第69話
ギルド長への感謝の気持ちを持ちながら次やる事に意識を戻した。
「それにしても、講習が義務化されていたなんて知らなかったわ」
そうつぶやくと、カイトも同意するようにうなずく。
「そうですね、今までこんなことはなかったのに」
マリも首を傾げながら、
「でも、私たちは受講しましたけど為になっているので良い事かもしれません」
と言い、私も同意しながら答える。
「そうね。日本の人たちとも少しずつ理解し合えるといいわね」
話していると、時間が経過していたようで、係の人から講習が間もなく始まる旨のアナウンスがあった。
受講済みのカイトとマリには先に行って待っているよう伝えると、二人ともうなずいてくれた。
「じゃあ、先に行ってるね!講習終わったら電話してね」
マリの言葉に頷き、二人がギルドの奥へ消えていくのを見送った。
「それじゃ、私たちは講習を受けてきましょうか」
フィアメールたちにそう告げると、みんなもうなずいて一緒に講習室へと向かった。
室内は三十人程度が座れるスペースで、すでに数人が座っている。
私たちは係員に探索者カードを見せ、言われた番号の席に座る。
席についた私はスマホを取り出し、菜摘に
『講習があるので一時間半ほどかかります』
とメッセージを送るとすぐに菜摘からメッセージが返ってきた。
『私たちは兼六園ギルドには昼ぐらいに着くから着いたら連絡するね!昼食は一緒に食べましょうね』
『了解』
菜摘のメッセージにスタンプで了承した事を伝えてスマホの音を消してポケットにしまう。
フィアメールたちを見ると室内に置いてある物や照明器具に興味津々で周りを見渡していた。
程なくして講師が入ってきて講習が始まった。
最初の十分ほどは日本の地理や歴史、文化といった基礎的な内容。
続いて、日本の法律や社会の仕組みなど具体的な話へと移っていく。
フィアメールたちは事前に渡されていたペンとノートで熱心にメモを取っていた。
正直言えば、私は知っている内容ばかりであり特に新しい情報もないのだけれど、それでも時折ふむふむと頷きながら聞いていた。
「……以上で講習は終了となります。携帯電話の購入を検討されている方は出て右側にまっすぐ行くと携帯電話購入受付所があります。何かご不明な点があれば係員にお気軽にお尋ねください」
講師がそう締めくくると同時に講習が終了した。
私たちは置いてある紙袋に分厚い冊子、ノート、ペンを入れ立ち上がる。
そのまま講習室の出口付近に設置された機械に向かう。
係員が指示を出していた。
「探索者カードをこちらの機械にかざしてください。これにより講習受講記録が登録されます」
言われたとおりにカードを機械にかざすと、ピッという電子音が鳴り響いた。
カードをしまい、係員から退出許可を得た私たちは講習室を後にする。
部屋を出て講習が終わった事を伝える為スマホを取り出しマリに電話をかけた。
数回のコール後、コール音が消える。
「マリ、講習終わったわよ。いま何処に居る?」
『ママお疲れ様~。私たち探索者ギルドの休憩所で待ってるよ~』
マリの明るい声が聞こえる。
休憩所に居るのか。
「了解。今からそっち行くわね」
『うん、待ってるね!』
電話を切り、フィアメール達に休憩所に行く事を伝えるとみんな頷きギルドの休憩所へと向かった。
休憩所に近づくと入口付近にカイトとマリが立っているのが見え手を振る。
二人も私たちに気づいた様子で手を振ってくれた。
近くまで行くとマリが元気よく声を掛けてくる。
「おかえり!どうだった?」
「色々な事が分かって為になったのだ!」
フィアメールが満面の笑みで答えた。
「うんうん、私たちも前に受けたけどラキナとは全然常識やルールが違うから為になるよね~」
マリも同意し、頷く。
私は休憩所の前は邪魔になるだろうと思い、
「こんなところで立ち話もなんだしカフェでお茶しながら休憩しましょうか」
時計を見るとお昼まで二時間ほどあるので、私は提案した。
カイトもそれに賛同するように頷いている。
「そうだね、みんなも講習で疲れただろ?近くにいいお店があるからそこで休もうか」
「ありがとうございます、案内お願いします」
サタレアが優しく微笑んで答えた。
「では参りましょうか」
私たち七人は休憩所を後にし、カイトおすすめのカフェへ向かった。
店内に入ると、落ち着いた雰囲気に迎えられる。
レトロな装飾が施された椅子やテーブル、木目調の床が温かみを感じさせる空間だった。
店内には、私たち以外にも少数の客がゆったりと過ごしており、話し声やカップの音が微かに響いているだけだった。
カイトとマリは慣れた様子で窓際の一角へと向かい、私たちもその後に続く。
座りやすい椅子に腰かけると、ウェイターがお水を持ってきてくれた。
彼がメニューを手渡してくれると、フィアメールたちの目が興味深そうにページを行き来する。
カイトが私たちの分も考慮しながらメニューを見始めた。
「さて、何を頼もうかしら」
私が尋ねると、カイトがいくつかおすすめを挙げる。
「コーヒーが美味しいって評判ですよ。それに、ここのパフェもかなり人気みたいです」
「パフェがおすすめです!」
マリが目を輝かせて反応し、メニューの写真を指差した。
カラフルなクリームやフルーツ、アイスが層を成すデザートは見るからに美味しそうで、フィアメールとサタレアも興味津々といった表情を見せる。
「甘くて美味しいですよ!」
と続けるマリの言葉にフィアメールたちはパフェのページをさらに熱心に見始めた。
「これはぜひとも試してみたいのだ!」
とフィアメールが興奮気味に声を上げると、サタレアも目を輝かせながら頷く。
「私も興味ありますね。どんな味か気になるわ」
バロストは一瞬悩んで考えたが、
「実は甘いものが好きでして、私も食べてみたいですね」
と言う。
「お昼近いけど大丈夫?」
と私が聞くと大丈夫との事なので、マリ、フィアメール、サタレア、バロストがパフェとコーヒーを注文して、私とカイト、ルガルはコーヒーのみを注文することに決めた。
注文を終えると、カイトがふと思い出したように話題を切り出した。
「そういえば、菜摘さんと連絡は取ったんですか?」
「ええ、メッセージで昼頃に到着するって連絡があったわ。ついでに昼食を一緒に食べましょうとも書いてあったわ」
菜摘と連絡を取って昼食を一緒に食べる事を伝えて話をしていると、
「コーヒーをお持ちしました」
とウェイターがコーヒーカップをテーブルに置く。
その後、間を置かずに、
「パフェ4つをお持ちしました」
とウェイターがパフェをフィアメールたちの前に置いた。
「わぁ、キレイなのだ!」
フィアメールはパフェを見るなり目を輝かせた。
確かに綺麗に盛り付けられていて食欲をそそるビジュアルだ。
「見た目も素敵だし、もちろん味も最高よ!」
マリが自信満々にスプーンを手に取り、一口掬って口へ運ぶ。
「やっぱり美味しいわ」
頬に手を当てて満足そうな表情を浮かべるマリに釣られるように、フィアメールたちもそれぞれパフェに手をつけた。
「甘くて美味しいのだ!」
「甘すぎず丁度良いですね」
「ラキナの甘味と違って甘ったるくないですね」
三者三様の感想を述べつつ、パフェを堪能している。
その幸せそうな姿を見ているだけでこちらまで嬉しくなってしまう。
私とカイト、ルガルもコーヒーを啜りながらしばし談笑する。
静かな店内の雰囲気もあり、穏やかな時間が流れていった。




