第98話
リアにフィアメールの事を宣伝してもらえる事になって一つ気になる事がある。
「そういえば、前にリアたちがライブ配信してたけど日本の配信技術はどこで習ったの?どこかの会社と契約とかしているの?」
どこかと契約しているなら別の配信者の宣伝は問題になるかもしれないので確認が必要なのではないだろうか、そう思い確認してみた。
「特に契約とかはしていないですね、ライブ配信は日本の探索者ギルドに頼まれて機材を借りてやっていました。今後は自分たちで身内のみで配信をしていきたいとも思っているんですけどね、攻略の参考や事故などが起きた場合に使えるので」
なるほど、ギルドからの依頼で配信をやっていて今後はライブ配信でお金稼ぎというより、色々なモンスターの倒し方や探索中に何か起きた時にわかるように使いたいと。
「それならフィアメールたちにも紹介した私の友達を紹介しましょうか?」
渋谷からも近いし良いんじゃないかと思い聞いてみる事にした。
「ありがたいです。お願いします」
「じゃあ話しておくから決まったら連絡するわね。携帯電話は持ってる?持ってるなら連絡先の交換をしましょう」
そう言ってスマホを取り出す。
それを見たリアが、
「そういえば食堂のカウンターで待っていた時も持ってましたけど、母様もスマホを持っているのですね」
リアもスマホを取り出し見せてくる。
「私は日本の探索者ギルドで配信の話をしていた時にスマホの事を聞かされて、自分の配信を見るのにも使えると聞いて契約方法や使い方を教えてもらったので持っているのですが、私の周りで携帯電話ではなくスマホを持っている人は少ないので母様が持っている事に驚きました」
まだ地球との交流が始まってそれほど経っていない事とスマホの利便性が広がっておらず携帯電話でいいと思われているのだろう。
「まぁ私の場合はこの世界に転移する前の故郷が日本だから機械に詳しいっていう事が大きいわね」
「そういえば昔、『リアのお爺ちゃんとお婆ちゃんに会わせたいけど実は私は違う世界から転移してきたから、この世界には居ないのよ』って言ってましたけど、ダンジョンで繋がった異世界がその世界だったのですか」
「そうなのよ、しかも私が転移してから地球は20年しか経っていなかったから家族や友達が健在だったわ。そして、その友だちの中の一人が配信関連の会社を経営してるのよ」
私はリアの言葉に頷きながらそう答えた。
「そんな事があるんですね、という事は私のお爺ちゃんとお婆ちゃんもいるって事?」
「そうね、リアよりも年下になっちゃうけどお爺ちゃんとお婆ちゃんは居るわね、あと私の兄……リアの叔父さんやその奥さん、リアのいとこも居るわよ」
「お爺ちゃんとお婆ちゃん……会いたいな~」
昔、他の子が祖父母に連れられ街を歩いていたのを見て、小さい頃リアは祖父母と出かけるという事に憧れていた。
思いがけない祖父母に会えるという現状に、その気持ちが復活したのかもしれない。
「スマホを持っているならSNSアプリを入れて日本の家族と交流するのが良いかもね」
横にいるリアにSNSアプリのダウンロードの仕方やSNSアカウントの作り方などを教えてあげる。
私とリアのSNSアカウントの友達登録を済ませたところで、
「じゃあ『カザハナのみんな』のグループに招待するから参加を押してね」
そう言いリアのアカウントにグループの招待を送る。
リアが参加のボタンを押したのかグループの画面に『リア・カザハナが参加しました』と表示された。
私はグループチャットに、
『私の娘、長女のリアもグループに参加したからよろしくね』
と入力して、リアにも入力の仕方を教えながら、
『レーナ母様の娘、リアです。よろしくお願いします』
とメッセージを入れた。
少しするとメッセージに気づいたのか、
『麗奈の母の恵よ、よろしくね』
『ケイだよ!リアお姉ちゃん!』
『アクアです。リア様よろしくお願いします』
といったメッセージが流れてきた。
仕事や学校に行っている者たちは仕事中や授業中で気づかないのだろう。
「こんな感じでみんなとやり取り出来るのよ、文字だと簡単な内容でも気軽に伝えられて便利よ、それとこうやって使うと個人とメッセージのやり取りや電話も出来るからね」
「わかりました」
「じゃあ、そろそろ王宮に向かおうかな」
スマホの画面を見ていたリアが私の言葉を聞きこちらに向き、
「えぇ~もう行っちゃうの~」
と悲しい顔をしながら言ってきた。
「暗くなる前に王宮に行かないといけないし、リアも仕事があるでしょう」
窘めるように言うと、
「はーい」
という渋々な返事が返ってきた。
私は少し可笑しくなりながら、
「今までと違いスマホがあるんだから、離れててもメッセージを送ったり電話したりして気軽に話せばいいのよ」
と伝えると、
「うん!いっぱい連絡するね!」
元気の良い返事が返ってきたので逆に心配になる。
そんな事を思いながらソファから立ち上がるとリアも立ち上がり私より先を歩き扉を開く。
廊下に出るとリアは先ほどまでの表情ではなくキリッとした表情になった。
クランの玄関まで一緒に行き、
「健康に気をつけてね、何かあったら連絡しなさい」
「はーい、母様も気をつけてね」
手を振るリアに見送られながら星霜の旅団を後にし、私は王宮へと向かった。




