第241話
家の裏手の少し離れた場所に立って、私は離れを作る予定の場所を見渡した。
「まずは整地からね」
土魔法を使い地面をならしていく。
魔力を込めた両手を地面に向けると、土が意思を持ったかのように動き出した。
ボコボコとしていた地面が平らになり、小石や雑草がどんどん取り除かれていく。
整地する広さは、十畳の部屋を六部屋と廊下を作る分にした。
さらに離れから母屋に繋がる道を作る場所も整地する。
「このぐらいかしら」
私は整地した建設予定地を確認すると、次は整地した場所の土の硬度を土魔法で上げていく。
土の粒子を圧縮しながら固め、時間が経っても沈み込んだりひび割れたりしないようにしっかりと強化していく。
やがて、土の色は少し濃く変わり表面は叩けば音がしそうなほど硬く締まった。
「これで大丈夫ね。次は基礎を作りましょう」
私は続けて土魔法を使い、建材を支えるための基礎を作っていく。
部屋の配置を頭の中で思い浮かべながら柱が来る位置に合わせて石材のような硬さの土を盛り上げ、それぞれを連結させて丈夫な土台へと変えていく。
家を建てる時もそうだが、基礎がしっかりしていないと建物全体が傾いたりするので、ここは丁寧に進める。
「よし、だいたいこんな感じかしら」
土の基礎が完成すると、私はその出来栄えを確認してから収納魔法の中から木材を取り出そうとした。
すると、家の方から、
「ママー!ご飯だよー!」
とケイの大きな声が聞こえてきた。
夢中で作業をしている間に、すっかり昼食の時間になっていたようだ。
「はーい、今行くわねー!」
ケイに返事をして家の裏から玄関へと向かう。
靴を脱いで中に入り洗面所で手を洗ってからダイニングへと向かった。
ダイニングテーブルにはサラダや味噌汁、飲み物などがすでに並べられていた。
しかし、みんなが集まっているのはダイニングではなくキッチンの方で、なにやら列ができている。
私もキッチンへと行ってみると、そこにはいい匂いを漂わせた大きな鍋があった。
「今日の昼食は牛丼にしてみたんだよ。自分で食べたい量を決めてもらおうと思ってな」
サラが得意げにそう説明する。
鍋の中には甘辛く煮込まれた牛肉と玉ねぎがたっぷり入っていて、食欲をそそる香りがキッチン中に広がっていた。
みんな自分の食べたい分のご飯を器によそいサラのところへ持っていっている。
サラにご飯の入った器を渡すとその上に牛肉と玉ねぎを煮込んだものをかけてもらうようにしているようだった。
私も列に並ぶと前にイルが並んでいたので、
「日本から帰って来ていたのね。ミョウバンは買えた?」
と聞いてみる。
イルは静かにうなずいて、小さく「買えた」と言ってきた。
どうやら無事にミョウバンを手に入れる事ができたようだ。
「良かったわね」
私がそう言うとイルは少し嬉しそうな表情で頷いた。
私の番が来たので、ご飯を適量よそってサラのところへ持っていく。
サラがお玉で牛肉と玉ねぎをたっぷりとかけてくれた。
「大量に作ったから、おかわりもしてくれよな!」
「ありがとう」
そう言って渡してきたのでお礼を言い牛丼を受け取ってダイニングテーブルの自分の席に座る。
テーブルにみんなが揃い、牛丼のいい匂いが立ち込めてきた。
「それじゃあ、いただきます」
全員で手を合わせてから、昼食を食べ始めた。
一口食べると牛肉の旨味と玉ねぎの甘みが口の中に広がる。味付けも絶妙でご飯がどんどん進む。
「サラ、これ美味しいわ。タレがいい味してる」
「だろ?実はタレはちょっと工夫してるんだよ」
「どんな工夫をしたの?」
「醤油とみりんと酒と砂糖、あと少しだけ隠し味を入れてみたんだよ」
「隠し味?」
「リンゴをすりおろしたものを少し加えてみたんだ。そしたら味がまろやかになってよ」
「なるほど、だからいつもより甘みを柔らかく感じたのね」
隠し味を加えた牛丼はご飯とよく合い、箸が進み、みんなおかわりをしている。
そうして和やかな昼食の時間はあっという間に過ぎていった。




