第70話
しばらくするとマリたちのパフェも空になり、全員の飲み物も底を突いた。
「ご馳走様なのだ」
とフィアメールが言い、みんなもそれに倣う。
「すごく美味しかったわね~」
「美味しかったのだ~」
「また食べたいです」
「日本の甘味恐るべし」
全員が満足そうに息をつく。
「では、そろそろ出ましょうか」
私が切り出すと、みんな素直に席を立った。
会計を済ませて店を出た私たちは、菜摘と合流するまでもう少し時間がありそうなので時間を潰すべく、探索者ギルド内を見て回ることにした。
「とりあえず武器や防具なんかはラキナの方が高性能なものが揃ってるから、今回は見送ろうか」
「ええ、そうね」
カイトの意見に同意しつつ、私は店内を眺めていると、
「服屋さんに行きませんか?」
とマリが提案してきた。
「日本の服は安くても着心地が良いのでフィアたちも気にいると思います」
「なるほど、じゃあ服屋さんに行こうか」
マリの言葉に私が同意してみんなで服屋へ向かった。
ギルド内に入っている店は個人店や高級店のような店は無くシンプルな服が多い量販店が一店舗あるだけだった。
中に入ると何度か来た事があるのかマリがフィアメールとサタレアに
「こっちこっち!」
と声をかけ手招きして女性物を売っている場所へ連れて行った。
カイトはルガルとバロストに
「フィアのことはマリが付いてるから大丈夫だろうし好きな物見てきなよ」
と声をかけて男性物のある場所に向かった。
私は一人で店全体を見て回ることにした。
見て回るとここにいるお客さんは主に三パターンのようだった。
ひとつ目は普段着でこの量販店が好きで買い物に来ている人。
ふたつ目はダンジョン探索をするような装備で品物を見ている人。
そしてみっつ目は変わりの服を持って来るのを忘れたのかボロボロになった装備を纏い焦るように服を探している人たち。
比率で言うと普段着の人が一番少なく、装備を着た探索者が多く見受けられる。
まあ、普通に服を買うなら街中に専門店があるはずだから、そちらの方に行く人の方が多いだろう。
装備を着た人たちは日本人だけでなく、様々な髪色の人や獣人などの亜人も混ざっており、ラキナからやってきた人も多いようだ。
中には装備がボロボロになっていたり、服が破れたりしている人もおり、そういう人たちは急ぎ足で服を買って出て行っている。
(更衣室もロッカーもあるのに着替えを持って来ないなんて余裕だと思って油断でもしたのかな)
そんな事を思いながら一通り店内を巡り終えた私は、マリたちがいる女性物コーナーへ向かった。
近づくと、フィアメールが楽しそうに手を振っているのが見える。
彼女の持つカゴには色とりどりの服がたくさん入れられていた。
「色んな色の服を買うのね」
と声を掛けると、フィアメールは嬉しそうに答えた。
「魔国では派手なドレスはそれなりにあるけど、ラフな服でこんなに色とりどりな服はないし、肌触りが良くて着やすそうなのだ! 」
その隣にいるサタレアも、カゴに服をいっぱい入れて、フィアメールの言葉に深く頷く。
「ええ、滑らかな生地で着やすそうですし、それに値段も安くて驚きました」
ふと、日本円のことについて思い出したので、
「そう言えば、お金は大丈夫なの?」
と尋ねると、マリが元気良く横から割り込んできた。
「フィアメールたちには、私が立て替えるって言っておきました!」
マリは得意げに胸を張りながら続ける。
「カイトと二人で日本のダンジョンに潜っていたので、日本で素材を買い取ってもらって、結構な額が銀行に預けられていますよ」
カイトとマリは、日本に来れるようになってから、兼六園ダンジョンの下層で積極的に活動していたため、そこそこの収入を得ていたらしい。
なるほどと思う一方で、マリを見ると手ぶらだったので、
「買わないの?」
と尋ねると、
「日本に来れるようになってからは、ラキナに帰る前に毎日この服屋に寄っているので……」
照れ笑いしながらそう答えるマリを見て、納得する。
そんなやり取りをしているうちに、カイトたちがこちらへやってきた。
ルガルとバロストは既に買い物を終えたようで、手に買い物袋を持っていた。
スマホの時計を確認すると、そろそろ待ち合わせの時間だった。
「そろそろ行かなきゃね。お会計に行きましょう」
そう促すと、まだ選びたかったのか、フィアメールとサタレアが少しだけ残念そうな顔をした。
「まだ他にもいろんなお店があるから、また見に来ればいいわよ」
と優しく声をかけ、二人を促しながらレジへと向かう。
二人のお会計を、マリが日本の支払いに慣れたのかスムーズに済ませて、みんなでお店を出た。
「荷物は私が預かるわね」
私はみんなの手に持っている服の入った買い物袋を預かり、自身の収納魔法へとしまった。




