第67話
食事は和やかに進み、みんなお腹いっぱいになったところで今日の予定を告げる。
「今日は昨日話したけど朝から地球へ行くからね」
「わかっているのだ!準備するのだ!」
フィアメールが元気よく返事をする。
そして食事が終わるとみんなで後片付けを行い、その後身支度を整え出かける準備を始める。
「地球での服装は特に指定はないけれど、あまり目立たないほうが良いでしょうね」
レーナの言葉を受けて、フィアメールたちは普段着のような服を選ぶことにした。
準備を終えると、みんな揃って玄関へ向かう。
「忘れ物はないかしら?」
「大丈夫なのだ!」
「問題ありません」
「大丈夫だ」
「万全です」
フィアメール、サタレア、ルガル、バロストの四人が返事をする。
「よし、じゃあ出発しましょう」
家のドアを開けると、見送りのためにケイと精霊たちが集まっていた。
「いってらっしゃ~い」
ケイが小さな手を振って見送ってくれる。
フィアメールがそれに応えて手を振る。
「行ってくるのだ!」
精霊たちもそれぞれに手を振り見送ってくれる。
アクアはお辞儀をし、サラは元気よく両手を大きく振っている。
カイトが優しい声で挨拶をする。
「じゃあ、行ってきます」
マリも明るく手を振って、
「行ってきます!」
私たちが出かける姿を見ながらみんな楽しそうに見送ってくれた。
「いってらっしゃーい!」
「気をつけてね」
最後にシルフィとイルの見送りの言葉を聞きながら、私たちは家を後にした。
家を出た私たちはフォノンダンジョンに向けて歩き始めた。
「地球には初めて行くのだ、楽しみなのだ!」
フィアメールが目を輝かせて言う。
サタレアが隣で静かに微笑みながら、
「きっとラキナとは違うのでしょうね」
と言いフィアメールも大きく頷き、
「そうなのだ!早く見たいのだ!」
そう言いながら、彼女の紫の肌が光にあたりキラキラと輝いている。
ルガルとバロストも期待を胸に秘め、周囲を警戒しながら歩いている。
そんなみんなを見て、私は心の中で密かに思う。
(みんなの肌の色はちょっと目立つかもしれないわね)
一般的な人間とは異なる色彩。
これで日本を歩いたら、おそらく注目を浴びてしまうだろう。
フィアメールの目的は地球の人達に魔族の印象を良くして友好を深める事だが、紫色の肌の人は魔族と海外のネットから知られていて、あることないこと書かれている。
そんな魔族がいきなり現れたとなるとどうなるか分からない。
「あのね、地球に行くとなると、他の人とは肌の色が違うし魔族って事で少し目立っちゃうと思うし、魔族の印象を変える為の行動は配信を始めてからの方が良いと思うの。そこで、もし良かったらなんだけど、今日はみんなの肌の色を変えてみてもらえたら嬉しいなって思ってるんだけど……どうかしら?」
私の提案にフィアメールたちは一瞬ぽかんとするものの、すぐに理解したようで、笑顔で頷く。
「なるほど、肌の色を変えるのですね。確かにラキナの魔国以外の国に行く時に色を変えて人族に溶け込んだりしますからね」
サタレアが冷静に分析し、続ける。
「ではツノを消して肌の色を変えますね」
彼女は右手を軽く上げ、小さく呪文を唱えた。
すると、サタレアの体が淡い光に包まれ、ゆっくりと変わり始めた。
数秒後、光が消えると、そこにいたのはツノがなく普通の人間と変わらない肌色を持つサタレアの姿だった。
同じように、フィアメール、ルガル、バロストも自ら魔法をかけ、ツノをなくし肌の色を変化させた。
これなら日本に行っても奇異の目で見られることはないだろう。
「良い感じね」
私はにっこりと微笑みながら言った。
フィアメールが嬉しそうに笑顔を見せる。
「これなら目立たずに過ごせるのだ!」
全員が魔法で姿を変えた後、再びフォノンダンジョンへと歩き出す。
フォノンの町を過ぎダンジョンの入口へ向かうと入口あたりで建設工事が始まっていた。
「何を建てているのかしら?」
「探索者ギルドを建てるようですよ。日本側と同じようにギルドを通ってダンジョンに入るようにするようですよ」
私が疑問を口にするとカイトが答えてくれた。
ダンジョン入口には現在仮設の建物がありダンジョンの出入りを確認しているのでギルドと一体型になれば便利か、と納得した。
建設現場の横を通りダンジョン入口で探索者カードを機械にかざして中に入り地球へのゲートへ向かう。
ゲートに着くと、彼女たちの目が輝いた。
魔国では地球と繋がってからはダンジョンのゲートへの道は基本立ち入り禁止になっていたようでゲートを見るのは初めてのようだ。
「これが噂に聞くゲート!」
フィアメールの瞳には好奇心があふれている。
バロストが周囲を見渡しながら感嘆の声を漏らす。
「実際に目にすると奇妙なものですね……」
初めて見るものに興味を引かれ立ち止まっているフィアメールたちに促す。
「さあ、行きましょうか」
ゲートに入ると、長いトンネルのような空間が続いている。
歩くうちに、遠くにゲートが見えてきた。
そこを抜けると、目の前には壁の作りはフォノンダンジョンと同じだが、電子掲示板や自動販売機などラキナには無いものが広がっていた。
多くの探索者たちがおり、中には学校指定の探索者の服を着た少年少女もいる。
「すごい……これが地球のダンジョン!」
フィアメールが興奮した様子で言う。
サタレアは冷静に観察しながら口を開いた。
「凄く光ってるものが多いですね。服装も似たような物を着ている人が多いです」
「あれは電子掲示板や自動販売機ね、地球では科学技術という物が発展して色々便利な物が多いのよ、スマホとかパソコンとかね。あと、同じような服装の人は学生ね、ここ日本では探索者になる勉強をする学校もあるのよ」
サタレアが不思議そうに見ていたので答えてあげた。
そんな話をしながら興味津々なフィアメールたちを連れてギルドの入口へと向かった。




