第236話
人の気配が少ない脇道を進み何度か曲がり角を抜けると、やがてひらけた空間に出た。
そこは洞窟の中とは思えないほど大きな湖が広がっていて、天井の高い場所にある発光石の淡い光が水面をキラキラと照らしている。
そして湖の水面からは、時折銀色に輝く魚が勢いよく飛び出しては水に落ちる姿が見えた。
「わぁ、けっこういるねー!」
「それじゃ、傷をつけないように倒していきましょう。食材として使うんだから、なるべく綺麗な状態で回収したいわね」
突撃魚は水の中から飛び出して体当たりしてくるモンスターで、その速度と威力はなかなかのものだがその体当たりさえなんとかすれば、陸ではただの魚と同じだ。
問題は勢いよく飛び出してくる魚をどうやって傷つけずに倒すかである。
「シルフィ、飛び出してきた突撃魚を風で受け止めて動きを止められる?」
「やってみるねー!」
シルフィは湖のほとりに立ち、両手を湖の方へと向けた。
しばらく待っていると、水面が盛り上がり銀色の魚が矢のような速度でシルフィめがけて大量に飛び出してきた。
しかしシルフィは慌てずにそよ風を発生させ、突撃魚の勢いを殺して空中でふわりと受け止める。
動きを封じられた突撃魚は空中でバタバタともがいていた。
「ナイスよ!」
私は氷魔法を使いその浮いている突撃魚を冷やしてトドメを刺していく。
体に傷ひとつない綺麗な状態の突撃魚をすかさず収納魔法にしまい込む。
「いい感じね!この調子でお願い」
「まかせてー!」
それからも私とシルフィは手際よく突撃魚を狩っていった。
これだけ大量に突っ込んでこられると、弱いとはいえ危険なので、人が居なかったのかもしれない。
私とシルフィが突撃魚を取っている間に、イルには水面近くをゆっくりと漂っているしびれクラゲを任せる事にした。
半透明の傘が発光石の光を受けて淡く輝き触手が水中に長く伸びている。
「食べる場所は傘の部分だから、触手を切り落として傘だけ回収してね」
「わかった」
イルが収納魔法から長い鎌を取り出すと岸から身を乗り出し、鎌を伸ばして水中のしびれクラゲの触手を切り落とした。
触手が切り離されるとしびれクラゲは完全に無力化され、ただの大きなクラゲの傘だけが水面に浮かんでいる状態になる。
イルはそのクラゲの傘を器用に鎌を使って引き上げて収納魔法にしまっていた。
そんな調子で魚とクラゲを獲っていると、突撃魚が飛んでこなくなった。
「これだけあれば十分ね」
「結構取れたねー」
「家に帰ったら早速調理してみましょうか」
「楽しみ」
イルも珍しく目を輝かせている。
しびれクラゲの食感がよほど気に入ったらしい。
そんなやり取りをしながら、私たちはダンジョンを出た。
ギルドの建物を抜けて外に出るとすでに夕日が沈みかけており、空は茜色に染まっていた。
深層まで行きトレントを狩り、さらに突撃魚としびれクラゲの捕獲までこなしたのだから上出来だろう。
「今日は本当に盛りだくさんだったわね」
「たのしかったー!またダンジョン行きたい!」
「クラゲ美味しかった」
そんな話をしながら、私たちは夕焼けに染まる街道を歩いて家へと帰っていった。




