第38話
それから三人で他愛もない話題に花を咲かせた。
学生時代のことや最近のニュース、流行についてなど、時間が過ぎるのも忘れるほど楽しいひとときだった。
菜摘からは、彼女が最近始めた事業について熱く語ってくれた。
「実は私、小さなプロダクション会社を立ち上げたの。配信やライブを中心にアイドルや探索者を集めた事務所よ!」
興奮覚めやらぬ様子で彼女は続けた。
「もしラキナの知り合いにそんな事に興味がある人がいたら紹介してほしいな!もちろん無理に勧誘するつもりはないから安心してね!」
私は微笑みながら頷いた。
「分かったわ。その時は連絡するね。」
菜摘は大きくうなずいて、更に言葉を重ねた。
「よろしく!もし良い人材がいたらぜひ教えてね!」
彼女の情熱的な姿勢に、私も応援したくなる思いだった。
次に流華が口を開いた。
「私は探索者として結構本格的に活動してるのよ」
彼女は少し誇らしげに言った。
私は彼女の探索者の話題に興味津々だった。
「どんな感じでやってるの?」
流華は目を輝かせて話し始めた。
「『大帝の翼』っていうクランで副リーダーをやってるの。一応、日本でも有名なクランの一つだよ」
私は思わず感嘆の声を上げた。
「すごいじゃない!なんでそんな大手クランの副リーダーになったの?」
流華は少し照れたように答える。
「初めてダンジョン探索が解禁された時、今のリーダーと一緒になってパーティを組んでね。その時の冒険がきっかけでクランを結成したの。もちろん最初は大変だったけど、仲間たちと協力してここまで来た感じかな」
菜摘も興味津々といった様子で流華の方を見る。
「それがまさか今じゃ日本屈指のクランになるなんてねぇ……凄すぎるよ!」
私は心から感心しながら言った。
「流華、本当に頑張ったんだね」
「ありがとう」
しかし、ここで流華は真面目な表情に戻り、真剣な目で私を見つめてきた。
「それでね……麗奈、もし良かったら私たちのクランに加わってくれない?一緒に活動できたら嬉しいんだ」
その申し出には心底驚いた。
まさか私をクランに誘ってくれるとは思わなかったからだ。
だが、断ることに決めた。
「誘ってくれてありがとう。でも、目立ちたくないから遠慮させてもらおうかな」
流華は落胆したように見えたが、すぐに理解を示してくれた。
「そうよね……ごめんなさい。急に言われても困るよね」
私は笑顔で首を振った。
「謝らないでよ。私は今とても幸せだから、その気持ちだけで十分だよ」
その言葉に流華もホッとしたように微笑んだ。
「わかったわ。でも、今度ぜひ相談に乗って頂戴ね」
そこからはさらに盛り上がり、昔話や現在の悩み、夢などを共有し合った。
特に菜摘が事業について熱く語っていたり、流華がクラン活動について面白おかしく話してくれる様子を見て、時間はあっという間に過ぎていった。
そして楽しい夜は続いていき、ふと気づけばすでに深夜になっていた。
その頃には菜摘は完全に酔っぱらい状態で机に突っ伏していた。
「そろそろお開きにする?」
と私は提案した。
流華は微笑みながら菜摘の肩を軽く揺さぶった。
「ほら、菜摘、起きなさい。帰るわよ」
しかし、菜摘は全く反応せず、
「あと少し……もう一杯だけぇ……」
とモゴモゴ言っていた。
私と流華は顔を見合わせて笑ってしまう。
私は少し考えた末、浮遊魔法を使って彼女を運ぶことにした。
「これで問題なし!」
と言いながら手早く魔法を行使し、菜摘を宙に浮かせる。
流華は驚いた様子で見上げるが、その光景に感嘆の声を漏らした。
「え、これって魔法? すごい! こんな芸当ができるなんてやっぱり凄いな……」
私は軽く笑って、
「まあ、200年もの間色々やってきたからね」
と謙遜するように言った。
流華は興味深そうな目で私を見つめながら頷いた。
店を出るために精算を行う。
お店の人に代金を支払い、お礼を言いながら店を後にした。
外に出ると、涼しい夜風が気持ちよかった。
流華は駅に向かうことになり、私は菜摘を送るために自宅へ向かう方向へ進んだ。
別れ際、流華は振り返って言った。
「また飲みましょうね! 今度はもっと詳しく話を聞かせてほしいわ」
私は微笑み返しながら手を振った。
「もちろん。またね、流華!」
私は流華が見えなくなるまで見送った後、菜摘を浮かせたまま菜摘の家へと歩き出した。




