第42話 理依奈視点
ゴブリンとの戦闘終了後、それぞれが魔石を回収する。
佐藤さんが
「帰り道もモンスターは出るから気を緩めずに行きましょう」
と言い、二階から一階へ行き、来た道を戻るように進んで行く。
何度か戦闘はあったものの無事ダンジョンの出口まで辿り着いた。
探索者ギルド内に戻ると同じクラスの生徒が何名か戻っており私たちも残りの生徒たちが戻るまで待つ。
全員が無事揃い今日引率してくれた探索者たちに挨拶をした。
私たちは学校へそのままみんなで帰る。
談笑しながら学校へ向かう途中、沙希がふと疑問を投げかけてきた。
「理依奈、颯斗。今日の探索すごくよかったよね? 特に動きが以前よりも滑らかだった気がするんだけど、何か特別なトレーニングでもしてきたの?」
続けて澪も加わる。
「私も思った! 特に理依奈ちゃん、戦闘中の判断とか立ち位置がすごく良くなってたよ!」
私は少し照れくさくなりながら答える。
「実はね、昨日ちょっと特別な練習をしてきたんだ」
颯斗も頷きながら続ける。
「そうなんだ、僕たち、昨日渋谷ダンジョンで特訓してきたんだ」
それを聞いた沙希と澪と大晴は目を丸くした。
「えっ?渋谷ダンジョンで?」
沙希は驚きつつも興味津々といった様子で尋ねてきた。
澪も同じように目を輝かせている。
「本当に?それならもっと詳しく聞きたいなぁ~」
私は少し得意気に答える。
「実は昨日、探索したときに動画を撮ってもらってたんだ!」
沙希と澪は興味津々な表情で食らいつくように聞いてきた。
その様子を見ていた大晴が腕を組みながら口を開く。
「なるほどな。それで先週とは戦い方が違ったわけか。ならその動画見せてくれよ!」
彼の目にも興味深そうな色が宿っている。
「もちろん見せるつもりだけど……でも、ちょっと長いかも。だから、お昼休みとか、皆でまとめて見るのがいいんじゃないかな?」
私は少し考えて提案した。
「おお、いいアイデアじゃん!」
澪も賛成する。
沙希と大晴も頷き、皆で昼休みに動画を見ることが決定した。
学校に到着するとすぐに昼休みの時間になったので、五人は共有スペースに移動し、それぞれ座りご飯を食べながら理依奈のスマートフォンの動画を見る。
私と颯斗の昨日のダンジョン探索が記録された動画だ。
「これが昨日の特訓の様子だよ」
再生が始まると、私たちが歩いている後ろ姿が映り、少しすると一匹のゴブリンと遭遇した場面が映し出された。
画面の中で私は杖を構えながらゴブリンの動きを冷静に観察している。
颯斗もまた同じように剣を構えながら警戒している。
私の杖から炎の弾丸が飛び出し、ゴブリンに命中させると颯斗が突進し、片手剣でゴブリンを切り裂き、ゴブリンを倒した。
その後もモンスターが出ては倒すという映像が流れていると澪が、
「引率の探索者だと思うけど、途中途中指示を出してる女の人の声は誰なの?」
と聞いてきたので颯斗が
「うちの叔母さんだよ」
と答えた。
3人がどういう人なんだろうと少し考え込んでいるので麗奈お姉ちゃんがアクアさんを召喚している動画を3人に見せる事にした。
麗奈お姉ちゃんがアクアさんを召喚しアクアさんが無詠唱で緻密な魔力操作による水魔法でゴブリンを仕留めるシーンに澪と沙希と大晴は驚愕していた。
そして最後にアクアさんが会釈をして消えたところで動画は終わった。
全員が静かに息を呑む音が聞こえる中、澪がぽつりと呟いた。
「これって、本当なの……?無詠唱で召喚魔法って普通じゃないよね?しかもこの召喚で出てきた人、ただ者じゃない感じするんだけど……」
沙希も大きく頷きながら続けた。
「美人さんだね、何より動きが洗練されてた」
そこで澪が不意に思い出したように声を上げる。
「あー!! さっきの動画の人って最近話題になってたカイト様、マリ様と一緒にいた人じゃない?」
驚きと興奮が入り混じった声で尋ねてくる澪に、私は少し躊躇いながらも答えた。
「うん、その人だよ。でも……目立ちたくないみたいだから、このことは秘密にしてね?」
そう言って軽くウィンクすると、澪も沙希も大晴も一斉にうなずいた。
「わかった! 秘密にする! でも、やっぱり凄いなぁ……あの召喚術といいあの見た目といい、どこか別の世界から来た人みたいだね!」
澪が目を輝かせて言う。
「そうだね」
沙希も興奮冷めやらぬ様子で同意した。
そこで少しだけ事情を説明することにした。
「実はね、麗奈お姉ちゃん……私の叔母さんなんだけど、異世界転移っていうのかな? それでラキナのほうに飛ばされてその後色々あって、ダンジョンによって地球とラキナが繋がったお陰で今はこっちに戻って来れたんだって」
私の言葉に全員が目を丸くした。
「マジで? 異世界転移って本当に起こるんだ!」
澪が驚きと共に感嘆の声を上げる。
続けて沙希も興味深げに尋ねる。
「それが原因で見た目があんな感じになったの?」
その問いに私は小さく頷いた。
「そうみたいだね。詳しい話はできないけど、ラキナに行った影響で見た目も変わっちゃったらしいよ」
なるほど、と一同は静かに頷いた。
そこで澪がもう一度画面を指差しながら言った。
「この召喚された人、なんていう名前なの?」
「精霊でアクアっていう名前だよ」
私が答えると澪が手を叩きながら感心したように言った。
「アクアさんかぁ~! なんかカッコいいね! メイド衣装もすごく似合ってるし!」
続いて沙希も真剣な顔で続ける。
「わかる、私もそんな精霊さん使ってみたい」
そのとき大晴が真面目な表情で口を開いた。
「しかし、こんな召喚魔法使えたら探索者ランクかなり高そうだよな」
私は困ったような笑顔を浮かべながら肩をすくめる。
「それがね、麗奈お姉ちゃん自身はあまり目立ちたくなくて、Cランクからランクを上げてないみたいなんだ」
澪と沙希、大晴は驚きのあまり数秒黙ってしまう。
沈黙を破ったのは澪だった。
「えぇー! なんでCランク止まりなの? 絶対もっと上のランクいけそうなのに!」
沙希も大きく頷き、疑問符を浮かべている。
大晴が低く唸りながら付け加えた。
「まぁ確かにCランクの実力者だったら、ある程度自由に動けるかもしれないしな……それくらいがちょうどいいのかもな」
私は苦笑しながら彼らの反応を見つめた。すると大晴が少し羨ましそうに呟いた。
「でもよ、こういう知り合いがいるといいよな。ダンジョンに連れてってくれたり、いろいろ教えてもらえるし」
その言葉に澪と沙希も同調して頷く。
「確かに……Dランクになったとしても表層で稼げるわけじゃないし上層に行くだろうし、知り合いの学生だからといって引率してくれる人も少ないし……」
沙希がため息混じりに言う。
澪も肩を落としつつ呟いた。
「そうだよね、引率者もほとんど自己負担だし、表層ではなかなかお金にならないもの。それに何かあった時に余裕を持って対処できる強さがないと責任もあるからね、国から報酬が貰える学校の引率以外で引率なんて難しいよね」
その言葉を聞き、引率を頼む難しさに一同は納得した。
そんな会話をしているうちにチャイムが鳴り響き、昼休みが終わる合図が告げられた。




