第54話
バーベキューをしようと決めた私はアクアとサラに肉や野菜を下処理して切ってもらう事にした。
「アクア、サラ、お願いね」
アクアは手際よく包丁を動かし、野菜を次々と小さく刻んでいく。
その様子を見ていたサラはオーク肉を器用に薄切りにしていた。
その間に私は庭に行き、バーベキュー炉を作ることにした。
土魔法で地面を固めて台形のような形状に整える。
炉の外側を作り、下に風の通る道を作る。
そして、中に炭を置くスペースを作り、網を置く隙間を作って完成。
「ふぅ……こんな感じかしら」
さらに食材や物を置く為のテーブルを土魔法で、椅子は植物魔法を使いアウトドアチェアのような形でコップを置く所もつけて作っていく。
「うん、いい感じに出来たんじゃないかな?」
最後に魔の森の木で作った炭を並べ、火魔法で火をつけた。
炭がゆっくりと燃え上がり、煙が上がり始め同時に炭の燃える香りが漂ってくる。
私はバーベキュー炉に網を置いて家の中に戻った。
「さあ、準備ができたわよ!」
家の中から食材や食器を持って全員が出てくる。
テーブルにみんなが持ってきた物を並べると多彩な食材と炎に照らされたバーベキュー炉の光景に歓声が上がった。
「わあ、すごい!」
シルフィが感嘆の声を上げる。
ケイも目を輝かせながらバーベキュー炉に近づいてきた。
「お母さん、早く焼いて食べたいよ!」
「ちょっと待ってね、今準備するから」
私は収納魔法からバーベキュートングを取り出し、網の上にまずは野菜を並べた。
その後、カイトとマリがダンジョンから採取してきた様々な肉をどんどん並べていく。
ジュージューと焼ける音と共に香ばしい匂いが広がり、食欲を刺激する。
「うまそうな匂いだな……」
カイトが鼻をくんくんさせながら言った。
その様子を見て、思わず微笑んでしまう。
「まずは焼けるまでの間に乾杯でもしましょうか」
私は収納魔法から缶ビールを取り出すと、それぞれに手渡した。
カイトとマリは不思議そうに缶を見つめている。
「これは缶ビールっていう飲み物なのよ。キンキンに冷やしてあるし美味しいわよ」
私は笑顔で説明する。
「缶?」
とカイトが首を傾げる。
「この入れ物のことよ、上部にある輪っかを上に引っ張ると飲み口が開くのよ」
私が説明してあげるとみんなは興味津々といった表情で缶ビールを見つめていた。
それを見ていると、なんだか胸が温かくなる気がする。
一方、ケイだけは缶ビールを貰えず不服そうだ。
その膨れた顔があまりにも可愛くてつい笑ってしまう。
「ごめんねケイ。アルコール入りは大人の飲み物だから代わりに、これをあげるね」
収納魔法から取り出した缶コーラを渡すと、彼女は嬉しそうに受け取った。
みんながプルタブを開けていく中、ケイは力が弱すぎてなかなか開けられないようだった。
「あら、大丈夫?お母さんが開けてあげようか?」
私が助け舟を出すと、ケイは少し悔しそうな顔をしながらもうなずいて素直に差し出してきた。
ケイの手から缶コーラを受け取り、私は軽くプルタブを押し込む。
すると、プシュッと爽快な音と共に泡が弾けた。
「ほら、これで大丈夫よ」
そう言って渡し、
「それじゃ、頂きましょうか。カンパーイ!」
「カンパーイ!」
みんなで手に持った缶を合わせて乾杯する。
そして口に流し込んだ。
冷たい液体が喉を通る感覚と独特の苦味と爽快感が口いっぱいに広がる。
私は一気に半分くらい飲み干してしまう。
「ぷはぁ~っ!美味しい!」
思わず声が出てしまう程の美味しさだった。
そんな私の反応を見ていた他の皆も一斉に飲み始めた。
「本当だ!すごくおいしい!」
マリが興奮気味に言う。
「うん!確かにこれはうまいかもな!」
カイトも同感だと頷いた。
その様子を見て、私も嬉しくなる。
「でしょう?ビールはこうしてキンキンに冷やしておくと最高なのよ」
続いてアクア達も飲んで笑顔を見せた。
どうやらビールの味が気に入ってくれたようだ。
「やっぱりビールはこうじゃなくっちゃね」
と私は再び缶を煽った。
アルコールが体を巡っていくのがわかる。
ビールを飲みながら肉が焼けるのを楽しみにしていると隣にいたケイが、
「この飲み物シュワシュワする!」
と楽しそうに言った。
「それは炭酸っていうのよ、美味しいでしょう?」
「うん!美味しい!」
私は微笑みながら答えた。他の皆も感想を述べ合う姿は見ていて微笑ましく感じた。
「あっ!焼けてきたかも!」
シルフィの声で我に返った。
私は慌てて肉の具合を見る。
「ほんとだわ!そろそろ食べ頃かもしれないわね」
焼き色が綺麗についた肉を箸で掴むと、思わず笑みが溢れた。
みんなも焼けた肉や野菜を取っていく。
「いただきます!」
感謝の気持ちを込めて手を合わせると、早速一切れ口に運ぶ。
ジュワッと溢れる肉汁とタレの味付けが絶妙にマッチしていてとても美味しい!
「うん!焼肉はやっぱり美味しいわね」
自然と言葉が漏れてしまうくらい素晴らしい味だった。
「ビールやジュースのおかわりもあるからね!お肉も焼いていくからどんどん食べてね」
舌鼓を打ちながら幸せそうな表情をしていたり、夢中になって食べていたり、ゆっくりマイペースに食べていたりと個性豊かに食べていた。
そのみんなの笑顔を見て私は嬉しくなった。




