第52話
みんなが楽しそうにメッセージのやり取りをしている姿を見ていてふと思い立つ。
ケイはまだ探索者カードを持っていないがスマホやパソコンを使えば実家の家族とケイも交流できるのではないかと。
そう思い恵へ電話してみる事にした。
電話をかけて数コール鳴ると恵の声が聞こえてきた。
『もしもし』
「あ、お母さん、麗奈だけど今大丈夫?」
『大丈夫よ』
「よかった。実はお願いがあるんだけど」
『あら、何かしら?』
「みんなにラキナの家族の事を紹介したいんだけど今日の夜みんなが揃ったらパソコンでカメラを使って話したいんだけど、どうかな?」
『構わないわよ。じゃあ夕食が終わったら連絡するわね』
「わかった。その時にはよろしくね」
『楽しみにしてるわ』
通話が終わり、スマホの使い方を教えていると、玄関の方からノックが聞こえた。
「誰か来たみたいだからちょっと行ってくるね」
とみんなに告げ玄関に向かい扉を開けると、そこにはカイトとマリがいた。
「あら、カイト、マリおかえり」
「ママ、ただいま~」
「ただいま、お母さんも地球から戻って来てたんだね」
「ええ、今日の昼過ぎに戻ってきたのよ。そっちはダンジョンで別れた後はどうだったの?」
私が尋ねると、カイトは楽しげに微笑んで答えた。
「あの後も兼六園ダンジョンとここを行き来して攻略を続けてたんだ。それで60階層のボスを倒して転送板に登録してきた所だよ」
隣のマリもうなずき、
「明日から下層になるし気を引き締めて行かないと」
と真剣な表情で言った。
転送板とは五階層毎にいるボスを倒し階層を降りた先にあるセーフティエリアの台座の上にある破壊不能で持ち出しも出来ない魔道具の板だ。
転送板に触るとその階層が登録され、一階と行き来する事が出来るようになる不思議な板だ。
ちなみに一階層の転送板が設置されている場所はダンジョンに入ってすぐの広間にある。
「あら、兼六園ダンジョンはどんなダンジョンだったの?」
「兼六園ダンジョンは草原タイプのダンジョンでした。主に牛や羊やウサギなどのモンスターが多かったですね」
「動物系統のモンスターが多くて群れで襲ってくるのもいて面倒だけど素材としては良さそうだったよ」
カイトが説明するとマリが補足する。
「良いわね、お肉が欲しくなったら行ってみようかしら」
私は二人と話をしながら、リビングへと移動した。
リビングではケイと精霊たちが楽しそうにスマホを眺めたり操作したりしていた。
マリはそんないつもと違う光景に驚いた様子で声を上げた。
「あれ?みんな何をしているの?」
「その手に持ってる物って地球のギルドでよくみんなが触っていた物じゃない?」
と言いカイトがスマホを見て不思議そうな顔をした。
「二人とも地球で探索者ギルドが開催してる『日本へ来たらやるべきこと、やってはいけないこと説明会』って講習は受講したかしら?」
私が尋ねると、二人は顔を見合わせながら答えた。
「はい、兼六園ダンジョン探索者ギルドの受付の方にラキナから来た人が日本の常識を知らずに問題を起こしてしまう事が多いので失敗しない為にも受講してないなら受講した方が良いですよって言われて受けました」
「受講したおかげで色々と地球の日本という国の常識がわかったよね」
カイトは頷きながら、マリは嬉しそうな笑顔を見せて答えた。
「それなら講習で携帯電話については聞いてるわよね」
と質問するとカイトがポケットからクルトが持っていたタイプと同じ携帯電話を取り出し、
「これですよね、まだマリとしか連絡先の交換をしていないのでマリとしか使ってないですが離れているときの連絡手段として便利ですよね」
「ラキナには手軽に使える遠距離の連絡手段が無いから携帯電話は便利で良いわよね」
と言いながら、私はスマホを取り出して、
「でもね、日本での最新の携帯電話はこれなのよ。スマートフォン、略称でスマホって言うのよ」
と言って、私のスマホを見せた。
「へぇ、日本の探索者ギルド内でよく見るこれが最新の携帯電話だったんですね」
「講習で講師の方が『日本の道具に慣れてきたら携帯電話を最新の物に変えると良いですよ』と言っていました」
「そうね、地球の機械に慣れていたり教えてくれる人がいないなら二人の持ってる携帯電話は通話しか出来ないシンプルで分かりやすい作りだから良いかもね。でもスマホは色々なことができるからスマホに変えるのがおすすめよ。例えば写真を撮ったり、文字でやり取りできたり、インターネットで調べものを出来たりね」
と説明しているとケイが、さっきみんなでメッセージのやり取りをしていた画面を見せて
「カイトお兄ちゃんとマリお姉ちゃんもこれをやろうよ!」
と提案してきた。
カイトはスマホとケイの顔を交互に見て苦笑した。
「僕らが持っているのは通話のみの携帯電話だから出来ないんだ……」
カイトが申し訳なさそうに言うと、ケイは残念そうに肩を落とした後、
「えー、できないの?じゃあ、連絡先の交換しようよ」
と提案した。
カイトとマリは頷き持っている携帯電話の番号をみんなと交換した。




