第84話
脱衣所に入ると広々とした空間が広がり、籐製のカゴが棚に並んでいた。
「洗う物はこちらのカゴに入れてくださいね」
入口近くに置いてあるカゴを手で指し示しながらアクアが説明する。
「結構広いわね」
菜摘が驚いたように呟く。
「確かに、思った以上にスペースがありますね」
天音も周囲を見回しながら同意した。
カゴを並べるための棚があり、手前に腰掛けも用意されている。
ケイたちが既に着替えるために動き始めていたので、私もカゴに着替えとバスタオルを置いた。
「じゃあ、お先に失礼するのだ」
フィアメールとケイとシルフィが楽しそうに素早く服を脱ぎ浴室へと向かった。
「ちゃんと体を洗ってから入るのよ」
「わかったのだ!」
「はーい」
「了解~」
元気の良い声が返ってくる。
私は服を脱ぎハンドタオルを持って浴室に入る。
後ろから菜摘と天音も入ってきたようで、
「広いわね……」
「本当に銭湯みたいな作りですね……」
二人から驚きの声が上がった。
浴室内は白い壁やタイルが基調となっていて清潔感のある作りになっている。
シャワースペースは六つあり、浴槽は四つに分かれており、一番大きなメインの浴槽と小さめな浅い浴槽、次に少し熱めの温度設定の浴槽があり、そしてもう一つ小さな冷水の浴槽があった。
さらに、小さな浴槽の近くには扉があり入るとサウナルームになっている。
サウナルームの奥には柵がしてあり、赤熱石が設置された個室のような空間がある、そこに設置してある水を赤熱石にかけて自分で調整することが出来る仕組みになっている。
もちろん自動で水をかけるようにしても良いし何もしなくても自動で一定時間が経過すると水がかけられるようにしてある。
他にも、浴槽の横には背もたれ付きの長椅子があり、その一つ一つに桶が置いてある。
「個人の家にあるお風呂ではないですね……」
天音が呆然と浴室内を見渡しながら呟く。
「レーナらしいと言えばらしいんだけど、ここまでだとは思わなかったわ」
天音の隣で菜摘も苦笑いを浮かべていた。
そんな話をしている間に、すでに先に浴室に入っていたケイたちは、体を洗い終わり一番大きな浴槽にどっぷりとつかっていた。
フィアメールが気持ち良さそうに目を細めて、
「あぁ~極楽なのだ~」
と声を漏らすと、ケイとシルフィも大きく頷きながら、
「きもちいい~」
「ん~、幸せ~」
と声を揃えた。
「私たちも体を洗いましょうか」
「私は後で大丈夫です」
「じゃあ、私も後で大丈夫です」
みんなに声をかけるとシャワースペースが六つなのでアクアとサタレアが後で大丈夫と提案してくれた。
ありがたく思いながらシャワースペースへ行き頭から洗っていく。
隣では菜摘が髪を洗っており、その横で天音がシャワーを使用している。
「シャンプーやコンディショナー、ボディソープは日本のものなのね」
シャンプーを泡立てて頭を洗っている時に菜摘が声をかけてきた。
「そうなのよ、以前は石鹸しかなかったからね。日本に行けるようになったから買ってきたの」
そう言いながら、手のひらでボトルを軽く叩くと、菜摘は少し意外そうに目を丸くした。
「へぇ……何でもできそうな雰囲気なのに、やっぱり難しいこともあるのねぇ」
彼女の言葉に思わず苦笑してしまう。
「そりゃあね。私だって万能じゃないわよ。さすがに材料がわからないものは作れないわよ」
「なるほどねぇ……」
納得したように頷いた菜摘だったが、天音がふと疑問に思った様子で口を開いた。
「でも、今はインターネットで調べて材料さえわかれば、再現できますよね」
「まあ、そうね……でも作れたとしてもインターネットに作り方が出ている物と同じ物だから、日本で売っているような商品と比べると良くないし簡単に買える物なのだから買う方が楽よ」
そう言って微笑みながら、私は髪についた泡を流し始めた。
菜摘も少し考え込みながら、
「確かにそうよね。良い物があるなら買ったほうが良いわよね」
「ええ。そういうことね」
と同意した。
髪を洗い終わり、続いて体を洗い終えて一番大きな浴槽に向かった。




