第74話
車に乗り込むと、次なる目的地、銀行に向けて走り出した。
車の中で私は、今から銀行に行き口座を開設するフィアメールたちに声をかけた。
「今から行く銀行では口座を作ることになるんだけど、銀行ではお金を預ける事が出来るの。預ける時はアルタニヤ王国のお金を日本のお金に換金してくれるわ。そして探索者カードを口座と紐付けすると、お買い物の際に探索者カードを出す事によって預けたお金でお店の支払いをする事が出来るのよ。だからフィアだけじゃなく皆も口座を作っておくと日本で色々なことに使えて便利よ」
そう説明するとサタレアが、
「なるほど、レーナ様やマリがお会計で探索者カードを出していたのはそれで支払いをしていたのですね」
と理解を示し、ルガルとバロストも、
「了解した」
「わかりました。作っておきます」
と続けて頷いた。
そんな話をしているうちに銀行に到着した。
フィアメール、サタレア、ルガル、バロストは、菜摘と天音に案内されて銀行の中へと入っていった。
残された私は車の中で晶たちと雑談しながら時間を過ごしていた。
「そういえば魔族について調べたことがあるんだが。ネットによると、魔族は悪であり野蛮な存在だ、って書いてあったんだがそんな感じはしないしどうなんだ?」
と晶が尋ねてきた。
私は晶の疑問に真面目に答えた。
「とりあえず魔国に関しては今の魔王は比較的穏健な考え方なの。侵略行為や武力行使もしないし、他種族と友好関係を築き多くの人種を受け入れる良い国だし魔族もネットに出ていたっていうような野蛮な存在ではないわよ」
それを聞いた晶はうなずきながら、
「そっか、なら良かった」
晶がそう言うのを聞きながら私は話を続けた。
「でも、問題なのは魔族を悪だ、野蛮だとする人々よ。人族至上主義者って人たちがいるんだけど、人族以外の人は下級民族と考えていて……とりわけ魔族に関しては存在そのものを否定しているの。おそらく、そういう人たちが地球の人たちにも影響を与えているのかもしれないわ」
そう言っていると、隣からマリがぷいっと不機嫌そうな表情で言葉を挟んできた。
「人族至上主義者よりもっと厄介なのがいるわ!あの宗教よ!」
私は眉をひそめながら言う。
「ああ、聖女神信仰教会ね。最近さらに過激になっていて、魔族排斥を公然と掲げるようになったわね」
聖女神信仰教会、聖女を"女神の使い"と崇め、その聖女を護るのが自分たちの使命だと主張する宗教団体。
実態は、各地の聖女を見つけ出しては、自分たちの傘下に入れようとしたり、時には誘拐まがいの手段を使って連れ去ろうとしたりもしている。
マリも一度、その標的にされ嫌な思いをしたことがある。
「あの宗教は『魔族は女神と敵対する邪神の眷族だ!私たちに正義はある!』って言って自分たちが正しいと主張している所も嫌い!」
とマリが吐き捨てるように言った。
フィアメールたちと仲が良く魔族と接してきたマリとしては嫌いになる理由しかない団体……聖女を崇める団体が聖女に嫌われているなんて皮肉な話だ。
それを聞いた晶はなるほど、と短く相槌を打ち、
「ということは、地球での魔族の印象は、誰かが故意に流した情報によって形作られた可能性が高い、ということか……」
納得したような、腑に落ちたような表情で静かに呟いた。
晶の言う通り、おそらくはこれらの団体が積極的に情報を拡散し、魔族に対する偏見を植え付けているのだろう。
「まあ、そういう人たちがラキナにいるから、フィアはそういうのを無くしたいと思って活動しているんだと思うわよ」
私は晶の問いに答えながら、少し遠くを見るような目で言った。
しばらく話をしていると、六人が銀行から出てきた。
車に戻ってくると、フィアメールが元気よく、
「口座を作ったぞ!これでいろいろ買えるのだ!」
と嬉しそうに報告してくる。
サタレアが微笑んでうなずきながら続ける。
「レーナ様のおっしゃる通り、これなら今後日本に来た際も便利に使えそうです」
フィアメールとサタレアだけでなく、ルガルとバロストも口座を作ってきたようで何を買おうか話をしている。
晶はさっきの話を聞いたせいかフィアメールたちの元気な様子に、ほっとした表情を浮かべた。
「銀行の使い方は覚えた?」
と尋ねると、サタレアが丁寧に説明してくれた。
「はい、アルタニヤ王国の通貨、日本の通貨、どちらでも預金が可能。引き出しは日本の通貨のみ可能とのことでした。また、探索者カードが魔導決済機能付きなので、お店での支払いに利用できるとの事でレーナ様が言っていた通りでした」
「そういえば、銀行の中はどうだった? 何か困ったことはなかった?」
そう私が尋ねると、フィアメールが笑顔で応えた。
「ううん、皆とても親切だったのだ。特に受付の女性は私の話をたくさん聞いてくれたのだ!」
フィアメールの無邪気な笑顔に、晶も和やかな気持ちになったようだった。




