウンのボス、隻眼の宇宙海賊『バルバロッサ』の私設カジノ。そこが今回の計画の舞台であり、最初の難関だった。
ジャックの計画はシンプルだ。ルカがジャンク屋の知識でカジノのセキュリティをハッキングし、その隙にアイリスがネットワークの深層から『極秘通信のバイパスコード』を盗み出す。
だが、世の中そう上手くはいかない。
「おいおいおい、ネズミが紛れ込んでるじゃねえか!」
作戦の最中、カジノのバックヤードで、肉体をゴリゴリに重サイボーグ化したバルバロッサの部下たちに囲まれてしまった。退路は遮断され、敵の銃口が火を噴く。
「マスター、危ないです!」
『オンボロ・コメット号』の時とは違い、ここは敵の本拠地。物陰に隠れても、重レーザーが壁ごと主人公を消し飛ばそうと迫ってくる。圧倒的な火力差。
「……チッ、やるしかないか! ポンコツ、『アレ』をやるぞ!」
『はい、マスター! でも、私の内部プロトコルが叫んでいます。あれをやると、マスターの脳がオーバーヒートしちゃいます!』
「3分だ! 3分以内にケリをつける!」
ルカは覚悟を決め、ホログラムの彼女の胸元――青く光る演算コアの光の粒子に向けて、躊躇なく右手を突っ込んだ。
ジリジリと、脳が焼けるような激痛が主人公を襲う。
【新システム:同調・オーバーヒート】の起動だ。
『――シンクロ率、85%……92%……結合完了! システム・アイリス、部分駆動します!』
アイリスのホログラムが、一瞬でまばゆい黄金の光へと変わる。
ルカの脳波と彼女の超演算能力が直結したのだ。ルカの視界に、敵の銃弾の軌道、カジノのすべての電子機器の配線図が、スローモーションのように流れ込んでくる。
「頭が割れそうだ……! だけど、全部視えるッ!!」
ルカは激痛に歯を食いしばりながら、空いた左手でカジノのメイン制御盤のケーブルを引き抜いた。彼女のハッキング能力が、ルカの手を通じて物理的な破壊力へと変換される。
ドガガガガァン!!
カジノ中のスロットマシンが逆流し、大量のメダルが散弾銃のように敵に向かって噴き出した。それだけではない。敵のサイボーグ義肢の制御を強制的に乗っ取り、同士討ちを始めさせる。
「な、なんだこれは!? 体が勝手に……!」
「うわあああ! メダルが、メダルが止まらねえ!」
『マスター、あと45秒です! これ以上は脳のヒューズが飛びます!』
脳内をカウントダウンの赤いアラートが埋め尽くす。
ルカは最後の気力を振り絞り、ボスの部屋の頑丈な電子金庫に向けて、彼女の光の腕を叩き込んだ。
バチィィィン!!
火花とともに金庫が開き、目的の『バイパスコード』がホログラムデータとして彼女のデータバンクへ吸い込まれていく。
「コードの回収、完了です! 撤退してください、マスター!」
ルカは右手をアイリスのコアから引き抜いた。
その瞬間、シンクロが解け、猛烈な眩暈とともに主人公はその場に膝をつく。だが、カジノ内は完全に大パニック。敵は使い物にならなくなったサイボーグの身体を押さえてのたうち回っている。
「はぁ、はぁ……。マジで、死ぬかと思った……」
『お見事です、マスター! 最高のコンビネーションでしたね!』
ぐったりするルカの周りを、いつものポンコツスマイルに戻った彼女が嬉しそうに飛び回る。
命からがらバックヤードのダクトから脱出した2人を、路地裏で待っていたのは、タバコをふかす情報屋のジャックだった。
「へっ、派手にやったじゃねえか。カジノが一つ、完全にスクラップだ。だが――」
ジャックはアイリスのデータバンクから転送されたバイパスコードを確認すると、不敵な笑みを浮かべた。
「約束通り、本物の極秘コードだ。これで連盟の通信をいつでも盗聴できる。……さあて、ガキども。連盟の奴らが隠してる『宇宙を揺るがす大嘘』を、これから盛大に暴きにいこうじゃねえか」




